自動運転のテストコースまとめ!日本でも続々登場

自動車メーカー以外による5施設を紹介



自動運転技術の実験は公道でできないわけではないが、さまざまな制約を伴う。そのため技術開発のスピードを高めるためには、自動運転専用のテストコースが役立つ。

日本国内でも自動運転技術の開発が進みつつある中、自動運転を試験できるコースが増えてきている。各自動車メーカーは当然、以前から独自のテスト設備を設けているが、今回は自動車メーカー以外のテストコースを紹介していく。


■JARIの城里テストセンター:全域で「5G」が利用可能
出典:日本自動車研究所公式サイト

一般財団法人「日本自動車研究所」(JARI)は2つのテストコースを所有している。その1つが茨城県東茨城郡城里町にある城里テストセンターだ。

約302万平方メートルの敷地の中に、全周5,500メートルの高速周回路や試験コースがある。24時間365日利用可能ということで、走行耐久試験や夜間試験の実施も可能だ。

2021年8月からは全域で5Gが利用可能となっているため、コネクテッドカーの実証実験も可能となっている。

■JARIのJtown:「多目的市街地」や「V2X市街地」などの試験エリア
出典:日本自動車研究所公式サイト

JARIが所有しているもう1つのテストコースが、茨城県つくば市にある自動運転評価拠点 「Jtown」だ。約16万平方メートルの敷地の中に、「特異環境試験場」「V2X市街地」「多目的市街地」という3つの試験エリアが設置されている。


特異環境試験場は、雨や霧などの気象条件や、逆光や夜間などの日照条件を再現することができる屋内施設だ。これによって実際の交通環境で想定される走行状況を屋内で再現し、車両に取り付けたカメラやセンサーの性能を評価することが可能になっている。試験路は全長200メートルで3車線用意されている。

V2X市街地は、実際の市街地における複雑な交通環境を想定した施設だ。通信を活用した協調型自動運転システムを評価することが可能となっている。また、路車間通信のための光ビーコンや電波ビーコンも備えられているため、多種多様なシステムを構築することが可能だ。

多目的市街地は100メートル四方のアスファルト上に白線を自由に設置し、さまざまな交差点を再現することができる施設だ。これにより車両の車線維持性能、歩行者・自転車などを認識する性能、障害物の回避性能を評価することが可能となっている。

これらの画期的な施設が評価され、Jtownは自動車技術会賞の技術開発賞を2019年5月に受賞している。


■JR西とソフトバンクのテストコース:自動運転や隊列走行を試験
線路と線路の間に設置された自動運転の専用テストコース=出典:JR西日本プレスリリース

JR西日本とソフトバンクは滋賀県野洲市で、自動運転や隊列走行の試験を行うテストコースを2021年10月から稼働させている。総面積は約22,800平方メートル、コース総延長は約1.1キロ、直線は最長約600メートルとなっている。

2022年春頃までに、連節バス・大型バス・小型バスの3種類の自動運転車両が用いられ、車種が異なる自動運転車両の隊列走行が行われるという。そして2023年までに専用テストコースでの自動運転・隊列走行に関する技術を確立させることを目標としている。

■三井不動産のKOIL MOBILITY WORLD:2021年6月オープン
出典:三井不動産プレスリリース

三井不動産は2021年6月、千葉県柏市で「KOIL MOBILITY FIELD(コイル・モビリティ・フィールド)」をオープンした。KOIL MOBILITY FIELDでは、自動運転車や歩行支援ロボットの試験をすることが可能だ。

KOIL MOBILITY FIELDは柏の葉スマートシティ「イノベーションキャンパス地区」内に設置されており、「モビリティサーキット」「ドローンフィールド」「草刈フィールド」「作業室」で構成されている。このうち自動運転車のテストが可能なモビリティサーキットは、全長400メートル、幅員7メートルとなっている。

■センスタイムのAI・自動運転パーク:自動車学校跡地を活用
「AI・自動運転パーク」=出典:センスタイムジャパン社プレスリリース

コンピュータービジョンに強みを持つセンスタイムの日本法人は、2019年1月に茨城県常総市で自社専用のテストコース「AI・自動運転パーク」を開設している。常総市営自動車学校の跡地を活用した施設だ。

テストコースは自動運転など様々な車載事業の技術開発の拠点として活用されており、「人が自動車の運転を覚えた場所が、AI(人工知能)が運転を学習していく教習所」と紹介されている。

■【まとめ】テストコースは今度もどんどん増える

日本だけではなく、世界各地でも自動運転の専用テストコースが続々誕生している。詳しくは自動運転ラボの記事「『住めない街』続々…自動運転テスト向け、仮想の『人』も歩き出す?」も参照してほしい。

自動運転技術の開発は国内外でこれからさらに加速していくことは確実だ。新たなテストコースがまた開設されたら、自動運転ラボでも取り上げていきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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