ルノー日産三菱の3社連合、育ててきた自動運転事業はどうなってしまうのか

会長カルロス・ゴーンの逮捕劇


出典:THE ALLIANCE公式ウェブサイト

ルノー・日産・三菱アライアンスの代表を務めるカルロス・ゴーン氏の逮捕劇に、3社連合が揺れている。さまざまな思惑が交差する各社の動向に加え、日仏政府も交えた主導権争いが繰り広げられており、内乱が長引くようなことがあれば経営に甚大なダメージを負いかねない状況だ。今回の逮捕劇の裏に隠されたルノー・日産の思惑とはどういったものか。アライアンスに内在する問題に焦点を当ててみる。

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■ゴーン氏の経歴と事件の始まり

ゴーン氏は、フランス大手タイヤメーカー・ミシュランを経て、上席副社長としてルノーに入社。1999年、当時経営危機に瀕していた日産自動車がルノーと資本提携を結び、ゴーン氏が日産のCOO(最高執行責任者)を兼務することとなった。







経営再建の手腕が認められ、後に日産自動車の社長兼CEO、ルノーの取締役会長兼CEO、ルノー・日産アライアンスの会長兼最高経営責任者CEOに就任することとなる。2016年にはアライアンスに加わった三菱自動車工業の代表取締役会長に就任し、2017年に日産のCEO職を退いている。

2018年、日産の内部告発によりゴーン氏が自身の報酬を過小申告していた疑いが強まり、東京地検特捜部が11月19日に同氏と代表取締役のグレッグ・ケリー氏を逮捕。同日、日産は両者の代表職を解くことを取締役会に提案すると発表し、22日の取締役会でそのことが決議された。三菱自動車も同様の措置をとることとしたほか、同社における不正についても内部調査を進める方針を発表した。一方、ルノーは20日に開いた緊急取締役会で、ゴーン氏の会長兼CEO職の留任を決めている。

■ルノーに内在する思惑とは?

過去に日産の危機を救ったルノーは、日産株の43.4%を保有する事実上の親会社。日産はルノー株の15%を保有している。また、ルノーは第二次世界大戦後に一時国有化された背景もあり、フランス政府がルノー株15%を保有する大株主として同社の経営に対し国の意向を働かせている。

フランス政府は過去、議決権を増やしてルノーと日産の経営統合を推し進めようと画策したことがある。この時は、ゴーン氏率いる日産が出資比率の引き上げを検討するなど猛反発し断念する結果となったが、経営再建後にルノーを上回る規模となった日産を手中に収ようとする姿勢は鮮明となっている。

また、経営統合に関するゴーン氏の意向についてもさまざまな説が流れている。この時は反発したゴーン氏だが、胸中では推進派であり、その後水面下で統合に向けた策を模索していたとする説や、条件が変わったことにより方針を転換したとする説、フランスのマクロン大統領との不仲から依然反対派とする説なども存在する。ただ、逮捕後の各社の対応を鑑みれば、統合や提携強化に大きく傾いたゴーン氏を日産が排除し、一方のルノーは切り札として堅守する——といった見方の方が説得力が強そうだ。

いずれにしろ、ゴーン氏の逮捕をきっかけに、日産を手に入れたいルノーと独立性と対等な関係を保持したい日産との駆け引きに改めて注目が集まる格好となっている。

■3社アライアンスのモビリティ戦略とは?

アライアンスは現在、ニッサン、インフィニティ、ダットサン、ヴェヌーシア、ルノー、ルノー・サムスン、ミツビシ、ダチア、ラーダ、アルパインの10ブランドを展開しており、2017年のグループ自動車販売台数は1060万台で、乗用車、小型商用車(LCV)販売数に関しては世界最大級のグループとなっている。

2017年9月には、2022年末までに年間のシナジーを倍増させる新6ヵ年計画「アライアンス2022」を発表。各社は共通プラットフォームの使用を増やし、4つのプラットフォームで900万台をカバーするほか、共通パワートレインの使用も全販売車両の75%まで拡大することとしている。

また、先進的な自動運転システムやコネクテッド技術、モビリティサービスの開発・展開と並行し、電気自動車(EV)技術の共用も拡大する計画を打ち出しており、計画期間中に完全自動運転を含めた異なるレベルの自動運転技術を40車種に搭載するほか、無人運転車両による配車サービス事業への参画なども計画している。

2018年1月には、オープンイノベーションを支援する企業ベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ(Alliance Ventures)」を設立し、今後5年間で最大10億ドル(約1130億円)を投資すると発表した。

電動化や自動運転システム、コネクティビティ、AI(人工知能)などの新たなモビリティへのオープンイノベーションに優先的に投資することとし、同年10月に米国のモビリティデータプラットフォームであるコード(Coord)社、自動運転技術の開発に取り組む中国のWeRide.ai社、11月にマルチモーダル交通用のアプリ開発を手掛けるカナダのトランジット社、リチウムイオンバッテリー技術を開発する米エネベート社にそれぞれ出資することを発表している。

■両社間の摩擦が表面化 失速を招きかけない局面に

ゴーン氏による金融商品取引法違反の実態より、ルノーVS日産の方に大きな関心が寄せられることとなった今回の事案。日仏政府による会談も行われることとなり、アライアンス維持の方向で調整される線が濃厚だが、両社の間に潜んでいた亀裂が大きくなった感は否めず、カリスマ的経営者を失ったダメージも尾を引く可能性がある。

次世代モビリティ社会に向け協同体制を敷く3社連合だが、話し合いが長引けばさまざまな計画がとん挫し、自動運転などの先進分野の開発の失速を招きかねない重大な局面を迎えている。







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