ドイツの高級車メーカーであるメルセデス・ベンツは2023年12月22日までに、米国の2つの州で自動運転用特殊エクステリアマーカーライトの使用許可を世界で初めて取得したことを発表した。
カリフォルニア州とネバダ州にて、「ターコイズカラー」(※緑がかった青色、青緑色)のマーカーライトを装備することが許可され、自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の作動状況を周囲に知らせることができるようになる。
一般的にマーカーライトは黄色またはオレンジ色がほとんどで、ターコイズカラーはかなり目立ちそうだ。
■専用マーカーライトを装備する目的は?
メルセデスはすでにカリフォルニア州とネバダ州において、SクラスとSクラスのEV(電気自動車)版「EQS」に、オプション形式でレベル3の自動運転システム「DRIVE PILOT」を搭載する許可を得ている。DRIVE PILOTを搭載した両車種は、2024年始めに顧客に届けられる予定だ。
メルセデスが世界で初めて使用許可を取得した、自動運転用特殊エクステリアマーカーライトは、自動運転システムの作動状況を外部からはっきりと視認できるようにするためのものだ。DRIVE PILOTの作動中は、交通当局や警察官がシステムの状態を確認可能になる。また、条件付きで自動運転を行っている間、ドライバーが運転以外の行動をすることが許可されているかどうかを判断することも可能になる。
メルセデスでCTO(最高技術責任者)などを務めるMarkus Schäfer氏は「自動運転用マーカーライトの開発により、メルセデス・ベンツは再び業界の新たな基準を打ち立てる」と自信を見せている。また「自動運転車の普及が進むにつれ、車両と周囲の環境とのコミュニケーションや相互作用の重要性が増していく」と語っている。
■2つの州での運用計画
メルセデスが取得したターコイズカラーの自動運転用マーカーライト搭載の許可は、それぞれの州で運用が異なる。
カリフォルニア州での許可は、高速道路での自動運転用にターコイズカラーのマーカーライトをテストするために有効なもので、2年という期限付きになっている。SAE(自動車技術会)の規格に準拠して設計されたこのマーカーライトは、メルセデスのテスト車両のフロントライトとリアライト、2つのアウトサイドミラーに組み込まれている。
ネバダ州では、2026年モデルのEQSとSクラスのDRIVE PILOTを搭載した市販車に特殊マーカーライトを装備することが許可された。この許可は、州議会で法改正が行われるまで有効となっている。
■外部に状況伝える技術、日本企業も開発
自動運転車の状態を外部に知らせる取り組みは、これまでにも行われている。
ランプなどの自動車部品を製造する市光工業は、自動運転車用外向けHMI(ヒューマンマシンインターフェース)「e-Face」を、2023年10〜11月に開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」で世界初公開した。
e-Faceは、自動運転車から周囲の交通利用者へのコミュニケーションの支援で安心・安全を提供するもので、自動運転中の車両の状況に応じ、文字や表情で「発進」「横断者あり」「停車」「右折」「左折」「あいさつ」などのサインを表示する。
これにより、ドライバーが通常行う周囲の交通利用者とのコミュニケーションの一部をe-Faceが代替することができる。市光工業は、ドライバーレスになるレベル4自動運転サービスにおいても、e-Faceを活用して適切なコミュニケーションを取り、乗員にも交通利用者にも安全・安心でスムーズな運行を実現することを目標にしているという。
同社は、ドライバーだけでなく周囲の道路利用者に車両の動きや危険を分かりやすく伝える「路面描画プロジェクションランプ」も開発している。走行音の静かな電動化車両や、死角の多いトラックやバスなどの大型車両においても効果的で、接触事故の低減を図る。
■コミュニケーション技術の開発が加速
過去には、米フォードが自動運転車が意図を伝える光のサインのルールを世界で共通化させるため、他社に呼び掛けたり、英ジャガーランドローバーがフロント部にバーチャル・アイを搭載し、アイコンタクトが可能な自動運転車を試作したりしている。
周囲に状況を発信する自動運転車のコミュニケーション技術の開発は、今後ますます進んでいきそうだ。
【参考】関連記事としては「光のサインやバーチャルアイ…自動運転車と歩行者は、どう意思疎通をすべき?」も参照。