【密着・最前線】ZMPと日の丸交通の自動運転タクシー実証実験、参加第1号モニターが語ったこと

大手町から六本木の5.3キロを走行

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実証実験の第1号として自動運転タクシーに乗車した武士さんご家族=撮影:自動運転ラボ

株式会社ZMP(本社:東京都文京区/代表取締役社長:谷口恒)が現在、日の丸交通株式会社(本社:東京都文京区/代表取締役:富田和孝)とともに、世界初の自動運転タクシーによる公道での営業サービス実証実験を実施中だ。

実証実験は東京都内の大手町(大手町フィナンシャルシティグランキューブ)と六本木(六本木ヒルズ)を結ぶ5.3キロ間で、乗務員が乗車した状態で9月8日まで実施。自動運転ラボは実証実験初日に密着し、実際に自動運転タクシーに乗車した一般のご家族などに話を聞いた。

■スマホとタブレットで自動運転タクシーを操作

世界初の自動運転タクシーの公道営業実証実験。その第1号として乗車したのが、東京都豊島区在住の武士(たけし)さん一家だ。

応募数1500人の中から第1号に選ばれたご主人は乗車前に「ドキドキします!」と語り、「とても混雑しているこの東京の中心部で自動運転タクシーで走れるというのは信じられないこと。世界初の乗車が楽しみ」と笑顔で答えた。

自動運転タクシーはドアの開閉まではスマートフォンアプリで、自動運転タクシー乗車後は座席前方のタブレットで操作を行う。自動運転タクシーの到着後、ご主人がスマホアプリで自動運転タクシーについたQRコードを読み取ると、ZMPの自動運転車両RoboCar (トヨタ・エスティマ)の後方ドアが静かにスライドして開いた。

ご家族がタクシーに乗り込むと、タクシー内にあるタブレットに「ようこそ、ご乗車ありがとうございます」「ドアが閉まります、よろしいでしょうか」などと表示されるほか、シートベルトの確認やルート確認の画面なども映し出される。ご主人が自動運転タクシー内でスムーズにタブレットでの操作を終えると、自動運転タクシーは滑らかに走行を始めた。

■乗車のご家族「普通のタクシーに乗っていると錯覚」

大手町フィナンシャルシティ・グランキューブを出発した自動運転タクシーは、六本木ヒルズに到着。到着後、ご主人がタブレットで降車の操作をし、自動運転タクシーの最初の営業実証は成功を果たした。

報道陣の囲み取材に応じてくれたご主人は、終始穏やかな表情で「想像よりもはるかにスムーズでした。タブレット画面に『オート』と表示されていると自動運転になっているのですが、とても自然な乗り心地で普通のタクシーに乗っているのではないかと勘違いしてしまいそうでした」と自動運転タクシーの車内での様子を語った。

ご主人は車好きでかつ新しいもの好きだったこともあって、今回の実証実験の乗車に応募した。実際に実用化された場合にも「ぜひ乗車したい」と話した。また一緒に乗車した息子さんも「乗り心地がよかったし、楽しかった!全然怖くなかった」と語り、車内のタブレットで車両周囲の様子が映し出されることなどを見て楽しんだという。

同乗した奥さんも「普通のタクシー運転手さんと同じく、理論的に運転してくれる自動運転タクシーは、安全性などもどんどん確保されていくのではないかと思いました」と感想を述べた。

■乗車した人の感想や意見を直接聞き、さらなる進化を

トラブルもなく一連の実証を終えた後、ZMPの西村明浩取締役と日の丸交通の富田社長が報道陣の取材に応じた。

西村氏は「今まで(実証実験を)行ってきたお台場に比べ、今回のルートは交通量が違い、車間距離なども短い、動き自体も早いなどの違いがあります。そうした場所で実証実験ができたのは喜ばしく思う」と語った上で、「実際に乗車した方の感想や意見が率直に聞けることなどに関しても大きな成果と感じています」と話した。

今後の課題については「交通量の多い地域での自動運転は、周りの車や交通との兼ね合いがあるので、人ではなくてはできないアイコンタクトの代わりにできる表示などや、ルールなど、そういったものが整っていけばいいと思っています」と説明した。

富田社長は「2017年6月からZMPさんとこのプロジェクトを進め、やっとこの実証実験が行えて嬉しく思う」とまず口にした。その上で「タクシー運転手がいらなくなってしまう可能性はないのか、という質問は多いですが、現在タクシー業界は全国的に人手不足です。運転のプロとして、タクシー会社が自動運転開発に協力して、人手不足を補えればいいと思っています」と話した。

自動運転レベル4での運用実現目指す

ZMPと日の丸交通は、人が完全に運転に関与しない自動運転レベル4(高度運転自動化)での自動運転タクシーの運用を目指している。国土交通省や政府とも連携しながら、安全な自動運転社会の実現に貢献していきたい考えだ。

世界初の取り組みとして注目を集めている今回の実証実験。今後の自動運転タクシーの一層の進化に注目していきたい。

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