ソフトバンク子会社のBOLDLYはこのほど、自動運転バスの運行を岐阜市内でスタートした。自動運転バスの運行は短期間で実験的に展開されるケースも少なくないが、通年運行でしかも5年間継続することを最初に掲げるのは珍しい。攻めの姿勢と言えそうだ。
取り組みは、岐阜市が実施する自動運転バスの通年運行事業に協力して行うもので、BOLDLYはこの事業の全体管理者として企画・運営を担うほか、自動走行の準備や同社が開発・提供する運行管理システム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を用いた運行体制の構築を行っていく。
なおこの取り組みでは、自動運転バスは自動運転レベル2から開始する。つまり、当面はオペレーター同乗型での運行となる。その後、レベル4の運行へ移行することを目指すという。
■BOLDLYと岐阜市のこれまでの協力関係
岐阜市は、人口減少や高齢化による運転手不足や高齢ドライバーの交通事故などの課題を解決するために、自動運転技術を活用した持続可能な公共交通サービスの構築を目指している。
BOLDLYは同市の自動運転バスの実証実験に、2021年10月と2022年10〜11月の2回協力し、技術や社会受容性についての検証を行ってきた。その結果、岐阜市は自動運転バス3台を導入し、5年間継続して運行するに至ったという。
自動運転バス導入に向けては、全国の多数の自治体で取り組んでいる。しかし今回の岐阜市のように、5年間の通年運行という長期の計画を開始時から宣言しているような例は珍しいと言える。
■自動運転バス運行の概要
今回スタートする事業では、1周約5キロの中心部ルートと1周約9キロの岐阜公園ルートを、自動運転バス「GIFU HEART BUS」が時速20キロ未満で走行する。使用車両は仏Navya製の自動運転バス「ARMA(アルマ)」で、自動運転レベル2で運行するという。オペレーターを除いた乗車定員は10人、運賃は無料だが、電話またはLINEでの事前予約制となっている。
さらに2023年度中をめどに、信号機などのインフラと車両を連携して自動運転率を向上させるための仕組みとして、信号協調と路車協調のシステムを実装する。これにより自動運転レベル4での運行へ移行することを目指すという。
■信号協調と路車協調とは?
信号協調システムの実装では、中心部ルートの15カ所の信号機に装置を取り付け、通信にて信号機の色の情報を自動運転バスに提供する。自動運転バスはこの情報を基に、信号機のある交差点で進行・停止を自動で判断する。自動運転バスはこのシステムにより、信号機の色に従って交差点を安全に自動で通過できるという仕組みだ。
路車協調システムは、岐阜市役所前交差点の信号柱に設置する。AI(人工知能)カメラとLiDARで対向車や歩行者などの状況を把握、右折する自動運転バスに対して進行や停止の指示を出す。これにより、自動運転バスは周辺の状況に応じて安全に自動で右折できるという。
■すでに実績多数のBOLDLY
BOLDLYは、すでに茨城県境町で2020年11月から、北海道上士幌町で2022年12月から自動運転バスの定常運行を開始している。また2023年1月からは、愛知県日進市で自動運転バスの定常運行を見据えた公道実走実験を開始した。
今後もBOLDLYによる自治体での自動運転車の社会実装は増えてきそうだ。また、岐阜市でのレベル4自動運転への移行についても注目していきたい。
【参考】関連記事としては「⾃動運転バスの信号認識「通信方式が必須」!岐阜市での実証実験で試す」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)