自動運転時代、「ハイビーム」が不要に?

AIは「超音波」などで障害物を判断



自動車は今は「手動運転」が基本であり、人間がクルマを安全に運転するために車載装置・システムは最適化されている。前照灯もその一つであり、場面によって使い分けができるよう、ライトは「すれ違い用前照灯(ロービーム)」と「走行用前照灯(ハイビーム)」が用意されている。


道路運送車両の保安基準においても、このロービームとハイビームは明確に定義・区分されているが、自動車が自動運転化されるにつれ、特にハイビームの方は必要性が低くなっていくかもしれない。

その理由は、AI自動運転車のセンサーによっては、ライトが当たったときの「見え方」ではなく、不可視光線(※人間には見えない光のこと)であるレーザー光の反射光や超音波によって、他のクルマや歩行者、障害物を検知する仕組みだからだ。

■ロービームとハイビームの性能・役割

左がロービーム、右がハイビーム=出典:警察庁公式サイト

ロービームとハイビームについて、少し詳しくおさらいしておこう。


ロービームは「すれ違い用前照灯」といい、下向きライトのことだ。「夜間にその前方40mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有するものであること」と基準が定められている。

一方のハイビームは「走行用前照灯」といい、上向きライトのことだ。「夜間にその前方100mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有するものであること」と基準が定められている。

一般財団法人「全日本交通安全協会」が発行しているドライバー向けの教材「交通の教則」においては、下向きのロービームと上向きのハイビームについて、使い分け方が以下のように記載されている。

以下、第6章と第7章を引用する。


第6章 危険な場所などでの運転

前照灯は、交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、上向きにして、歩行者などを少しでも早く発見するようにしましょう。ただし、対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を通行しているときは、前照灯を減光するか、下向きに切り替えなければなりません。

交通量の多い市街地の道路などでは、前照灯を下向きに切り替えて運転しましょう。また、対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目がくらまないようにしましょう。

第7章 高速道路での走行 

夜間は、対向車と行き違うときやほかの車の直後を通行しているときを除き、前照灯を上向きにして、落下物や交通事故などにより停止した車を少しでも早く発見するようにしましょう。

前照灯は「交通量の多い市街地などを通行しているとき」や「対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を通行しているとき」、夜間の高速道路において「対向車と行き違うときやほかの車の直後を通行しているとき」を除いては、上向きのハイビームにするのが望ましいと記載されている。

■LiDARや超音波センサーは、明るくなくても・・・

ロービームとハイビームのこうした性能に関する定義や使い分けについては、冒頭も触れたが、基本的に人間による運転を想定したものだ。そのため、ライトをつけなくても障害物を検知できるLiDARや超音波センサーなどを自動運転車がコアセンサーとして使用する場合、各センサーの細かな仕様や性能にもよるが、特にハイビームは必要なくなるかもしれない。

「特にハイビームは・・・」と書いたのは、前照灯自体は、自車の存在を夕暮れ時や夜間において、手動運転車や歩行者に自車のことを認識・検知してもらうために必要であるからで、前照灯が不要になるというわけではないからだ。そのため街中での使用シーンが多いロービームの機能は、最低限、搭載する必要がありそうだ。

■将来的には「ハンドル」「ブレーキ」も不要に

このように、自動運転社会に移行が進むにつれて、今の自動車に搭載されている装置や機能の一部は、徐々に無くなっていく流れになっていきそうだ。

分かりやすい例で言えば、「ハンドル」がある。自動車が「いつでも」「どこでも」システムの責任で自動運転が行われる「レベル5」の水準に達すると、人間が運転するシーンが無くなるため、ハンドルは不要になる。ブレーキやアクセルなどのペダル類も、同様に不要になるはずだ。

一方、将来的には必要性が高まる類いの装置もある。例えば「モニター」だ。自動運転AIが次にどのような運転操作をするのか、クルマに乗っている人に知らせるモニター(※もしくは音声で次の運転操作について知らせる装置)などが搭載されるようになっていく可能性が高い。

10年後、20年後、50年後のクルマは、今とは全く異なるタイプの車両になっているかも!?

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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