自動運転関連、国の公募案件と受託企業まとめ

2019年度SIPは22案件公募、今年度も続々公募スタート

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自動運転技術の社会実装に向け、着々と研究開発や実証実験が各地で行われている。国も戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)を中心に研究開発計画を策定し、技術の高度化や環境整備に努めている。

SIP第2期の自動運転(システムとサービスの拡張)では、2019年度に22件の事業・プロジェクトの公募が行われたほか、2020年度もこれまでに8件の公募がスタートしており、官学民協力のもと事業を進めている。

今回は、2019年度以降の国の公募案件をピックアップし、事業の中身や受託企業を見ていこう。

記事の目次

■SIP第2期自動運転「交通制約者に優しい自動運転バスに係る基礎調査」(2020年6月決定)

公募の結果、NTTデータ経営研究所が受注した。事業期間は2020年度で、事業予算は2000万円以内。

車椅子利用者や視覚・聴覚障がい者、ベビーカー使用者などの交通制約者が自立し、安心して利用できる自動運転バスによる移動サービスの実用化・社会実装に必要な要件などを明らかにするため、調査や実証実験による検証を行い、バスの車内レイアウト案を含めたデザインガイドライン案などを策定する。

■SIP第2期自動運転「知財戦略の構築に向けた立案」(2020年6月決定)

公募の結果、横浜国立大学が受注した。事業期間は2020年度で、事業規模は1000万円以内となっている。

SIPで重点的に取り組まれている「仮想空間での安全性評価環境の構築」や「交通環境情報の利活用技術」、「新たなサイバー攻撃手法と対策技術」、「地理系データに係る自動運転分野のアーキテクチャの構築」などに関する研究テーマを中心に、自動運転に係る特許動向や標準化動向を整理した上で、知財の専門家の分析や提案をもとにSIPの施策受託者とともに知財戦略を再構築し、今後のアクションプランに結び付けるための提案を行う。

■NEDO特別講座「NEDOプロジェクトを核とした人材育成、産学連携等の総合的展開」(2020年5月決定)

公募の結果、埼玉大学が受注した。事業期間は2020~2022年度で、2020年度の事業規模は総額1億3000万円となっている。

ロボット共通ソフトウェア技術を活用し、幅広い領域でロボット導入を進めるための人材の育成を図るとともに、ロボット共通ソフトウェア技術を維持・普及・発展させるための人的交流および周辺研究を実施する。

また、事業終了後も、継続的に実施可能な講義や演習カリキュラムを創出するとともに、ロボット共通ソフトウェア技術にかかわる人材の育成と人材のつながりを強化し、ロボット共通ソフトウェア技術の維持・発展のための継続的な保守運用の仕組みの構築を目指す。

■「規制の精緻化に向けたデジタル技術の開発におけるAIを活用した自動車の完成検査の精緻化・合理化に係る調査」(2020年5月決定)

公募の結果、デロイトトーマツコンサルティング、トヨタ日産、本田技研、マツダの5社が受注した。事業期間は2020年度で、事業規模は4億4000万円以内となっている。

AIやセンシング技術などのデジタル技術が進歩する中、これらを活用した事業活動を念頭に規制の見直しを進め既存事業の合理化や新事業の創出を進めるため、AIなどのデジタル技術の研究開発を通じた規制の精緻化を図るための事業に係る調査を行う。

■「安全安心なドローン基盤技術開発」(2020年4月決定)

公募の結果、自律制御システム研究所、ヤマハ発動機、NTTドコモ、ザクティ、先端力学シミュレーション研究所の5社が受注した。事業期間は2020年度で、事業規模は総額16億800万円となっている。

アジャイル開発を前提に、高い飛行性能や操縦性、セキュリティを実現するドローンの標準機体設計・開発及びフライトコントローラー標準基盤設計・開発を行う。

空の移動革命に向けた取り組みも着々と進められているようだ。

■SIP第2期自動運転「BRTへの自動運転による正着制御技術等の導入に向けた検討」(2020年3月決定)

公募の結果、計量計画研究所が受注した。事業期間は2019~2020年度で、事業規模は1400万円以内となっている。

SIP第1期における次世代都市交通システム「ART(Advanced Rapid Transit)」の実現に向けた検討の中で実施したバス停への正着制御技術の研究や技術検証などの成果を踏まえ、誘導線式正着制御のBRTへの早期社会実装に向け、東京BRTのプレ運行期間を活用した技術的課題と社会的効果の検証を行う。

なお、東京BRTは東京都心と臨海地域を結ぶBRTで、京成バスと同社が設立した新会社「東京BRT」が運行を予定している。新型コロナウイルスの影響でプレ運行の開始が延期されているが、2022年度の本格運行に向け準備を進めている。

■SIP第2期自動運転「車線別プローブ等を活用した自動運転制御の技術検討及び評価」(2020年1月決定)

公募の結果、パシフィックコンサルタンツが受注した。事業期間は2019~2020年度で、事業規模は計2億円以内となっている。

高速道路での自動運転時においては、前方に停止車両や落下物がある場合や流出路渋滞が存在する場合など、事前に得られる情報が不足している場合などに車線変更がスムーズに行えないケースが想定される。

自動運転車が車線別の道路交通情報を入手することであらかじめ早い段階で車線を変更するなど安全かつ円滑な自動走行が可能となることから、この方策の実用化に向け、車線別の渋滞情報、駐車車両情報、落下物等情報及び事象規制情報を収集し、自動運転車両に提供するための技術検討を行う。具体的には、東京湾岸2020実証実験の首都高速道路羽田線並びに湾岸線において実証実験を行う。

■SIP第2期自動運転「自動運転及び運転支援による交通事故削減効果の見える化」(2019年10月決定)

公募の結果、日本自動車研究所が受注した。事業期間は2019~2020年度で、事業規模は2000万円以内となっている。

交通流シミュレーションを活用し、信号現示情報や交通規制情報などを用いて各地域での自動運転や運転支援による交通事故削減効果を精緻に推計した上で地図上に図示するとともに、全国での交通事故削減効果を推計し、これらの地図や推計結果といった社会的受容性の醸成に資する成果物を得る。

また、交通規制などの在り方の検討にも資するため、自動運転車や運転支援車の普及後における速度制限などの交通規制の種別ごとの一般的な交通事故削減効果を明らかにする。

■国土交通省・経済産業省のラストマイル自動運転の実証実験「中型自動運転バス公道実証実験事業」(2019年10月決定)

公募の結果、茨城交通、大津市・京阪バス、神奈川中央交通、神姫バス、西日本鉄道の5組が受注した。事業期間は2020年度で、実証期間1カ月あたり500万円を上限に事業実施主体が費用負担を行うほか、環境整備に係る費用やドライバー費用などを必要に応じて負担する。

選定された事業者は、各地域で3~6 カ月間中型バスの実証評価を実施し、中型自動運転バスを活用した路線バスの公共移動サービスの事業化を進める。

■SIP第2期自動運転「自動運転システムのための通信技術に関する調査」(2019年9月決定)

公募の結果、三菱総合研究所が受注した。事業期間は2019年度で、事業規模は2000万円となっている。

2018年度実施の「自動運転システムにおけるV2X技術等を含む新たな通信技術の活用に関する調査」でまとめた実証実験が想定している自動運転のユースケースや無線通信システムなどの調査をさらに進め、自動運転において今後活用が期待される無線通信システムについての詳細な分析と、それら通信に関する国際的な議論について調査し、自動運転に関する通信についての議論を行うための基礎資料を作成する。

■「人工知能の信頼性に関する知財戦略の検討」(2019年9月決定)

公募の結果、古賀総研が受注した。事業期間は2019年度で、事業予算は1500万円以内となっている。

自動運転などにおいて、AIの推論結果や判断根拠を人が理解できる形で示されることが必要である一方、ディープラーニングなどを用いた場合は説明性に乏しいといった問題解決に向け、思考過程が不透明なAIの推論結果や判断根拠を説明できる技術などを開発し、最先端のAI技術の社会適用を進め日本の産業競争力の強化につなげていく。

各要素技術に対して知財戦略に基づいた知財の権利化が必須であり、常に変化する社会動向に適応できる知財戦略の立案を行う。

■SIP第2期自動運転「自動運転移動サービスの実用化並びに横展開に向けた環境整備」(2019年9月決定)

公募の結果、道路新産業開発機構、NEC、オリエンタルコンサルタンツ、日本工営、復建調査設計が受注した。事業期間は2019~2020年度で、事業規模は3.5億円以内となっている。

自動運転移動サービスの実用化に向け、長期間の実証実験を通じて社会実装初期において必要な事項のデータ収集・検証を行うとともに、これまでの各種実証実験において共通課題とされてきた走行空間の確保方策などについて解決方策を確立する。

また、得られた成果をもとに自動運転移動サービスの社会実装のためのマニュアルを取りまとめ、自動運転移動サービスの2020年の実現やその後の全国への横展開に貢献する。

■SIP第2期自動運転「自動運転・運転支援に係るアーキテクチャの設計及び構築のための調査研究」(2019年9月決定)

公募の結果、NTTデータ、日本工営、パシフィックコンサルタンツ、道路新産業開発機構がそれぞれ受注した。事業期間は2019~2022年度で、2019年度の事業規模は3億8000万円となっている。

ダイナミックマップにおけるさまざまな情報・データを他の用途に活用する場合、データを一カ所に集約することは物理的にも費用的にも難しく、現実的ソリューションとしては、データの存在とデータの内容がわかるカタログを充実してワンストップでサンプルデータを閲覧できるようにしておき、必要な場合にデータ提供者からデータを入手できることであると考えられる。

そこで、データ提供者とデータ活用者の双方にとって魅力のある情報交換の場を作り、その結果として企業の中に埋もれているさまざまなデータを他の企業が積極的に活用できるデータ流通促進に向けた仕組みの構築を行う。

ダイナミックな交通環境情報を含む地理系データの流通促進のためのポータルサイトの構築及び運営をNTTデータ、自動運転の東京臨海部実証実験地域における交通環境情報等の地理系データの整備・構築に向けた調査・研究や、移動・物流サービス連携のための都市部における交通環境情報等の地理系データの整備・構築に向けた調査・研究などを日本工営、パシフィックコンサルタンツ、道路新産業開発機構が行う。

■SIP第2期自動運転「高精度3次元地図における位置参照点(CRP)のあり方に関する調査検討」(2019年8月決定)

公募の結果、三菱総合研究所が受注した。事業期間は2019~2020年度で、事業規模は2000万円となっている。

高精度3次元地図においては、地図同士をどのように紐付け、また地物の位置をどのように表現するかについて統一手法がなく、地図作成者が独自に決めている。今後の汎用化に懸念があり、また既存のリンク地図や道路区間ID、距離標などこれまで道路管理者を中心に用いられてきた位置表現方法との整合性も必要とされることから、位置参照点(CRP)の定義並びに維持管理のあり方やCRPを用いた車線などの地物を表現する方法、リンク地図や道路区間ID、距離標など既存の仕組みと整合させる方法について、国際標準化推進団体へ提案するための案を策定する。

■SIP第2期自動運転「狭域・中域情報の収集・統合・配信に係る研究開発」(2019年8月決定)

公募の結果、NTTドコモ、沖電気工業、住友電気工業、パナソニックの4者が受注した。事業期間は2019~2020年度で、事業規模は各年度1億6000万円以内となっている。

高度な自動運転の実現において、路側インフラなどの各種情報源が情報処理サーバーと通信を行い、情報処理サーバーが各種情報源から得られた情報を適切に処理し、自動運転車両に配信するV2Xが必要とされるが、情報源の数の増大に伴い通信の逼迫が懸念される。

そこで、情報源となる多数の路側インフラなどから得られる車両や歩行者などの動的情報の効率的な収集や、それら情報の統合処理による動的情報の効率的な生成、処理後の動的情報の効率的な配信を行うための要素技術の研究開発を行う。

■SIP第2期自動運転「自動運転の高度化に則したHMI及び安全教育方法に関する調査研究」(2019年8月決定)

公募の結果、学校法人慶應義塾、産業技術総合研究所、筑波大学、東京都ビジネスサービスが受注した。事業期間は2019~2021年度で、事業規模は各年度1億5000万円以内となっている。

自動運転車に初めて接する運転者や交通参加者が、自動運転システムの誤用や運転者に求められる役割の誤認などを起こさないようにするため、適切な教育内容・方法を確立することが必要になる。

そこで、自動車会社における開発ガイドラインや、国際標準化機関(ISO)などにおける国際標準活動のエビデンス、地方自治体における交通安全教育、車両の販売者、レンタカーやカーシェアリング事業者などのサービス提供者から運転者、利用者などへの説明において広く活用できる①自動運転車と周囲の交通参加者間のコミュニケーション方法②走行環境条件を外れた場合や自動運転システムの機能低下の場合における運転引継等を適切に行うためのHMI③自動運転車や高度運転支援システムに関し習得すべき知識とその効果的な教育方法――を導出する。

■SIP第2期自動運転「新たなサイバー攻撃手法と対策技術に関する調査」(2019年7月決定)

公募の結果、PwCコンサルティングが受注した。事業期間は2019年度で、事業規模は5000万円以内となっている。

車両に対するサイバーセキュリティに関して、新たなサイバー攻撃手法がBlackHatを初めとする国際会議などで継続的に報告されているほか、車両販売後の新たなサイバー攻撃手法への対策として、悪意ある第三者からの車両へのサイバー攻撃に対する侵入検知システム(IDS)が注目されている。

これらを踏まえ、新たなサイバー攻撃手法の動向と対策技術の調査を行うとともに、車両セキュリティ標準検討組織などと連携し、新たなサイバー攻撃手法に対応するための技術標準案を検討する。

■【まとめ】2020年度SIP自動運転予算は31億円 公募案件続々

国はこのほか、中山間地域における道の駅などを拠点とした自動運転サービスやスマートシティモデル事業なども実施している。都道府県など自治体が主体となった実証事業も多く、着実に成果が積み上げられている印象だ。

SIP第2期自動運転では約31億円の予算措置が取られており、自動車メーカーの協調領域となる世界最先端のコア技術を確立し、一般道で自動走行レベル3を実現するための基盤を構築し社会実装する目標を掲げている。

今後も続々と公募案件が公開されていくことが予想されるため、自動運転関連各社はもちろん、現在の進捗状況や研究領域を知るためにも各事業に注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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