保護者の部活動の送迎の負担を減らすため、相乗りの仕組みを使った「部活MaaS」×「EVタクシー」のプロジェクトが始動。IT企業の株式会社REA(本社:東京都中央区/代表取締役社長:坂田敬次郎)は北海道帯広市のTKタクシーと共同で、実証実験を実施中だ。
■部活の移動にデマンドタクシーを導入する背景
地方の学校では生徒数減少に伴い、学校単独での部活動の存続が難しくなってきており、複数の学校による合同部活動が行われているという。しかし、合同部活動では1カ所の活動場所に生徒を集める必要がある。
移動の際に公共交通機関を使う場合は待ち時間が発生し、十分に部活動の時間を確保できない。また保護者による送迎では保護者の負担が重くなるなど、効率的な移動手段の確保が問題になっている。
REAが提供するAI(人工知能)乗合配車システム「Noruuu」によるデマンドタクシーを活用することで、生徒の効率的な移動の実現と、稼働が下がっているタクシー事業の新たな移動需要を創出し、持続可能性の高いモデル構築を目指すとしている。
■AIが効率の良い運行ルートを自動作成
今回の実証は、帯広市の3つの中学校を対象に2024年2月3、10、17、24日の土曜日に行われる。保護者は、ウェブのAI乗合配車システムで、TKタクシーの乗車予約をする。
予約内容を基に、AIが効率の良い運行ルートを自動作成しタクシー乗務員へ通知するため、タクシー事業者は業務負担の少なく運行が可能になるという。
EV(電気自動車)タクシーが使用されているのには、事業者の収益改善と、コスト負担が低いEVの方が事業の持続性が高くなるといった理由があるようだ。またEVを使用することにより、交通分野のCO2排出量削減が期待できる。
さらに今回タクシーを利用する生徒たちが早い段階でEVを体験することで、SDGs教育の1つとなり、環境に関しての学びの機会にもなり得る。具体的には、移動中にEVを通じたSDGsの取り組みに関した動画やポスターなどの情報を提供することで、移動時間を学びの時間につなげるといった試みが行われるようだ。
■子ども×MaaSの取り組みには各地で
子どもたちを対象にしたMaaSの取り組みは、最近は各地で行われている。
愛知県刈谷市では、交通と教育をつなぐMaaSの実証実験が2024年1〜2月に行われている。小学校や習い事先、自宅を相乗りタクシーでつなぐといった内容で、自動車部品大手のアイシンが実施している。また、宿題サポートやプログラミング教室など独自の教育プログラムも提供する。
また2023年1〜2月には山口県美弥市で、地域の中学校による合同部活動の実施にあたり、会場までの生徒の送迎を乗合タクシーで運行する「部活動MaaS」の実証実験が行われた。さらに同年3月には、神奈川県横浜市で習い事へ行く際の子ども専用の相乗り送迎サービスの実証実験が行われるなど、子どもの移動の問題を解決するMaaSや乗合タクシーの取り組みが本格化している。
【参考】関連記事としては「ついに「部活動MaaS」なるものも登場!舞台は山口県美祢市」も参照。
ついに「部活動MaaS」なるものも登場!舞台は山口県美祢市 https://t.co/hxyJU9chx6 @jidountenlab #MaaS #部活動
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) January 20, 2023
■塾の送迎などにも展開を拡大予定
今後REAは、対象を部活動の送迎に限らず、塾への送迎など子育て世代の一助になるようなサービスを構築することで、さらなる需要拡大と地域交通の課題でもあるファーストワンマイル(自宅からの最初の移動)も意識した近距離輸送の新たなサービスの構築を目指すという。
これこそ、乗合タクシーの正しい活用方法と言えるかもしれない。今後の実用化に向けての取り組みにも注目したい。
【参考】関連記事としては「習い事の送迎、「負担感じる」8割!相乗りタクシーMaaSで解決」も参照。