トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント株式会社(本社:東京都中央区/代表取締役:奥地弘章)=TRI-AD=は、自動運転関連ソフトウェアの先行開発を行うトヨタ自動車の子会社だ。
TRI-ADは2020年7月、同社を持株会社の「ウーブン・プラネット・ホールディングス」と事業会社「ウーブン・コア」「ウーブン・アルファ」に分け、2021年1月から新体制で事業を拡大・発展させていくと発表した。
親会社であるトヨタ自動車の豊田章男社長もこの発表に際し、新体制に向けた思いを語っている。この記事では新体制について解説しつつ、スピーチ内容から豊田社長の思いを少し深掘りして考えてみよう。
■それぞれの会社は何をする?
「ウーブン・プラネット・ホールディングス」は全体の持株会社としてグループ全体の戦略的意思決定や新事業開発を行う。
その下に設立される2つの事業会社だが、自動運転技術に特化したミッションを持つのが「ウーブン・コア」となる。まだ商品化するには時間がかかる技術の開発・実装から、商品化した後の技術の進化までを担うことになる。
一方の「ウーブン・アルファ」については、「Woven City、Arene、AMP などの新領域に対する事業拡大の機会を探索」とされている。
すでに発表されている「あらゆるモノやサービスがつながる実証都市」であるWoven Cityを推進するほか、オープンなクルマ作りのプラットフォームである「Arene」や自動運転に欠かせない高精度な地図のプラットフォームである「AMP」(Automated Mapping Platform)など、自動運転やコネクテッド・カーに欠かせない技術が事業領域となる。
■「Woven」「Planet」にこめた、地球人としての貢献への思い
豊田社長は、なぜ「ウーブン(Woven)」という言葉を新会社の名称で使ったのだろうか。
Wovenとは「織り込まれた」という意味である。トヨタ自動車のルーツとなる豊田自動織機の創業者・豊田佐吉が母を楽にさせたいという思いで自動織機を作ったことから、「未来に向けた実証実験都市『Woven』と名付けたのも、そうした『他の誰かのために』という想いを、未来をつくっていくこれからも忘れずにいたいと考えたからです」と語っている。
豊田社長は同時に、国や地域を越えて、「地球人」として貢献したいという思いも持っているようだ。スピーチでは「『Planet』は『City』を遥かに超えた規模の『惑星』という意味を持ちます。ホールディング会社『Woven Planet Holdings』は、今までよりも、もっと大きな視点で『未来の幸せ』を考えていきます」というように述べている。
ちなみに豊田社長は2020年3月期の決算説明会においても、「『ホームタウン』『ホームカントリー』と同じように、『ホームプラネット』を大切に企業活動をしていく」と述べていたように、地球全体の幸せや、エコシステムを作るために自分たちがリードしていかなくてはならないという思いがあり、「プラネット」という言葉を使っている。
■【まとめ】豊田社長「個人として」も相当額の投資
新会社3社では、いずれも「トヨタ」という言葉が含まれていない。ただ、豊田社長が「トヨタが本当に大切に紡いできた『誰かの幸せのために』という想いを『Woven』という言葉に載せて引き継ぎ、新たにトヨタの未来を切り拓いていくための会社です」と語っているように、トヨタの未来への期待を込めている会社だ。
豊田社長はまた、TRI-AD新会社に「個人として」相当額を投資したことを決めたとも語っている。
上場会社のトヨタ自動車としてリターンが見えない投資には限界がある中、個人投資によって思いのある資本家として意思を示したいという姿勢からは、いかにこの分野に対して豊田社長が思い入れを持っているかがうかがえる。
今後TRI-ADが新しい体制になりどのような成果を見せてくれるか、これからも目が離せない。
【参考】関連記事としては「自動運転関連ソフト開発のトヨタTRI-AD、事業拡大へ組織再編を発表」も参照。