「自動運転シティ!」と叫びたくなる愛知スーパーシティ構想とは

中部国際空港中心に自動運転の早期実用化目指す

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愛知県と同県常滑市が、国のスーパーシティ構想に関わる公募に応募した。自動運転実証が盛んな愛知県らしい提案で、モビリティ分野における取り組みが盛りだくさんの内容となっている。

応募は2021年4月16日付。各自治体からの提案の検討が5月から始まり、その後、スーパーシティの区域指定が行われるかどうかが決まる。この記事では、今回愛知県と常滑市が提案した「あいち・とこなめスーパーシティ構想」の内容を紹介する。

▼あいち・とこなめスーパーシティ構想の実現に向けた提案書【概要版】
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/life/341586_1381614_misc.pdf
▼あいち・とこなめスーパーシティ構想の実現に向けた提案書 【要約版】
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/life/341586_1381613_misc.pdf

■あいち・とこなめスーパーシティ構想の概要
中部国際空港を中心に先端技術を実装・波及

スーパーシティの舞台となるのは、中部国際空港(セントレア)が位置する人工島とその対岸部を中心とする常滑市だ。

空港利用者で交通が混雑する一方、24時間利用可能な移動手段や飲食娯楽施設などが不足しており、回遊性に課題を抱える。また、常滑市としては、市内の公共交通網が不足しており、空港などから市街地へ誘導する手段に欠けているという。

こうした課題解決に向け、自動運転やロボットなど次世代技術の実証が盛んな愛知県として、常滑市でスーパーシティ化を推進することで技術実装段階へのステップアップを図っていく。

空港を中心に、愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」に国際会議や見本市などMICEを誘致し、日本を代表する国際観光都市を実現するとともに、最先端技術・サービスの社会実装フィールドとすることでイノベーション創出の拠点化を進める。

また、2024年オープン予定のスタートアップ支援拠点「ステーションAi」の機能を活用し、 国内外の有力なスタートアップや大学、企業を巻き込んだサービス開発・実証を実用化していくサイクルを形成するなど、市内・県内への最先端技術・サービスの普及を促進していく。

2025年度までのフェーズ1で空港島や対岸部でサービスを実装し、2030年度までのフェーズ2で常滑市に拡大し、以後他地域へ展開していく計画だ。

出典:愛知県資料
365日持続可能な自動運転サービスの早期実現へ

プロジェクトは以下の5つに大別される。

①では、全国に先駆けて自動運転サービスの実証を積み重ねてきた愛知県の強みを生かし、技術面と制度面からのアプローチによって空港島や周辺地域で24時間365日持続可能な自動運転サービスの早期提供を実現する。

さらに、飛行機や電車、自動車、バス、船などあらゆる移動・輸送手段の連携や認証、支払いシステムなどと連携を図り、利用者の利便性向上やエネルギー利用の最適化に資することとしている。

自動運転・自動搬送サービスとしては、完全無人の巡回型移動バスや自動搬送ロボットなどが、空港島内の回遊をはじめ空港島外からの移動と輸送を完全にサポートする移動・物流ネットワークを構築する。

自動運転では、需要予測によるシャトルバスなどの運行サービスやオンデマンド型自動運転サービス、空港業務や従業員輸送など最適配車管理による効率的な自動運転車両の運用、道路パトロールや道路清掃といった道路管理、消防・救急体制の最適化、自動バレーパーキングや自動運転で結ぶパークアンドライドといった次世代型駐車場などを検討している。

合わせて、自動運転車やシェアリングパーソナルモビリティ、電動車いすなどで全ての人が快適に島内移動できるモビリティを用意し、陸海空すべての移動情報や空間情報、イベントなどの開催情報などのデータ連携システムのもと、スムーズな移動サービスや移動・物流のピークシフトなどを実現するスマートモビリティサービスの構築も進めていく。

自動搬送では、物流情報を統合した配送の最適化や、自動搬送ロボットによる荷物配送を図っていく。

出典:愛知県資料
早期実装が可能なサービスも

ターミナル間の人の移動や手荷物配送など、制限区域における自動運転に関しては、既往の実証実験の検証と関係者の調整が整い次第、サービスを開始する。

また、空港島と周辺地域の公道では、実装が想定される複数のルートで高度衛星測位技術やAR、顔認証システム、磁気マーカーシステムなどを活用した実証実験を行うなどサービス導入の検証が進んでいる。

引き続き実証実験と検証を繰り返し、技術的に導入可能なルートから順次サービス試行を進めるとともに、オンデマンド型運行やダイナミックプライシング、認証システム、AI見守り、ロボット搬送などの技術を活用し、自立可能なビジネスモデルを構築する。

さらに、車両のEV化やFCV化を進めるとともに、モビリティを活用したエネルギー供給や運行スケジュールに応じた給電の最適化、ワイヤレス給電などの革新技術導入の実証・検証などを通して、新しいエネルギー利活用モデルを確立していく。

空飛ぶクルマやモビリティの多用途活用も

空域管理システムによる有人機、無人機の飛行管理の下、ドローンによる物流やインフラ点検、空飛ぶクルマでの移動・輸送なども検討するほか、モビリティの内部空間を活用したシェアオフィスやミーティングスペース、バーチャル旅行体験、会議・商談など、単なる移動・物流機能の提供にとどまらない新しい価値の創出も図っていく方針だ。

■これまでの取り組み

愛知県では、産学行政連携の支援やマッチング支援を行う「あいち自動運転推進コンソーシアム」の設立や行政手続きの支援を行うワンストップセンターの開設など、早くから自動運転の社会実装に向けた取り組みを進めてきた。

自動運転実証は2016年度にスタートし、常滑市では2018年度にアイサンテクノロジーやティアフォー、名古屋大学、KDDIらが空港島の公道や閉鎖空間で5Gや複数台の遠隔型自動運転に関する実証を行った。2019年度も継続され、2020年度にはNTTドコモや群馬大学らの協力のもと、空港島全域における自動運転車両による移動をテーマに空港ターミナルビルや国際展示場などを周回する自動運転バスの運行実証を行っている。

また、丸紅とZMPの合弁「AiRO」も2019年12月、同空港において国土交通省航空局主催の空港制限区域内の自動走行に係る実証実験を行っている。

■【まとめ】愛知のスーパーシティは自動運転シティ?

自動運転の開発・社会実装に力を注ぐ愛知県におけるスーパーシティは、「自動運転シティ」と言っても過言ではないほどモビリティ分野における取り組みが盛り込まれている。

トヨタのお膝元であり、ティアフォーやアイサンテクノロジーといった開発企業が集積しているほか、自動運転の研究に力を入れる名古屋大学の存在も大きい。社会実装へとつなげていく素地が備わっているのだ。

自動運転のメッカとして、実証から社会実装を見据えた今後のイノベーションに引き続き期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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