2020年9月、香川県高松市で6歳と3歳の姉妹が車の中に長時間置き去りにされ、熱中症とみられる症状で死亡する事件が起きた。2020年6月にはつくば市で2歳の女児が車内に放置されて死亡する事件も起きており、このような悲しい事件は後を絶たない。
エアコンを使用していても十分でない場合や、長い時間車内にいると脱水症状を起こす場合もある。このような痛ましい事件を何とか防ぐことはできないだろうか。答えは「できる」だ。
一定条件化で運転手に代わってシステムが運転操作を担う「自動運転レベル3」向けの技術として、ドライバーの状況を把握するための車内向けのセンシングや画像分析技術が目覚ましい進化をしている。
こうした技術を使えば子供が車内で取り残されている状態を検知し、警察などに自動で通報がいくシステムを構築することができる。
■安全のための車内の監視、動きが徐々に活発化
すでにこうした動きは活発になりつつある。
自動車部品メーカーのヴァレオ・ジャパンは2019年5月に開催された自動車技術展で、「幼児置き去り検知システム」のデモを実施した。車内の天井に小型のレーダーセンサーを設置し、高周波ミリ波レーダーで人が車内に取り残されていないかを感知するという仕組みだ。
欧州の自動車安全テスト「Euro NCAP」では2022年から、「Child Presence Detection(幼児置き去り検知)」が試験項目として加わる。アメリカでも後部座席置き去り警告システムの搭載義務化を議会で審議中となっている。
■センシング技術で放置死をゼロに
日本自動車連盟(JAF)の調べによると、2019年8月の1カ月間でJAFが出動した件数のうち、子どもが車内に残されていたケースは全国で115件あり、緊急性が高いと判断し、ドアガラスを割るなどで対応したケースは9件あった。
車は駐車場所に関わらず、外の気温が高い場合は短時間で危険な状態になる。気温35度の中で駐車していた場合、窓を閉め切った状態でエンジン停止をすると、15分で人体に危険なレベルの暑さとなってしまう。
自動車と安全を考えたとき、交通事故による死者を減らす取り組みは重要だが、車内での放置死を無くす取り組みも同様に重要だ。幸い、車の自動運転化に伴いセンシング技術は向上している。こうした技術を生かし、放置死などが無くなっていってほしいと感じる。
【参考】関連記事としては「【最新版】自動運転の最重要コアセンサーまとめ LiDAR、ミリ波レーダ、カメラ」も参照。