トヨタ自動車グループの豊田通商は2019年8月、アフリカにおけるモビリティ事業の拡充を目指し、関連事業を展開するスタートアップ企業へやベンチャー企業に融資する投資会社「Mobility 54(モビリティ54)」=仮称=を設立することを決めた。
アフリカでは交通インフラが脆弱な地域も少なくない。また人口の増加や都市化によって移動ニーズは多様化しつつ増大しており、モビリティマーケットは他エリアにも増して伸びていくことが予想されている。豊田通商の今回の発表は、そんな背景があってのものだ。
ただ豊田通商はアフリカだけではなく、シンガポールなどでもモビリティ領域における新たな取り組みをしており、モビリティに関する同社の国際戦略は全世界を視野に策定されていることが分かる。
この記事ではそんな豊田通商のMaaS関連の海外事業についてまとめて解説する。
記事の目次
■アフリカ:関連スタートアップへ融資、シナジーに期待
まず今回発表があったアフリカでの事業だが、Mobility 54社を設立してモビリティ関連事業を手掛けるスタートアップ企業などに融資をしていくというものだ。
豊田通商はアフリカ全土で既に自動車関連事業のネットワークを有している。そのため、融資先のスタートアップ企業が取り組む事業とのシナジー(相乗効果)に期待できる。例えば、サービスの設計をスタートアップ側が、アフリカ全土への展開を豊田通商側が、といった具合だろう。
Mobility 54は2019年9月にフランスのセーブル市で設立すると発表されている。資本金額は100万ユーロ。同社は「アフリカにおけるMaaS・CASE事業の取り組みを加速し、モビリティ社会の課題解決に寄与していきます」としている。
■シンガポール:交通統合サービスのスタートアップに出資
豊田通商は2018年10月、さまざまな交通サービスの統合に取り組むMaaSスタートアップ企業のmobilityX社(本社:シンガポール)に出資することを発表している。このmobilityX社は2018年に設立されたばかりで、定額制のサブスクリプション型で統合的な交通サービスを展開することを目指している。
豊田通商はこのシンガポールにおけるmobilityX社への出資で、「MaaS事業の確立とその核となるノウハウの蓄積を目指します」と語っている。出資だけではなく戦略的提携も結び、豊田通商がこれまで培ったさまざまなノウハウもmobilityX社に提供するものとみられる。
ちなみに豊田通商はシンガポールに本社を置くライドシェア東南アジア最大手のGrabにも出資している。
【参考】関連記事としては「豊田通商、シンガポールのMaaSスタートアップに出資 周辺国への展開支援」も参照。
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■フランス:電動車いすシェアの実証実験
豊田通商はMaaS事業の一環として、マイクロモビリティのシェアサービスを手掛けるINDIGO Weel(インディゴ・ウィール)社=2017年設立=とともに、次世代電動車いすのシェアサービスの実証実験をフランス南西部のトゥールーズ市で実施することを2019年6月に発表している。
電動車いすのシェアサービスが定着すれば、高齢者や障害者の移動の強い味方となる。豊田通商はこの実証実験に関する報道発表で「ニーズや課題を洗い出すとともに、その結果をサービスに迅速に落とし込むことを目的として実施します」としている。
実施期間は2019年6月から約半年間ほどとされており、実証実験には豊田通商提供の「WHILL」を4台使うとされている。
■【まとめ】フットワーク軽く日本やさまざまな国で
豊田通商は2019年7月には沖縄県の久米島で観光型MaaS事業として「久米島Ha:mo」を始動させている。モビリティ関連領域ではMaaSだけではなく、自動運転や電動化などに関する取り組みも積極的に展開しており、自動運転技術を活用したトラックの隊列走行の実証実験も2016年から国から受託して実施している。
フットワークを軽く、日本を含むさまざまな国で先進的な取り組みを続ける豊田通商。今後の展開にも注目したい。
【参考】関連記事としては「総合商社、自動運転・MaaSビジネスに照準 最新業界動向&事業まとめ」も参照。
日本七大商社の自動運転・MaaS事業最新まとめ&解説 役割多様化、AI開発支援や実証実験も トヨタ自動車グループの豊田通商にも注目 https://t.co/mk9sLedDPb @jidountenlab #商社 #自動運転 #ビジネス
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) November 1, 2018