ホンダの「Honda SENSING 360」を解説 新ADAS、2030年までに標準搭載化

全方位センシングで死角をカバー

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出典:ホンダ公式サイト

ホンダが最新のADAS(先進運転支援システム)となる全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360(ホンダ センシング サンロクマル)」を2021年10月13日に発表した。まずは2022年に中国市場向けの車両から搭載を開始する方針だ。

自動運転レベル3で先行するホンダだが、ADASにおいてはどのような進化を図っていくのか。Honda SENSING 360の概要に迫っていく。

■Honda SENSING 360の概要

Honda SENSING 360は、現行の「Honda SENSING」で採用している単眼カメラに加え、フロントと各コーナーに計5台のミリ波レーダーを新たに装備することで、その名の通り360度センシングを実現している。

従来の運転では目視が難しかった車両周辺の死角をカバーし、他の車両や歩行者との衝突回避や運転に伴うドライバーの負荷の軽減をサポートするという。

具体的には以下の各機能を実装する。

衝突軽減ブレーキ
出典:ホンダ公式サイト

①「衝突軽減ブレーキ」は、従来の衝突軽減ブレーキの検知範囲が前方から全方位に広がった。交差点などで右左折をする際に車両や歩行者を検知し、接触の危険性がある場合に衝突軽減ブレーキを作動させる。

前方交差車両警報
出典:ホンダ公式サイト

②「前方交差車両警報」は、交差点などで低速走行をしているときや停車状態から発進する際、左右前方から接近する交差車両の情報をドライバーへ通知する。自車と交差車両が接触する危険性がある場合は、システムがドライバーへ音とメーター表示で危険を警告し、衝突回避の運転操作を促す。

市街地などの見通しの悪い交差点に進入する際、左右から接近する走行車両をドライバーが目視するためある程度停止線を越え車両を前進させなければならないケースは多いが、こうした際にフロントコーナーに設置されたミリ波レーダーが他車両の接近をいち早く検知してくれるシステムだ。

車線変更時衝突抑制機能
出典:ホンダ公式サイト

③「車線変更時衝突抑制機能」は、車線を変更する際、後方から接近する隣車線の車両との衝突回避を支援する。ミラーの死角から近づく後側方車両との接触の危険性がある場合、システムがドライバーへ音とメーター表示で危険を警告し、衝突回避のためハンドル操作を支援する。

車線変更支援機能
出典:ホンダ公式サイト

④「車線変更支援機能」は、高速道路や自動車専用道で、渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)と車線維持支援システム(LKAS)が作動中、一定の条件を満たした状態でドライバーがウインカー操作を行うと、システムが車線変更に伴うハンドル操作を支援する。

カーブ車速調整機能
出典:ホンダ公式サイト

⑤「カーブ車速調整機能」は、高速道路や自動車専用道でACC作動中にカーブを走行する際、適切に車速調整を行う。フロントカメラがカーブ手前で車線の曲率を事前に読み取り、ドライバーにとってスムーズでなめらかなカーブでの走行を支援する。

■2022年に中国市場で先行

Honda SENSING 360の開発においては、レベル3技術の研究開発で培われた知見やノウハウも生かしているという。まず、2022年に中国で発売する車両から搭載を開始し、2030年までに先進国で発売する全モデルへの展開を目指していく。

■ホンダが別途展開する自動運転機能は?

ホンダは2021年3月、レベル3を可能にする自動運行装置「トラフィックジャムパイロット」を発表し、トラフィックジャムパイロットを搭載した世界初のレベル3量産車「LEGEND(レジェンド)」を発売した。

トラフィックジャムパイロットでは、走行中に渋滞に遭遇すると、システムがドライバーに代わって周辺を監視しながらアクセル、ブレーキ、ステアリング操作を行う。トラフィックジャムパイロット作動中は、ハンズオフはもちろん、周囲を常時監視しなくてもよいアイズオフが可能になる。

トラフィックジャムパイロットは、高速道路などHonda SENSING Eliteに対応した道路において時速30キロ未満でハンズオフ走行中、高精度地図や全球測位衛星システムなどの情報が正常に受信できている際などに作動可能となり、作動開始後は時速50キロ未満で走行する。

【参考】トラフィックジャムパイロットについては「ホンダの自動運転レベル3搭載車「新型LEGEND」を徹底解剖!」も参照。

GMとCruiseとの協業にも注目を

ホンダの自動運転戦略に関しては、GMとGM傘下のCruiseとの取り組みにも注目したい。3社は2018年10月に協業を発表しており、無人ライドシェアサービス専用車の共同開発に乗り出した。その後、専用車としてシャトルタイプの「Origin(オリジン)」が発表されている。

3社は日本における自動運転モビリティサービス事業の展開も模索している。2022年には栃木県で実証実験を開始する予定だ。この自動運転モビリティサービスには、Originではなく、乗用車タイプの「クルーズAV」が活用される見込みだ。

【参考】クルーズとの取り組みについては「自動運転タクシー、日本一番乗りはホンダ濃厚か 日産やティアフォーの動向は?」も参照。

■【まとめ】ホンダのADAS機能の普及に期待

レベル3を実現したホンダは、レベル3のさらなる高度化やレベル4の実現とともに、普及技術となるADASの高度化もしっかりと図っていくようだ。

Honda SENSINGがほぼ標準搭載化しているように、今後Honda SENSING 360やHonda SENSING Eliteといった一段、二段上の技術が徐々に普及し、道路交通全体の安全性や運転の快適性を高めていくのだろう。

【参考】関連記事としては「ホンダの自動運転戦略まとめ 世界初のレベル3量産車を発売」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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