【インタビュー】我々は”移動”のコンシェルジュ…自動運転時代に極まるタクシーの真の価値 大和自動車交通

大塚一基専務に聞く





自動運転ラボのインタビューに応じる大和自動車交通の大塚一基専務=撮影:自動運転ラボ

タクシーと自動運転、両者は敵同士なのだろうか。自動車が自動運転化すれば運転手が必要無くなる、となるとタクシー会社は…。こんな声が聞かれる。

しかしこれは、タクシー会社の価値を人の運送業のみと考えたときの理屈だ。タクシー会社の価値がほかにもあれば、自動運転時代でもタクシー会社は進化していける。このことに気が付いたのが、タクシー会社としては東京で唯一の上場企業である大和自動車交通だ。







大和自動車交通の自動運転時代を見据えたビジョンを聞きに、自動運転ラボは同社の本社を訪れ、新時代のビジネスの構築に取り組む専務取締役の大塚一基氏に話を聞いた。

【大塚一基氏プロフィール】おおつか・かずき 1960年生まれ。大学卒業後、金融機関を経て2013年に大和自動車交通に入社。2014年に取締役営業企画部長、2018年に専務取締役営業本部長(専務執行役員)に就任し現職。WEBベースによる配車システム「WEBタク」やタクシー5社とソニーグループによる「みんなのタクシー株式会社」などにおける事業などを推進する。

■実証実験で見えた新時代のビジネスの方向性
Q 御社が「自動運転」とどう向き合っているのか、教えて下さい。

まず、タクシーと自動運転は敵対する関係にあるとは思っていません。明確に今後が見えているわけではないですが、味方にして、共存していきたいと思っています。

ただタクシーという旅客運送事業にとって、今後、自動運転領域が密接に関わってくることは感じていました。「自動運転となると無人になり、タクシードライバーは本当にいらなくなるのか?」と考えると、我々にとってはそこが一番の問題です。

自動運転技術の実証実験を自ら行い、また、他の企業が行う実験にも参加してきた中で、分かったことがたくさんあります。自動運転化はもちろん進展していくけれど、一足飛びに、瞬間的に無人運転になるということはありません。そんな中、今後5年、10年とかけて自動運転が進んでいく中で、我々の今までの知見が活かせる可能性があることが分かってきました。

そして、ハイヤー・タクシー事業者としてお客様に乗車いただいた車を安全に運行させることで利益を得る、というビジネスがこれまでと同じように成り立ち得ることが分かりました。全体の進み方が見えてくる中で、自動運転の情報を持ちながら各所でさまざまな判断をし、我々が今後も生きていけるようなビジネスを考えていこうと思っています。

■「複合サービス提供者」として可能性、自動運転時代のコンシェルジュに
Q これまでに取り組んできた自動運転の実証実験について、教えて下さい。

2018年5月に本社を利用しての実証実験、2018年9月にはNTTデータが主体となって豊洲でマンションと商業施設をつないだ実証実験を行いました。その後、12月16日から今年の2月1日までは日本総合研究所と神戸市北区の高齢化地域における実証実験を行いました。

日本総合研究所とは自動運転の新しいビジネスモデルを開発することを目的に提携しています。色々な方向性から自動運転化に協力していくという考えで動いていますが、一方で自動運転化が進んでもドライバー席に人が座るという今の時代が完全に終わるわけではないかもしれない、ということも感じています。

プロのドライバーとして緊急事態への対応やお客様へのおもてなしなど、運転以外の部分の安心・安全面を含めた質を上げていきコンシェルジュのような役割が担える可能性もあります。

そして自動運転の実証実験などに参加することによって、自動運転に関わる開発会社や企業からお話しをいただくなど、さまざまな横の広がりが増えています。自動運転に関する知識を高めていきながら関係各所と話し合いをすると、今までとは違う見方ができるようになってきました。今後も色々な企業の方と前向きに取り組みを行っていきたいと考えています。

■自動運転の試験にパスしたドライバーが15人も
Q 御社の乗務員は自動運転の実証実験のテストドライバーとしても活躍していると聞きました。どこでどのように技術を学んだのでしょうか?

自動運転の実証実験に関しては、国が定めるガイドラインを遵守して行う必要があり、運転技術にも充分に習熟していることが求められます。我々のドライバーは群馬大学が作成した自動運転教育に則り、実技と座学を学んで合格した後、実験前には1週間の実務乗車を行いました。試験では運転技術だけではなく、IT系のセンスを保有しているかも問われるため、実は、この試験に合格できなかったドライバーもいます。

Q 今後はテストドライバー派遣ビジネスも始められそうですね。

このテストドライバーの教育費は自社が負担し、各地の自動運転実証実験にドライバーが参加する方向性でいきます。現在は弊社にはこのテストドライバーとしての乗務員は15人ほどいますが、増員し、色々な実験に参加できるようにいたします。それにより更に自動運転に関しての知見を高めたいと思っています。

■最初はみな懐疑的、試乗が個々の意識を変えた
Q タクシー業界において、御社は自動運転に対してアプローチが積極的な企業の一社かと思いますが、社内では「反対派 vs 推進派」などの争いは起きませんでしたか?

当たり前のことですが、最初はみな自動運転に対して懐疑的でした。ドライバーは特にそうですが、実際に幹部や役員をはじめ、ドライバーも自動運転車両に試乗したところ、実態が分かりさまざまな意味で安心し、自動運転に対する理解が深まったようです。

色々な見方があるとは思いますが、前述したように、突然、全てのタクシーや自家用車が無人運転に切り替わるわけではないので、そこに到達するまでにきちんと会社の体制も整えていけばいいのです。

またこうした試乗を行ったことによって、自動運転のテストドライバーに立候補したいという人も増えました。我が社としてのビジネスが拓けていくのであればと、ドライバーの方も協力的でいてくれます。

経営サイドとしてもドライバーのステップアップにもなることを願っています。自動運転の実験に実際に参加することにより、技術の進歩が実感できます。それにより、恐怖心や懐疑心なども払拭されていますね。

Q 今後、御社としての意気込みは?

かつては、一番アナログだと思われていた「タクシー業界」がIT技術や自動運転車両の開発に伴いスポットライトを浴びている状況にあるのは、嬉しいことです。これを好機とみて前進し、企業としてタクシー会社にしかできないビジネスを構築していきたい。

何が正解かは分からないもどかしさもありますが、時代の流れとして、インターネットやIT技術が進むことにより、他業種などとの接続や連携も取りやすくなるでしょう。さまざまなところときちんと会話をしながら、自動運転以外の部分でもやれるところはやっていきます。

■【取材を終えて】立ち向かったからこそ見えたもの

立ち向かったからこそ見えたものがあった。自動運転の実証実験に二の足を踏むことなく参加するなどした結果として、新時代のビジネスの構築に全社員で挑むという体制が出来上がった。大和自動車交通の挑戦は続く。







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