車の室内が伸びたり縮んだり!Audiの自動運転コンセプトカーの未来感

手動運転と自動運転を両立、レベル4にも対応

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出典:Audiプレスリリース

独アウディは2021年8月、最新のコンセプトモデル「Audi skysphere concept(アウディ・スカイスフィア・コンセプト)」を発表した。

手動運転と自動運転を両立したモデルで、自動運転モード時には車両全長が25センチ伸長し、ゆったりとしたコクピット空間が創出されるなど斬新なアイデアが盛り込まれている。

この記事では、自動運転関連の機能を中心にskysphereのスペックに迫っていく。

■Audi skysphere conceptの概要
2022年にかけてSpheresシリーズ3モデルを順次公開

アウディは2021年7月、最新のコンセプトモデルとして「Spheresシリーズ」を発表した。「skysphere」「grandsphere(グランドスフィア)」「urbansphere(アーバンスフィア)」の3モデル構成で、その第1弾が今回発表されたskysphereだ。

skysphereを米カリフォルニア州のモントレーカーウィークで初公開し、9月に独ミュンヘンで開催される国際見本市「IAA Mobility」で2番目のコンセプトモデルgrandsphereを公開する。3番目のurbansphereは2022年前半の公開を予定している。

sphereは「球体」を意味し、乗客を包み込む新設計のインテリアデザインを表すエレメントとなっている。従来の運転操作からドライバーが解放される自動運転において、移動時間をどのように過ごすべきか、車内空間はどうあるべきかといった観点を重視するアウディの開発姿勢を具現化したものがsphereだ。

室内空間が伸縮するskysphere

第1弾のskysphereは、2ドアコンバーチブルのスポーティな外観が魅力のEVで、手動運転が楽しめる「スポーツモード」と自動運転が可能な「グランドツーリングモード」をボタン一つで切り替えることができる。

目玉は、「アダプティブホイールベース」という最新テクノロジーだ。電気モーターとボディ・フレームコンポーネントが互いにスライドするメカニズムにより、ホイールベースを最大250ミリ伸縮させることができる。車高も10ミリの範囲内で調整可能で、ドライブモードに合わせ快適性とドライビングダイナミクスを強化することができるという。

自動運転が可能なグランドツーリングモードでは、ホイールベースを25センチ伸長することで車内空間にゆとりを生み出し、自動運転ならではのくつろぎ空間を演出する。ステアリングやアクセルなどのペダル類もすっきりと格納され、ダッシュボードを真横に貫く幅1,415ミリ×高さ180ミリのタッチモニター式ディスプレイが存在感を増す。

こうした空間は、移動における従来の運転体験をはるかに超える乗車体験を生み出す。自動運転によるスムーズで快適な移動を楽しむことができるだけでなく、壮大な景色を楽しめるルート設定やレストランやホテルといった目的地の提案をはじめ、普段自宅で使用している音楽やビデオプロバイダーにオンボードストリーミングサービスをリンクするなど、カスタマイズされたインフォテインメントオプションも利用可能という。

コンサートや文化イベント、招待制のスポーツイベントなど、高級車のユーザーにパーソナライズされた排他的なオプションの提供も目指す方針を掲げている。

出典:Audiプレスリリース
自動運転による「迎車機能」などを搭載

自動運転機能に関する詳細な説明はプレスリリースでは見当たらないが、センサーシステムで道路と交通状況を自動的に監視して目的地までの安全な移動を実現するほか、乗員の位置情報を取得して迎えに行く機能や、駐車や充電を無人で行う機能などが備わっているようだ。

なお、スポーツEVとしての性能は、最高出力465kW、最大トルク750Nmを発生する電気モーターを搭載し、停車状態から時速100キロに到達するまでわずか4秒という加速性能を誇る。バッテリー容量は80kWh以上で、航続距離は500キロ超に達するという。

スポーツモード時は、シャシーやボディとともにセンターコンソールのインストルメントパネルとモニターパネルも後方に移動する。ドライバーは、ステアリングやペダルを含むすべてのコントロール類を最適な位置に調整することができる。

3つの独立したエアチャンバーを制御する最新世代のエアサスペンションを装備するなど、本格的なスポーツ走行も楽しめるモデルとなっているようだ。

■アウディのこれまでの取り組み

アウディは、2017年に自動運転レベル3を実現する「Audi AIトラフィックジャムパイロット」を搭載可能な「A8」を世界に先駆けて発売し、2018年には仏エアバスなどとともに空飛ぶクルマ開発プロジェクトに本格着手するなど、自動運転分野では先進的な取り組みに注力する自動車メーカーとして知られる。

2019年発表のコンセプトモデル「Audi AI:ME」も、ステアリングやペダル類を備えつつ、自動運転モード時は格納する仕組みを採用し、シートアレンジで車内空間の自由度を高めることができる仕様となっている。

2020年以後は「e-tron」に代表されるEV関連の取り組みが勢いを増し、自動運転関連の話題が少なくなっていた。

ただ、2020年5月にEVの新技術に焦点を当てた開発を行う新プロジェクト「Artemis」を立ち上げ、その責任者にフォルクスワーゲングループで自動運転開発を手掛ける優秀なエンジニアを抜擢するなど、水面下で着実に開発を進めている印象だ。

9月公開のgrandsphere、及び2022年公開のurbansphereがどのようなモデルとなるのか。自動運転機能として新たな要素が付加されるのかなど、引き続き注目だ。

【参考】Audi AI:MEについては「自動運転時はハンドル格納 アウディの「AI:ME」が色々凄い」も参照。

■【まとめ】レベル3技術の再登場にも注目

2021年上半期、アウディは新型「e-tron GT quattro」と「RS e-tron GT」、コンパクトセグメント初のEV「Q4 e-tron」「Q4 Sportback e-tron」をそれぞれ発売するなど、EVラインアップの充実を図っている。売れ行きも好調で、上半期は前年比38.8%増で過去最高となる約98万台を販売した。ただ、各車に搭載されるADASに目新しい機能はない。

ホンダが先行するレベル3市場においては、メルセデス・ベンツやBMWが追随する動きを見せており、まもなく競争が本格化する見込みだ。

競争が生まれてこそ技術は進歩する。アウディも好調な乗用車部門で「Audi AIトラフィックジャムパイロット」を復活し、レベル3市場を盛り上げてほしいところだ。

【参考】関連記事としては「自動運転への考え方、Audiが導き出した「3つの指標」とは?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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