トヨタ自動車の公式サイトに2022年の「統合報告書」が掲載されている。統合報告書とは、トヨタが目指す未来の実現のために、どのような方針や戦略で経営課題に取り組んでいるかをステークホルダーに向けて記載しているものだ。
この統合報告書を読み解いていくと、興味深い「数字」を知ることもできた。内容を紹介していこう。
■e-Paletteと東京五輪
トヨタの自動運転車e-Paletteは、2021年に開催された東京2020オリンピック・パラリンピックの選手村に導入され、期間中約4万9,000人のアスリートや大会関係者が利用したという。
e-Paletteはクルマと情報の融合、街と強調するモビリティを目指し、効率よく正確に運行するための運行管理システムも開発されている。
■Woven Cityと自動運転
実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」は、静岡県裾野市のトヨタ自動車東日本東富士工場の跡地において現在建設中だ。人が生活する環境下で、自動運転やMaaS、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、AI(人工知能)技術などの実証をバーチャルとリアルの世界で行う。第1期オープンは「2024年」を目指している。
Woven Cityでは、「歩行者専用の道」「歩行者とパーソナルモビリティが共存する道」「自動運転モビリティ専用の道」の「3つの道」あり、地上と地下に分かれている。地下は「自動運転モビリティ専用の道」として自動運転車のみが走行する。
Woven Cityが目指すのは、ヒトのためにモビリティが役立てることを増やし、まだこの世に存在していない新たな価値を生み出す仕組みを創出して、誰かを幸せにすることだ。「I am moved」というヒトの心が動いたり感動したりするという要素を大事にしながら、未来には当たり前になっているような技術やサービスを発明していく。
■自動運転とソフトウェア
トヨタが注力する車両ソフトウェア開発プラットフォームの「Arene」(アリーン)は、ハードとソフトを独立して開発でき、ソフトの再利用が可能だ。自動運転などますます複雑化しているソフトウェア開発において、常に良いハードウェアと良いソフトウェアの組み合わせを実現する必要がある。
なお、自動運転での走行に必要な車載ソフトウェアは、自動運転のためのソフトウェア開発全体の「1割」のみだという。残り「9割」は機械学習システムによるデータの処理や実装、コードレビュー、ソフトウェアアップデート、ログ解析、ミュレーションなどの多様なツールだという。ソフトウェアの開発のほとんどは、車両の外かクラウド上で実行されている。
■車両安全と自動運転
トヨタは究極の願いとして「交通事故死傷者ゼロ」を目指している。自動運転車の開発も、交通事故死傷者ゼロに向けた取り組みの一貫だ。トヨタは交通事故死傷者ゼロに向けた安全技術の考え方として、「統合安全コンセプト」を掲げている。
「統合安全コンセプト」とは、駐車や通常運転、衝突直前、衝突、事故後の救助などの多様なステージで最適なドライバー支援をする際、車両に搭載されている個々の安全システムが連携して安全性を追求するという考え方だ。
トヨタの高度運転支援技術が搭載された車両では、ドライバー監視下で車載システムが適切に認知や判断、操作を支援し、車線や車間の維持、分岐、車線変更、追い越しなどを行う。ディープラーニングがメインのAI技術も取り入れられており、運転中に起きうる多様な状況を予測し、対応できるよう支援している。
■【まとめ】2023年の動きにも注目
自動運転にまつわるトヨタの統合報告書の内容を4つの視点から紹介した。日本はもちろん、世界からもその動向に注目が集まるトヨタ。2023年の動きにも注目だ。
▼トヨタ統合報告書2022
https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/library/annual/2022_001_integrated_jp.pdf
【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転戦略(2022年最新版)」も参照。