中国で一般向けの自動運転車の走行テストがスタートする。この自動運転車は、中国で「インテリジェント・コネクテッド・ビークル(ICV)」と呼ばれており、指定された都市内を自動運転レベル3〜4で試験走行できるようになるという。
今後中国において、一般向けの自動運転車を中国の自動車メーカーが早期に展開できるよう、中国当局に許可発付に踏み切る形だ。
■中国が開発に注力するICVとは?
中国の政府機関である工業・情報化部は、ICVに長期的に注力するという戦略を2023年11月17日に明らかにした。それによると、工業・情報化部が定めた5段階ある中国での自動運転レベルで、レベル3と4をカバーする走行試験になるという。
なおICVは、他の車両やインフラ、ネットワークとシームレスに接続できる先進技術を搭載したクルマのことを指す。この先進技術は、具体的には自動運転や、周囲を走行する車両と通信する車車間通信(V2V)、交通インフラと情報をやり取りする路車間通信(V2I)などのことだ。
中国政府がICVの走行試験を許可することで、高度な自動運転機能の開発を促進することを目指している。それにより、中国を自動運転に代表されるインテリジェント交通の世界的リーダーとして位置づけ、経済成長を促進したいというもくろみのようだ。さらに、中国はこの分野において大きな雇用機会の創出も見込んでいる。
■自動運転タクシーが先行する中国
一般向けの自動運転車に先行して、中国では自動運転タクシーがすでに実用化されている。
代表的なのはIT大手の百度(Baidu)による自動運転タクシーだ。2018年6月に北京で公道走行ライセンスを取得したことに始まり、上海や広州、重慶、滄州、深セン、武漢などでも自動運転タクシーサービスを展開している。
同社は2030年までに、サービスエリアを100都市まで拡大させる目標を掲げているため、今後も認可が下りたエリアで順次サービスをスタートさせていくことが予想される。
そのほか、自動運転開発スタートアップのAutoXやWeRide、Pony.aiもそれぞれ特定の都市で自動運転タクシーサービスを提供しているなど、中国の自動運転タクシー開発企業は数多くある。
【参考】関連記事としては「中国の自動運転タクシー事情(2023年最新版)」も参照。
なお自動運転車両の開発や製造を手掛ける中国企業もある。2022年11月には、Google系Waymoが新型ロボタクシー専用車の製造を浙江吉利控股集団(Geely)に委託したことが明らかになった。GeelyのプレミアムEV(電気自動車)ブランド「Zeekr」で製造されるようだ。
また2023年8月には、Pony.aiとトヨタ自動車(中国)投資有限公司(TMCI)、広汽トヨタ自動車(GTMC)の3社が合弁を設立することが発表された。これにより、トヨタブランドのBEV(バッテリー式電気自動車)をPony.aiに提供し、自動運転タクシーを量産化していく計画のようだ。
【参考】関連記事としては「トヨタ、中国で自動運転タクシーを本格量産へ Pony.aiと合弁設立」も参照。
■中国の勢いがますます加速するか
中国は世界でも自動運転開発をリードする国の1つだ。大手自動車メーカーやスタートアップなど各社が技術開発や走行テスト、実用化に取り組んでいる。
今回ICVの路上走行テストが許可されたことにより、その勢いはますます増していきそうだ。米中で先行する自動運転開発競争だが、中国が頭ひとつ抜けることができるか、引き続き注目していきたい。
【参考】関連記事としては「中国の「自動運転指針」、百度・アリババ・華為が策定に参画」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)