日本財団が2020年2月から推進している無人運航船の開発実証プロジェクト「MEGURI2040」において、世界初の小型観光船の無人運航実証が2022年1月11日に実施された。
実証実験は神奈川県横須賀市猿島で行われ、成功したという。無人運航船は離島住民の移動の足としても期待感が高いほか、船員不足という課題の解消にもつながりそうだ。
■他船との衝突回避や離桟・着桟も自動で完了
MEGURI2040は民間企業のコンソーシアムと共同で、無人運行船開発に取り組んできた。今回の実証実験は、プロジェクトの1つである「無人運航船@横須賀市猿島プロジェクト」の一環として実施された。
具体的には、桟橋から猿島まで約1.7キロの距離を、離桟から着桟までも含めて小型観光船が無人航行した。小型観光船の無人運航の実証実験は世界初だという。
船には画像解析で小型船を検出するカメラが3台設置され、GNSS(全球測位衛星システム)やAIS(船舶自動識別システム)などのセンサーも搭載された。AISとは海上を航行する船舶同士が航行情報を相互に交換するための装置だ。
実証実験では障害物検知システムによって他船の避航の自動化に成功し、離桟や着桟などの有人でも操縦が難しいシーンでも、操舵室でスロットル(レバー)が自動で小刻みに動き、問題は起きなかった。
■造船会社や商社、海上サービス会社などが参加
実証実験には日本財団、丸紅、トライアングル、三井E&S造船、横須賀市が参加した。日本財団は2025年までの無人運行船の実用化を目指し、国際ルール作りを主導したい考えだ。丸紅は将来のビジネスモデルを作り上げ、豊かなた社会インフラ創造に貢献したいとしている。
海上総合サービスのトライアングルは、船員不足やヒューマンエラーによる海難事故などを減少させるために取り組んでいくという。三井E&S造船は自動操船システムの開発と搭載を担当し、離桟から着桟まで避航を含んだ全操船制御の自動化に挑戦した。
横須賀市は地域課題を解決するために最先端の情報通信やモビリティ技術を活用する「ヨコスカ×スマートモビリティ・チャレンジ」を推進している。今回の実証はその一環でもあり、横須賀市内で無人運行技術が実用化することを目指すようだ。
■自動運転は陸だけのものではない
陸、空、そして海でも移動手段の「自動化」が進む。人口減が進む離島で島民の足を守ることや、船員不足という課題を解消することに大きな期待が寄せられる。自動航行技術の進化に今後も注目していきたい。
【参考】関連記事としては「自動運転船、国の実用化目標は「2025年」!要素技術の開発加速」も参照。