「SPAC」(特定目的買収会社)を合併して上場することを「SPAC上場」と呼ぶ。通常のIPO(新規株式公開)による上場は、売上高や利益の規模のほか、事業実績などが問われるが、SPAC上場では売上高や実績が少ない企業も上場することができる。
こうしたスキームを利用し、自動運転業界ではまだ売上がほとんどないLiDAR開発企業も、SPAC上場で続々と株式市場にデビューしている。ただし、SPAC上場した企業は成長ストーリーこそ華やかなものの、まだ実績に乏しいため、最近は株価の低迷が目立つ。
もはやSPAC上場したこと自体がその企業の「汚名」ともなりそうな中、「天才」「神童」と呼ばれるオースティン・ラッセル(Austin Russell)氏が創業したLuminar(ティッカーシンボル」LAZR)でさえも、SPAC上場後、株価の下落基調が続いてきた。
しかし2021年11月9日のアメリカの株式市場では、Luminarの株価が一気に急伸した。何が起きたのか。
■NVIDIAがLuminarのLiDARをセレクト
この日、米半導体大手NVIDIAが開いた技術カンファレンスで、LuminarのLiDARセンサーと関連ソフトウェアが、NVIDIAの自動運転車向けの「NVIDIA DRIVE Hyperion」に採用されたことが発表された。
NVIDIA DRIVE Hyperionは自動運転向けのリファレンスプラットフォームであり、テストプラットフォームでもある。このプラットフォームはLiDARなどのセンサーも内包しており、そこでLuminarのセンサーが選ばれたようだ。
つまり今後、NVIDIAのNVIDIA DRIVE Hyperionが大々的に展開されていけば、それに呼応してLuminarの売上高も上がっていくことが考えられる。
■プレマーケットで一時70%高の場面も
LuminarはRussell氏が高校在学中に創業した企業だ。Russell氏は11歳のころに自宅ガレージにラボを作るなどし、その後、光工学に興味を持っていく。そして、高校在学中にLuminarを創業し、25歳のときにLuminarがSPAC上場するに至っている。
Luminarの株価は11月9日、14.97%高の20.120ドルで取引を終えたが、株式市場が開く前のプレマーケットでは株価が一時30ドル近くまで上がり、前日比で70%高となる場面があった。それだけ株式市場でLuminarへの注目度が高まった1日だった。
しかし、時価総額は2021年11月9日時点で72億3,000万ドル(約8,1000億円)で、上場時よりは時価総額を落としている。そんな中、NVIDIAという売り先を確保し、株価が下落しがちなSPAC上場という「汚名」を返上できるのか、引き続き注目したいところだ。
▼Luminar Lidar Selected for NVIDIA DRIVE Hyperion Autonomous Vehicle Reference Platform
https://www.businesswire.com/news/home/20211109005556/en/Luminar-Lidar-Selected-for-NVIDIA-DRIVE-Hyperion-Autonomous-Vehicle-Reference-Platform
【参考】関連記事としては「Luminarの年表!自動運転の目「LiDAR」を開発」も参照。