イーロン・マスク、日本で「英語ペラペラ運転手」募集 テスラの自動運転試験で

起業家精神も必要らしい



出典:Dunk / flickr (CC BY-SA 2.0 DEED)

EV大手の米テスラが、日本国内で自動運転テストドライバーを募集している。単純なドライバー職と思いきや、応募条件に起業家精神や語学力が盛り込まれている。テスラはテストドライバーにも一定水準以上の素養を求めているようだ。

優秀なドライバーを従え、テスラはどのように自動運転技術を高度化し、どのように事業展開していく算段なのか。求人を通し、テスラの自動運転戦略に触れていこう。


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■自動運転テストドライバーの求人の概要

効果的なルート設計やデバッグも

Tesla Japanの求人によると、横浜勤務の自動運転テストドライバーを募集しているようだ。給与については不明で、経験と能力に基づくとしている。

自動運転のテストドライバーと聞けば、実証走行などを担当し、自動運転システムによる制御を的確に監視し、適時介入して安全走行を行う仕事……と考えるのが普通ではないだろうか。必要に応じ、ドライバー視点で気になったポイントなどを挙げていくこともあるだろう。

テスラの求人を見ると、その詳細がうかがえる。指定された区域でデータ収集用途のエンジニアリング車両を長時間運転し、必要に応じて記録デバイスの起動・停止を行い、機材やソフトウェアの簡単なデバッグを行う。そして、各シフトで収集されたデータの品質を分析し、報告する。

フィードバックを提供し、データ収集を最適化するためのプロセス改善を提案し、観察結果と課題を文書化した詳細な運転報告書を作成する。


走行する地域を調査し、Autopilotテストのための潜在的シナリオを含むルート設計を行うほか、最新のAutopilotソフトウェアバージョンおよびその他の関連車両機能について習熟する。

テスト仕様書に従って実世界でテストを実行し、特定のリクエストに応じたシナリオに対してアドホックなサポートを提供する。必要に応じて、他の車両エンジニアリングテストをサポートする。

安全に運転するだけでなく、しっかりとフィードバックを提供し、必要に応じて効果的なルート設計やデバッグ作業なども行うことを求められるようだ。

語学力や起業家精神も必要?

その上で、テスラは応募条件(マスト)として以下の素養・能力を設定している。


  • 優れたコミュニケーション能力、戦略立案能力、財務モデリング能力、プロジェクトマネジメント、ステークホルダーマネジメント能力
  • 起業家精神を持つ、自発的な人材
  • 電力業界またはエネルギー業界で6年以上の関連経験 ※エネルギー蓄電分野で4年以上の経験者は優遇 需給調整市場や容量市場等の電力市場に対する理解
  • 住宅用蓄電システムのサイト構成やVPPサービスに対する理解、事業開発の実績

さらに、英語能力としてTOEIC 865点以上、日本語能力も日本語能力試験1級またはN1――を求めている。

高度な英語能力や起業家精神、エネルギー関連の経験や知識など求められているのだ。これはもう、ただのテストドライバーではない。まごうことなきテクノロジー企業の一社員だ。

■テスラの自動運転戦略

FSDの世界展開を推進中

一流のテストドライバーを従え、テスラは日本でどのように自動運転技術を磨き、事業を展開していくのか。

テスラジャパンは2025年、Full Self-Driving (Supervised/以下FSD)の技術テスト走行を日本国内で本格的に開始した。

FSDは、エンドツーエンド(E2E)モデルにAI技術により、ドライバーの常時監視のもと現在地から目的地に至るほぼすべての道程で運転を支援するADASだ。現在、あらゆる状況下でハンズオフ運転を実現するレベル2++相当の技術に至っている。

道路交通ルール・環境は各国で少しずつ異なるため、テスラは汎用性を高めるべく世界各国で実証を進めているものと思われる。日本では2026年中の導入を目指す方針とされているが、導入には国の承認が必要だ。障壁となり得る課題を確実にクリアしていかなければならず、その意味で実証は非常に重要となる。

テスラによると、FSDは現在、米国、カナダ、メキシコ、プエルトリコ、中国、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、オランダ、リトアニア、エストニア、デンマーク、ベルギーで利用可能という。

欧州では最近暫定的に導入が始まったばかりで、スウェーデン交通局のように反対を表明する動きもある。ロイター通信によると、スウェーデン交通局はFSDが法定速度を上回る速度設定を可能にしている点などを問題視しているようで、こうした機能の削除を求めているという。

レベル2++の先には完全自動運転のロボタクシーが待っている

FSDの高度化は、レベル2++で終わらない。その先にある完全自動運転に向けた通過点に過ぎないのだ。テスラは2025年、FSDを駆使したロボタクシーサービスをテキサス州で開始した。2026年にはフリートの一部を無人化し、レベル4相当のサービス化にも着手している。

出典:Tesla公式サイト

ロボタクシー事業はまだまだ北米内での話だが、世界展開を見据えていることは間違いない。イーロン・マスク氏の頭の中には、ロボタクシーの直営形態ではなく、自動運転化されたオーナーカーによるロボタクシー構想が描かれている。

こうした自動運転技術・サービスを日本で実装するためには、まずFSDが認められなければならない。その意味でもFSD実証は重要であり、テストドライバーに求められる能力も高くなっていくのだろう。

■【まとめ】自動運転技術に関する新たな枠組みの行方にも注目

テスラにおいては、研究開発の人材などと同様、テストドライバーにもプライドや向上心、責任感を持って職務に臨む姿勢が求められる――ということなのだろう。ルーチンワーク感覚の人材は不要なのだ。

FSDの許認可の行方が気になるところだが、自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で2026年6月中に自動運転技術を網羅的に規定する新たな枠組みが採択される見込みで、E2Eによるレベル2++にも影響するものと思われる。

この採択を受け、日本政府がどのように動き出すか。要注目だ。

【参考】関連記事としては「テスラの自動運転機能(FSD)とロボタクシーを徹底解説」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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