EV大手米テスラが、2026年中に日本で自動運転機能「FSD(Supervised)」(Full Self-Driving Supervised)の実装を目指す。同社の日本法人が明らかにした。
北米を中心に高評価を得ているFSDが、ついに日本に上陸する――となれば、国内におけるテスラ人気が急上昇する可能性が高い。将来的なエンドツーエンド(E2E)の自動運転実装への期待も高まる。自家用車の本格的な自動運転化が始まるのかもしれない。
しかし、一歩引いて冷静に考えてみよう。同社CEOのイーロン・マスク氏のビッグマウスは有名で、これまでに何度期待を裏切られてきたことか。自動運転専門メディアとしては、懐疑心を隠せないところだ。
果たして、FSDの日本導入は計画通りに実現するのか。テスラの最新動向に迫る。
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■テスラの最新動向
2026年中にFSDの国内実装目指す
テスラジャパンは2026年3月6日、公式Xで日本国内において「FSD(Supervised)」を2026年中に導入することを目標に開発を進めていることを明かした。
移動体験を劇的に進化させるテスラの運転支援機能 FSD(Supervised)を東京都新宿区でテスト。2026年に国内導入することを目標に開発を進めています。 pic.twitter.com/yqZlqc9uHu
— Tesla Japan (@teslajapan) March 6, 2026
同投稿には、FSDの日本展開を待ち望んでいたオーナーらのテンション高めの声が多数寄せられている(以下原文ママ)。
- 月1万円位のサブスクでお願いします!
- 公式発表ありがたいです!高齢者の事故や地方インフラの解決に向けても頑張ってください。
- FSDが使える日を楽しみにしてます!
- 頼むぞテスジャパ!!!いや、お願いいたしますすすすす。
一方で……
- 2026年に導入目標って以外と掛かりそうな感じですね。最短と言われていた春は無理ぽ。
- めっちゃ期待してる、、期待してるけど、、、、、今までのことが色々あるから 来年かなぁ いい意味で裏切って欲しい
テスラの今までの経緯を踏まえ、実現時期に疑問を抱く人も少なからずいるようだ。マスク氏はこれまで、幾度も「~年には自動運転を実現する」と豪語してきたが、結果はご覧の通りだ。テスラオーナーの中には、こうした発言をもとに購入を決めた人もおり、後々訴訟沙汰となった例もある。
また……
- AIはブラックボックスなので事前にシュミレーション検証が出来ないと国交省から認証おりず販売出来ないようです テスラは年内導入目標があるならばFSDが販売出来るエビデンスを表明してほしい
後段で触れるが、認可面を危惧する声も寄せられていた。いずれにしろ、テスラファンの多くが待ち望んでいる事業展開であることは間違いないようだ。
【参考】関連記事「テスラの「自動運転」は嘘だった!?所有者数千人が訴訟」も参照。
レベル2+相当のADASながら、その性能は他メーカーを圧倒
最新バージョンのFSDは、北米では一般道や高速道路の大部分でハンズオフ運転を可能にしている。自動運転レベル2+に相当するADASで、現時点では自動運転ではなく常時監視が必要な運転支援機能だ。
ただ、広範囲において高性能なハンズオフ技術を実現しているため、現在地から目的地までの全行程を、手動介入なしのハンズオフで走行できることもあるようだ。この水準のハンズオフ技術は、世界の自動車メーカーでは太刀打ちできない領域に達していると言える。
テスラはこのFSDを改善し続け、将来的に常時監視が不要な自動運転に昇華させる方針だ。高精度3次元地図などを必要とせず、車載センサーが取得したリアルタイムの情報をベースにAIが車両を制御するエンドツーエンドモデルのため、完成すれば作動条件のない自動運転レベル5相当の技術となる。
レベル5への道は容易ではないものの、千里の道も一歩からだ。まずはレベル2として実装し、日本特有の道路交通環境を学んでいかなければ、道は拓けない。
テスラジャパンは2025年8月、FSDの技術テスト走行や学習を日本国内で本格的にスタートしたと発表したが、自社単独では台数が限られる。一定水準に達したFSDを早期導入し、より多くのオーナーから同意を得て車載カメラの映像を収集したり、FSDのフィードバックを得たりし、開発を加速したいところだろう。
報道によると、国内で販売済みのテスラ車約4万台の多くにFSDを後付けすることができる見込みという。このうち、どれだけのオーナーがFSDに関心を示すかは予測しづらいところだが、グローバル販売台数が頭打ちとなりつつある中、日本市場は大きな伸びしろを残している。販促の観点からもFSDを早期導入したいところだろう。
FSDは日本でも買うことができる
なお、国内では未実装のFSDだが、先行販売は行われている。2025年時点で、「FSDケーパビリティ」が約87万円で販売されているのだ。将来FSDが実装された際、ソフトウェアアップデートで自車への導入が可能になる。
FSDを稼働させるAIコンピュータのバージョンが2.0、または2.5の場合、最新のAIコンピュータへの無料アップグレードも保障されるという。
ただ、北米ではFSDの一括購入プランは終了し、2026年2月から月額サブスクリプションサービスのみに移行している。買い切り8,000ドル(約126万円)だったところ、新規契約者は月額99ドル(約1万5,000円)のサブスクでなければFSDを利用できなくなった。
日本では今のところ一括購入が可能なようだが、今後サブスク一本に移行する可能性は高そうだ。その際、月額はどうなるのか。また、FSDが大幅進化した際も価格は据え置かれるのか――など、気になるところだ。
【参考】関連記事「テスラの自動運転機能、お買い得な「買い切り版」が突然終了」も参照。
保安基準適合性審査やE2Eの安全性評価がカギを握る?
FSDは現在、米国、カナダ、中国、メキシコ、プエルトリコ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国で利用可能という。オーストラリアとニュージーランドは日本と同じ左側通行のため、テスラはすでに左側通行にも対応していることになる。
各国が定める規制により、必ずしもハンズオフ運転をできるとは限らないようだが、日本は基本的に可能とされている。あくまでADASであり、ドライバーの常時監視が義務付けられているためだ。
FSD導入のハードルは、OTAによるソフトウェア改変とエンドツーエンドモデルにありそうだ。FSDは、導入時も導入後もソフトウェアアップデートで性能を維持・向上させる。
ただし、こうしたソフトウェアアップデートは、場合によっては保安基準適合性に影響を及ぼすこともある。そのため、日本では2020年施行の改正道路運送車両法において特定改造等許可制度が設けられた。
▼特定改造等許可制度
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_003789.html
保安基準適合性に影響を及ぼすアップデートについては、変更事項が生じた際の国土交通大臣への届出義務やソフトウェアアップデートの実施状況、アップデートに関する情報の記録・保管、アップデート車両のサイバーセキュリティに対する脅威及び脆弱性の監視、検出及び対応、アップデートの目的、内容及び所要時間、新しい機能の使用方法等に関する情報の使用者への提供――などが求められる。
レベル3以上の場合、サイバーセキュリティ確保のための業務管理能力や適切なソフトウェアアップデートの確保のための業務管理能力、ソフトウェアアップデートに起因した不具合の是正を適確に実施するために必要な体制、ソフトウェアアップデートされた自動車の保安基準適合性などに関する能力審査も行われるという。
細かなアップデートについても逐一届出などを要するとすれば、テスラのように頻繁にアップデートを繰り返すメーカーにとっては大きな負担となるかもしれない。
一方、エンドツーエンドに関しては、自動運転を可能とするODD(運行設計領域)が設けられず、かつAIの判断基準がブラックボックス化しているため、その安全性を評価する手法が確立されていないのだ。
経済産業省が現在「E2Eに係る安全性評価方法の確立事業」を進めており、調査に本腰を入れている。最終的に評価手法が確立されるのがいつ頃になるのか、また、エンドツーエンドのADASに対しても安全上何らかの規制が入ることになるのか、動向に注目したい。
【参考】関連記事「高市政権、地図不要な「テスラ式自動運転」に舵?」も参照。
■【まとめ】自動運転化は技術面・規制面のハードルが高い
日本においては、ハンズオフが可能なレベル2+としてのFSD導入は特に問題なく進むものと思われるが、これに起因する事故が発生した際の原因解析体制や対応などに課題が残る恐れもある。
また、自動運転化に対しては、技術面・規制面いずれの点からも依然として高いハードルが残されている状況だ。日本でFSDが導入されれば、マスク氏のビッグマウスに日本のオーナーも直接巻き込まれていくことになる。
FSDの日本展開、そして自動運転化の動向に引き続き注視したい。
【参考】関連記事としては「トヨタの運転支援機能とテスラのAutopilot、どちらがいい?」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)