自動配送ロボット事業で活用可能な助成・支援制度一覧

各種補助・交付金で手厚く支援



道路交通法の改正などにより、サービス実装が可能となった自動運転技術。ただ、技術水準はまだまだ開発途上にあり、またサービス実装にはパートナー企業や自治体などの存在も欠かせないため、本格実用化にこぎつけた例は少ないのが現状だ。


届け出制のもとサービス実装がスタートしている自動配送ロボットも同様だ。サービス実用化を加速させたい政府は、毎年開発やサービス実証に向けた補助・助成金を予算化し、民間や自治体の取り組みを支援している。

国による支援はどのようなものがあるのか。経済産業省が発表した関連予算案などをもとに各支援事業を紹介していく。

▼自動配送ロボットに活用可能な関連予算案等について|経済産業省商務・サービスグループ物流企画室
https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/deliveryrobot/240202_yosan.pdf

■開発向けの支援
革新的ロボット研究開発等基盤構築事業

2020年度にスタートした事業で、自動配送ロボットをはじめとする産業用ロボットの機能向上や導入容易化を図っていくものだ。2024年度予算は9.6億円が予定されている。


2024年度は、ユーザーの業務フローや施設環境の変革を含むロボットフレンドリーな環境の実現に向け、ユーザーやメーカー、システムインテグレーターなどが連携し、屋内環境・屋外環境のそれぞれにおいてロボットフレンドリーな環境実現に向けた研究開発を促進する。

2024年度のプロジェクト終了時までに、屋内においては施設管理や小売、食品製造の分野でのロボットフレンドリーな環境に資する標準規格を3件策定する。屋外においては、10台以上の自動配送ロボットを遠隔監視・操作可能なシステム実用化2件を目指す。

また、多品種少量生産にも対応可能な産業用ロボットの実現に向け、そのカギとなる「ハンドリング関連技術」「遠隔制御技術」「ロボット新素材技術」「汎用動作計画技術」といった要素技術に係る基礎・応用研究について、産業界と大学等研究機関とが協調して推進する研究開発を支援する。

2024年度のプロジェクト終了時までに、未導入領域へのロボット実装に資する要素技術を2件創出するとともに、2029年度をめどに、本事業の成果を活用したロボットの動作作業の省エネルギー化(現状の1.5倍)を目指す。


自動配送ロボットによる配送サービス実現に向けては、2022年度からの3カ年事業として4事業が採択済みだ。

京セラコミュニケーションシステムは、車道を走行可能な中型中速配送ロボットを複数台利用する多様な地域内サービス提供の実証や雪上走行技術の研究開発を北海道石狩市で進めている。

ZMPは、自動宅配ロボットの複数台同時配送を実現する遠隔管理システムの確立と安全性の実証を東京都内で進めている。

パナソニックホールディングスは、一般歩道など人共存下における配送ロボット・運行管理システムの開発と住宅街などでの配送サービスの実現に向け、神奈川県藤沢市で各種実証を行っている。

Yperは、ラストワンマイル配送の現場を無人化する自動積み下ろし機能を有した自動配送ロボットの開発を進めている。

なお同事業における屋外自動配送ロボットの取り組みは、この4件を継続支援する方針で、2024年度に追加公募は行わない予定としている。

▼詳細(採択情報)は以下(NEDOウェブサイト)
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101551.html

出典:経済産業省資料
出典:経済産業省資料
中小企業生産性革命推進事業

生産性向上に取り組む中小企業や小規模事業者の設備投資、IT導入、国内外の販路開拓、事業承継・引継ぎを補助し、継続的な成長投資の加速化と事業環境変化への対応を支援する事業だ。2023年度に2,000億円の補正予算が組まれている。

革新的な製品・サービスの開発に必要な設備投資として、例えばAI(人工知能)やセンサーなどを活用した高精度な自律走行搬送ロボットの試作機開発などが挙げられる。

比較的利用しやすい補助事業で、2020年度の1次募集から2023年度の14次募集までに決定した補助金交付数は3万件を超え、その総額は約2,485億円に上る。

通常類型の補助率は中小2分の1、小規模・再生と新型コロナ回復加速化特例がそれぞれ3分の2で、上限額は750~1,250万円(大幅賃上げ特例を適用した場合は850〜2,250万円)、成長分野進出類型は補助率3分の2で、上限額は1,000〜2,500万円(同1,100〜3,500万円)となっている。

現在、17次(2024年3月1日締切)と18次(2024年3月27日締切)の公募が行われている。

▼詳細は以下(ものづくり補助金総合サイト)
https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html

出典:経済産業省資料
出典:経済産業省資料
成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)

中小企業が大学や公設試などの研究機関と連携して行う研究開発や試作品開発などの取り組みを最大3年間支援する事業で、研究開発成果の販路開拓なども支援するほか、中小企業によるイノベーション創出を支援する活動を普及・拡大するための実証事業も行う。2024年度予算案として128億円が計上されている。

対象案件としては、自動配送ロボットの関連部品の開発・製造に必要な基盤技術の研究開発などが挙げられる。

補助率は、中小企業者などが原則3分の2以内で、大学・公設試などは原則定額、上限額は通常枠が単年4,500万円以下、3年間9,750万円以下で、出資獲得枠が単年1億円以下、3年間3億円以下となっている。

2024年2月中旬ごろに公募開始する予定としている。

▼詳細は以下(中小企業庁ウェブサイト)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/index.html

出典:経済産業省資料
出典:経済産業省資料
■導入・実証向けの支援
物流効率化に向けた先進的な実証事業

2024年問題をはじめ構造的な課題が内在する物流事業において、荷主企業の行動変容やラストワンマイル配送の省力化などを促進してひっ迫する輸送力不足の解消を図っていく。

具体的には、荷主企業の物流施設の自動化・機械化に資する機器・システムの導入などに係る費用を補助し、荷主企業の省力化や物流効率化の投資効果を明らかにする実証を行う。

また、公道を走行する自動配送ロボットの採算性を確保したサービスモデルを創出し、市場確立に向け複数拠点・多数台運行による大規模なサービス実証を行う。

2023年度の補正予算として55億円が計上されている。自動配送ロボット関連は遠隔操作型小型車にあたるロボット10台以上の運用を行う事業が対象となる。

補助率は大企業3分の1以内、中小企業3分の2以内、上限額は大企業4,000万円、中小企業8,000万円で、人件費や機械装置・システム費、専門家経費、借料・賃料、補助員人件費などが対象となる。

▼詳細は以下(経済産業省ウェブサイト)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/deliveryrobot/index.html

出典:経済産業省資料
出典:経済産業省資料
デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)

岸田総理肝いりのデジタル田園都市国家構想でも、デジタルを活用した地域の課題解決や魅力向上の実現に向けた地方公共団体の意欲的な取り組みを支援する交付金メニューが設けられている。

メニューは大きく以下の4タイプに分けられており、事業立ち上げに必要な経費を単年度に限り支援する。

  • TYPE1:他の地域などですでに確立されている優良なモデル・サービスを活用して迅速に横展開する取り組み(補助率2分の1、上限額1億円)
  • TYPE2:オープンなデータ連携基盤を活用し、複数のサービス実装を伴うモデルケースとなり得る取り組み(補助率2分の1、上限額2億円)
  • TYPE3:TYPE2の要件を満たすデジタル社会変革による地域の暮らしの維持につながり、かつ総合評価が優れている取り組み(補助率3分の2、上限額4億円)
  • TYPE S:デジタル行財政改革の基本的考え方に合致し、将来的に国や地方の統一的・標準的なデジタル基盤への横展開につながる見込みのある先行モデル的な取り組み(補助率4分の3、上限額5億円)

TYPE1の事前相談はすでに終了しており、2月8日~2月15日までに実施計画、3月中旬ごろに内示、4月1日に交付決定というスケジュールとなっている。

▼詳細は以下(内閣府地方創生ウェブサイト)
https://www.chisou.go.jp/sousei/about/mirai/policy/policy1.html

出典:経済産業省資料
出典:経済産業省資料
各社が本格実用化に向け前進

パナソニックホールディングスは2023年7月、改正道路交通法における届出制のもと国内初となる遠隔操作型小型車の運用を、神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウンで開始した。

ロボットデリバリー協会による安全基準の適合審査で同月に合格証を取得し、神奈川県、東京都それぞれの公安委員会に届出を行い、受け付けを済ませた。東京都では社会実験の一環として自動配送ロボットを用いた商品販売サービス実証を行っている。

京セラコミュニケーションシステムは2023年10月、北海道石狩市の一部エリアの車道で、1人のオペレーターが複数台の中型自動配送ロボットを遠隔監視・操作しながら配送サービスを行う国内初の実証に着手した。歩道走行タイプではなく、主に車道を走行するミニカー規格のタイプによる実証だ。

同社は、複数台のロボット遠隔制御に向けロボットの自律走行の開始・停止を行う専用のコントローラーや全体を監視できる表示システムを開発した。遠隔監視室では、ロボットに搭載したカメラからの映像や位置情報、センサー情報などを一目で把握でき、オペレーターは表示システムを利用して全ロボットの状況を確認できるという。

ZMPは2023年9月、NDKCOMとともに九州初となる自動運転宅配ロボットの導入を発表した。長崎県内をはじめ九州圏内のさまざまな事業所への導入を推進していく構えだ。2024年1月には、長崎県立大学シーボルト校のキャンパス内で走行実証を実施している。

Yperは、配送ロボット「LOMBY(ロンビー)」開発事業を2022年に分社化して開発・実装に向けた取り組みを加速しており、2023年3月にスズキと屋外自動配送ロボットの量産化を見据えた共同開発契約を結んだと発表している。

【参考】開発各社の動向については「自律走行ロボットの種類は?」も参照。

■【まとめ】国の支援でサービス化に向けた輪の拡大を

国の支援を受けている大手からスタートアップに至るまで、開発各社は着々とサービス実装に向けた取り組みを前進させているようだ。

ただ、こうした実用化にはサービス面でのパートナー企業や自治体などの存在が欠かせない。こうした輪が広がっていくことで実証が加速し、実装に向けた動きも必然的に早まる。

国によるさまざまな支援が、技術向上とともにこうした輪の拡大に結び付き、取り組みが活発化することに期待したい。

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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