ドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループが2018年5月22日、中東イスラエルの第二の都市テルアビブに新たな起業支援拠点「コネクト」(Konnect)を開所した。高い自動運転技術を持ったスタートアップ企業が続々と誕生するイスラエルに、世界の有力企業が熱視線を注いでいる。
コネクトでは、現地のパートナーやスタートアップ企業がフォルクスワーゲングループとその多くのブランドに直接アクセスできるようにし、イスラエルの高度な技術シーンとのビジネスコラボレーションやメンタリングとコンサルティングを支援する。すでに未来のモビリティに関連する革新的なビジネスアイデアを持つ41の地元企業をサポートしているという。
イスラエルをめぐっては、2016年に米ウーバー社が自動運転トラックを開発するイスラエルのスタートアップ企業Ottoを、米フォード社はAI(人工知能)・機械学習技術を持つSAIPS社をそれぞれ買収した。2017年には米インテル社が画像認識用半導体技術を持つモービルアイ社を150億円(約1兆7000億円)で買収し、大きな話題となった。インテル社とモービルアイ社は自動運転レベル4(高度運転自動化)の走行試験もおこなっている。
【参考】インテル傘下のモービルアイ社に関する取り組みは「米インテル、自動運転技術で800万台分の巨大契約獲得 欧州メーカーに提供へ|自動運転ラボ 」も参照。
デンソーも2018年4月に拠点開設
日本の大手自動車部品メーカーのデンソーも2018年4月にイスラエルに拠点を構え、スタートアップ企業との協業のもと自動運転やサイバーセキュリティ、AIなどの先端技術に関する研究開発を開始している。
デンソーは報道発表でイスラエルについて「サイバーセキュリティや通信、AI、センシング、ソフトウェアなどの分野で先進的な技術開発が行われていることで注目されています」と説明した上で、「海外企業と連携したビジネス開発の取り組み事例も多く、イノベーション促進への貢献が期待されます」とその地域性に高い期待を寄せている。
【参考】デンソーの取り組みについては同社の「プレスリリース」も参照。
またイスラエルについて、2018年1月に東京ビッグサイトで開催された「オートモーティブワールド2018」では、イスラエルの企業11社が出展するイスラエルパビリオンが設けられるなど、海外への売り込みも積極的だ。
GM、ダイムラー、ボッシュも続々進出
イスラエルには、フォルクスワーゲングループ以外にも米ゼネラルモーターズ社や米ダイムラー社、独ボッシュ社などほぼすべての自動車大手が研究開発の拠点を作っており、今回フォルクスワーゲングループが拠点を作ったテルアビブは、第二のシリコンバレーと呼ばれるほど研究施設が集中している。
その背景には、同国が国策として推し進めている科学技術振興政策がありそうだ。様々な支援や産学連携のもと毎年数百にのぼる新興企業が誕生しており、自動運転関連の分野だけでも500社以上が存在するという。とりわけ自動運転は機械や部品、半導体、アプリケーションなど多様な分野の融合が必要な新規産業であるため、革新的な技術を持った企業への注目、ひいては買収や提携といった動きは今後も続きそうだ。