自動運転OS(基本ソフト)を開発する株式会社ティアフォー(東京オフィス:東京都品川区/代表取締役社長:武田一哉)はこのほど、SOMPOホールディングスと資本提携し、追加出資によって累計の資金調達額が175億円に上ったことを明らかにした。
ティアフォーはオープンソースの自動運転OS「Autoware(オートウェア)」の開発に取り組んでいる。Autowareはすでに国内外の数百社で導入されており、今回の資金調達によって技術者の増員などを行い、開発スピードをさらに加速させたい考えのようだ。
ティアフォーはSOMPOホールディングス傘下の損害保険ジャパンから過去に出資を受けており、自動運転の走行前・走行中・トラブルを総合的にサポートする「Level IV Discovery」サービスの共同開発などに取り組んできた。
両社は今後、自動運転技術とLevel IV Discoveryサービスを一体的に提供する「自動運転プラットフォーム」の開発に取り組んでいくことを明言しており、技術とサービスをワンストップで提供するプレイヤーとして、世界市場でトップシェアを獲得することを目指す。
今回の資本提携が発表されたあと、自動運転ラボはティアフォーの創業者兼CTO(最高技術責任者)である加藤真平氏にオンラインインタビューし、今回の資本提携における背景やねらいなどを聞いた。
【加藤真平氏プロフィール】かとう・しんぺい 株式会社ティアフォーの創業者兼CTO(最高技術責任者)、「The Autoware Foundation」代表理事。博士(工学)。1982年、神奈川県生まれ。慶応義塾大学理工学研究科開放環境科学専攻後期博士課程修了。カーネギーメロン大学、カリフォルニア大学の研究員、名古屋大学大学院 情報科学研究科准教授を経て、現職。専門はオペレーティングシステム、組込みリアルタイムシステム、並列分散システム。
■ティアフォーは「技術」、SOMPOは「サービス」
Q 今回の資本提携により、ティアフォーの最大の外部資本提携先がSOMPOホールディングスとなりました。提携する上でティアフォーとSOMPOホールディングスは、それぞれどのような役割を担っていくのですか。
加藤氏 自動運転車が普及していくためには「テクノロジー」だけでなく、安心安全に社会に届けるという「サービス面」の整備が必要です。
ティアフォーは「Autoware」を開発しています。一方、SOMPOホールディングスさんは走行前にリスク調査をするリスクアセスメントをはじめ、遠隔での運行管理や故障時のロードサービス、専用保険、部品交換サービスなどを展開しています。
ティアフォーは技術開発を担い、SOMPOホールディングスさんは技術以外のサービス側を担うイメージです。それがまさに「自動運転プラットフォーム」です。
自動運転分野で大きなシェアをとるにはこうした2つの要素が確実に必要で、今回の提携は自動運転の分野でトップシェアを目指す上で重要なステップであると考えています。
■資本提携する企業とサービス化などを積極的に推進
Q ティアフォーは自動運転開発において他企業との協業にも積極的で、ヤマハ発動機やトヨタ自動車が参加する「未来創生ファンド」からは出資も受けています。パートナー企業とは今後どのような取り組みを進めていく予定ですか?
加藤氏 ヤマハ発動機さんとは合弁会社として「eve autonomy」を設立し、物流倉庫向けの自動搬送ソリューション事業に取り組んでいます。トヨタさんの東京オリンピック・パラリンピック仕様の自動運転EV(電気自動車)「e-Palette」ではAutowareが採用されています。
資本提携関係である企業さんなどとはサービス化などを含め、より協業関係を強化していきます。
【参考】関連記事としては「自動運転OS開発のティアフォー、ヤマハ発動機と合弁会社「eve autonomy」設立」も参照。
■Autowareの搭載車両、2025年に「1万台」目標
Q 今回調達した資金で、具体的にはどのようなことに取り組んでいく予定ですか?
加藤氏 エンジニア数を現在の100人から200人以上まで増員します。人材面に投資することでAutowareの開発をより一層加速していきます。
また、さまざまな車種にAutowareを導入できるようAutowareが正常に動作するために必要な仕様を明確にしていき、「リファレンスデザイン」として公開していく予定です。
Autowareの採用車両数を2025年までに1万台まで増やすことも目指します。技術レベルは「レベル4」を想定していますが、2025年時点では実用として「レベル2+」を含めることも想定しています。
累計資金調達額が200億円に近づき、やっと世界と戦える土俵に立てたと感じています。世界マーケットで勝ち抜き、高いシェアを維持できるディープテック企業として、成長を続けたいと考えています。
【参考】自動運転レベル4については「自動運転レベル4の定義や導入状況を解説&まとめ 実現はいつから?|自動運転ラボ」も参照。
■取材を終えて
インタビューを通じ、今まで通り技術を磨き続けることに対する意欲や、サービス企業とのタッグによって世界市場での競争を有利に進めようという戦略が感じられた。自動運転業界のど真ん中にいるティアフォーの今後の取り組みに、引き続き注目していきたい。
【参考】関連記事としては「ティアフォー、自動運転実証エリアを10倍以上に 113億円の使い道は? 加藤真平会長に聞く」も参照。