埼玉×スマートシティ、MaaSに加え自動運転サービス導入も視野

シェアモビリティ利用のKPIは「年間54万回」



出典:さいたま市スマートシティ推進事業資料

日本全国の地方自治体でスマートシティやスーパーシティ化に向けた取り組みが活発化している。スマートシティの取り組み加速に向け国が設置する「スマートシティ官民連携プラットフォーム」には、2021年3月末時点で163の地方公共団体が名を連ね、延べ180以上の事業・プロジェクトが登録されている。

大都市も例外ではなく、多くの政令指定都市が参画している。この記事では、埼玉県さいたま市の事例をもとに、大都市におけるスマートシティ化に向けた取り組みを紹介する。







▼スマートシティプロジェクト|スマートシティ官民連携プラットフォーム
https://www.mlit.go.jp/scpf/projects/

■さいたま市のスマートシティ推進事業
大宮駅・さいたま新都心地区の「さいたま市スマートシティ推進事業」

さいたま市では、2つのスマートシティプロジェクトが並行・連携して進められている。1つは大宮駅・さいたま新都心周辺地区を対象にした「さいたま市スマートシティ推進事業」で、もう1つが美園地区を対象とした「データ利活用型『スマートシティさいたまモデル』構築事業」だ。

大宮駅周辺では、都市計画マスタープランのもと交通基盤整備や駅機能の高度化などを推進する「大宮駅グランドセントラルステーション化構想(GCS構想)」が2018年に策定され、開発機運が高まっている。

この構想にスマートシティ施策を合致させたものが「さいたま市スマートシティ推進事業」だ。大宮駅・さいたま新都心周辺地区を対象に、ICTと次世代モビリティなどを組み合わせたさまざまなサービスの提供やビッグデータの活用を通じて、交通結節点とまちが一体となった「スマート・ターミナル・シティ」を目指す方針を掲げている。

具体的には、シェア型マルチモビリティや自動運転サービス、MaaSに他のサービスを付加したMaaS+(プラス)、健康マイレージなどのデータを集約し、ビッグデータとしてまちづくりに活用していく。

モビリティサービスからは、移動軌跡データや最適配置されたデポの稼働状況、自動運転の乗降人数、各モビリティからの渋滞情報などを集める。また、MaaS+からは、移動ニーズ情報や店舗・注文商品などの予約情報、乗降決済情報などを集める。こうしたデータを集約し、バスターミナルなどの交通基盤整備や周遊空間の整備、回遊性の向上などを図っていく構えだ。

目標値(KPI)としては、エリアの回遊性向上などの観点からシェアモビリティの利用回数を年間54万回まで増加させるとしている。

出典:さいたま市スマートシティ推進事業資料
自動運転サービスの導入も視野に

シェア型マルチモビリティ・自動運転サービスに関しては、大宮駅・さいたま新都心周辺の在勤・在住者などの生活利便性を向上する多様なモビリティを導入するほか、デポの最適配置の実証を行う。また、自動運転実証は別プロジェクトと連携する方針で、2021年4月には、国土交通省関東地方整備局と東京大学空間情報科学研究センター、BOLDLYらが同エリアで自動運転バスの実証を行っている。

MaaS関連では、移動に加えて買物などの検索・予約・サービスを提供する「ライフサポート型MaaS(おおみやMaaS)」の導入に向け実証を行っていく。サービスで取得したビッグデータのインフラ整備への活用など、スマートプランニングに向けたPDCAの構築も進める。

次世代の都市インフラ整備に向けてはスマートプランニングを導入し、人流データやおおみやMaaSのビッグデータの取得・分析によって、バスベイのフレキシブルな活用でコンパクト化したスマート駅前広場の整備などを計画している。

データを集約するプラットフォームは「さいたま市スマートシティ推進コンソーシアム」が運用・管理する。行政はインフラ整備や防災などの都市情報を提供し、民間事業者はサービス開発などにプラットフォームのデータを活用していく。

データプラットフォームは2024年度本格運用へ

ロードマップとしては、2020年度からシェアモビリティや自動運転の導入、プラットフォームの検討などに着手し、2021年度にスマートインフラの実証実験や既存公共交通の連携など、MaaS連携や健康マイレージ実証実験、各種データ連携などを進めていく。

その後、2022年度に各データ連携の拡大やスマートインフラ、防災との連携、2023年度に美園スマートシティプロジェクトとの連携、サービス統合をそれぞれ図り、2024年度にデータプラットフォームの本格運用を開始する予定としている。

出典:さいたま市スマートシティ推進事業資料
美園地区のスマートシティプロジェクト

さいたま市では、エリア開発が進む副都心「美園地区」を同市が目指す理想都市の縮図と捉え、スマートシティ化を図っていく事業も並行・連携して進められている。

同事業では、2018年度に総務省の「データ利活用型スマートシティ推進事業」を活用し、市内外他地区への普及・展開も見据えた「共通プラットフォームさいたま版」の開発・実証が行われている。

美園地区を先導モデル地区として、デバイスやメーカーを問わずさまざまな「まちのデータ」の収集・管理・活用を可能とする情報共通基盤を構築し、いろいろな生活支援サービスをワンストップで提供することで、ライフスタイルやライフステージに応じた生活環境の実現と社会コストの最適化を図る。

また、サービス提供者が事業規模を問わずシステムに参画することができるオープンシステムとし、新たなビジネス・コラボレーションの創出や地域経済活性化を図ることとしている。

シェアサービスや自動運転実証などに着手

モビリティ関連の実証は着々と進んでおり、2020年度には新たに電動アシスト付自転車200台、スクーター60台、超小型EV(電気自動車)10台を導入し、計20カ所に設置する計画を発表している。

2020年12月には、システムやアプリ運営を行うOpenStreetと超小型EVを導入するENEOSホールディングスと実証実験に関する協定を交わし、2024年度末までを対象期間とする実証に着手した。

実証では、Will Smartがカーシェアリング事業の基盤となるシステム「Will-MoBi」を提供しているほか、小型EV開発などを手掛けるFOMMの世界最小クラスの4人乗り超小型EV「FOMM ONE」が導入されている。

このほか、美園地区では2021年1月から約1カ月間にわたり、AI(人工知能) オンデマンド交通サービスの実証事業が行われている。

■政令指定都市におけるスマートシティプロジェクト

政令指定都市クラスの大都市では、北海道札幌市でデータ活用プラットフォーム構築事業やスマートウェルネスシティに向けた取り組みが進められているほか、神奈川県横浜市でも官民データ活用シナリオ創発プラットフォーム事業やみなとみらい地区のスマートシティ化を図る取り組みなどが進められている。

大阪府大阪市では、再開発を進めるうめきた2期地区などで次世代モビリティやAIなどを活用したスマートシティモデル事業が進められている。広島県広島市では、官学民が共創して課題解決に取り組むオープンな実証の場「ひろしまサンドボックス」創設に向けた実証プラットフォーム事業の検討が行われている。

このほかにも、千葉県千葉市や神奈川県川崎市、静岡県静岡市、浜松市、新潟県新潟市、京都府京都市、福岡県福岡市など大半の都市がスマートシティ化に向けアクションを起こしている。

■【まとめ】スマートシティと次世代モビリティは表裏一体

さいたま市の取り組みのように、多くのスマートシティプロジェクトはMaaSをはじめとしたモビリティの活用に重点を置いている。自動運転に代表される次世代モビリティの導入にも積極的だ。

次世代モビリティから生み出されるビッグデータを活用することでさまざまな面で地域活性化に結び付けていくことができるため、MaaSや自動運転はスマートシティとの相性が良いとされている。

表裏一体とも言えるスマートシティと次世代モビリティ。一部地域では自動運転移動サービスなどの実用化が始まっており、引き続き各地の取り組みに注目していきたい。

【参考】関連記事としては「【特集】最前線「自動運転×スマートシティ」」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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