トヨタも出資…短距離走行で自動運転バス実現 米スタートアップMay Mobility

BMWからも含め13億円調達



米ミシガン州のデトロイトで2018年6月、新たな自動運転EV(電気自動車)バスが運行を開始した。2017年に立ち上がったばかりのスタートアップ企業「May Mobility(メイ・モビリティ)」によるシャトルバスで、同社はバスの量産化を図るとともに事業拡大に向け動きを加速している。


■走行ルートを短く限定することで実現

メイ社は、都市部での短距離移動を目的とした企業向けの自律走行型シャトルバスの開発・運行に取り組んでいる新興企業だ。

デトロイトは通勤時間帯を中心に慢性的な交通渋滞に悩まされており、地元の不動産大手などは従業員のために3台のシャトルバスを用意し、専用駐車場から本社ビルまでの5キロの道のりの送迎を行なっているという。こうした効率の悪い交通課題に目を向けたのがメイ社で、6人乗りの自動運転EVバスを独自に開発し、社員向けの送迎サービスを開始したという。

搭載されている自動運転システムは他の自動運転車と大きく変わらず、LiDARセンサーが車両の周囲の状況を把握するごく一般的なシステムだが、走行ルートを短く限定することで自動運転に役立つ道路インフラの整備が可能となり、運行ルート上に設置したマーカーなどさまざまなセンサーから無線信号を受け取ることで安全性を高めている点が特徴だ。緊急時に対応するドライバーも同乗している。

自動運転シャトルバスの走行ルート=出典:May Mobility社プレスリリース
■経営人・開発陣ともに豊富な経験

最高経営責任者(CEO)を務めるEdwin Olson(エドウィン・オルソン)氏は、フォードで自動運転プログラムの主任研究員として勤めていたほか、トヨタの研究所で自動走行に関する研究の共同ディレクター、ミシガン大学コンピュータサイエンス学科の准教授などの経歴を持つエンジニア。


共同創業者に名を連ねる最高執行責任者(COO)のAlisyn Malek氏も、ゼネラルモーターズ(GM)や傘下のクルーズオートメーションで自動運転テクノロジーの開発に携わっていた。チーフ・テクニカル・オフィサーのSteve Vozar氏もフォードの自動運転プログラムの元メンバーでロボット学者の肩書きを持つなど、新進気鋭のスタートアップながら経験豊富なスタッフが事業を推進しており、自動運転分野における信頼や評価はすでにベテランの域に達しているようだ。

■BMWやトヨタなど計13億円出資

設立から若干1年ながら、独BMW傘下のベンチャー投資会社「BMW iベンチャーズ」やトヨタ自動車傘下の「トヨタAIベンチャーズ」から出資を受けるなど、すでに累計1160万ドル(約13億円)の資金を調達しているという。

事業化第1弾となるデトロイトでのサービス開始直前には、カナダの自動車部品製造大手のマグナ社と提携を結び、シャトルバスの量産化を進めるとともにオンデマンド方式で全米各地での事業化を推進していく方針を打ち出している。

オルソン氏は「完全自動運転車の実現には少なくとも5年10年かかるが、それまでの間に今ある技術で実用化することで新たなビジネスの構築やシステムの改善などノウハウを手に入れることができる」と述べている。自動運転技術をリアルなビジネスに具現化するオルソン氏の手腕に、今後も注目が集まりそうだ。



関連記事