自動運転向け教師データ、「ゲームエンジン」活用し作成

シリコンスタジオ、マツダにツール提供



出典:シリコンスタジオ・プレスリリース

デジタルコンテンツ関連ビジネスを展開するシリコンスタジオ株式会社(本社:東京都渋谷区/代表取締役社長:梶谷眞一郎)は2022年6月12日までに、マツダの自動運転コンセプト「Mazda Co-Pilot Concept」の開発向けに、ゲームエンジンを使って開発された景観データの作成・編集ツールを提供したと発表した。

■ベースデータやアセットデータを合成

シリコンスタジオがマツダに提供した景観データの作成・編集ツールは、道路構造や鉄道線路などのインフラ構造物を主体とする「ベースデータ」、建物や樹木、遠景からなる「背景データ」、車両や信号、標識などの「アセットデータ」を合成し、景観データを生成するものだ。


編集ツール機能やアノテーション機能、車載センシング機能、エディット機能が備わっている。晴れや曇り、雨、雪、昼夜などの天候や、時刻の変化に対応する。フロントガラスについた雨の滴をワイパーで取り除くことも表現できるという。

道路標識の形状ゆがみや錆、塗料の退色、さらに路面標識・区画線の全体的・部分的かすれなど、経年劣化も再現する。生成された景観データは、Mazda Co-Pilot Conceptの開発に必要な、環境認識・認知領域におけるディープラーニングアルゴリズムを検証する教師データとして活用される。

■ゲームエンジン「Unreal Engine 4」を活用

景観データの作成・編集ツールが、ゲームエンジン「Unreal Engine 4(アンリアルエンジン4)」を使って開発されたという点がユニークだ。ゲームエンジンとは「コンピューターグラフィックスによるアプリケーションやコンテンツ開発において必要なライブラリやツールなどの機能がまとまったGUIベースの統合開発環境」のことだ。

高品質な3Dグラフィックスを比較的容易に作成できるため、近年では自動車や建築、製造業など産業分野においての活用が進んでいるという。米Unity Technologies社の「Unity」と米Epic Games社の「Unreal Engine」が高いシェアを誇っているようだ。


マツダの統合制御システム開発本部シニアスペシャリストである浦本征吾氏は「自動運転技術の開発において、業界では、これまでの運転支援機能の作動範囲をはるかに上回る走行環境における妥当性を検証するためにCGが広く活用されている」と説明した上で、「市販シミュレータでは弊社の持つ課題をうまく解決できないという悩みがあり、ゲーム・映像事業を軸足としながら自動車産業の技術開発にも実績のあるシリコンスタジオ様にツールの作成を依頼した」と述べている。

■一見関係なさそうな分野でも・・・・・・

一見関係なさそうなゲームが、自動運転車の開発に有効であることは興味深い点だ。ゲームエンジンを開発している企業は、ゲームだけでなく自動運転分野へのアプローチに妙味があると言えそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)





関連記事