最も成長性が高いスタートアップ企業のビジネス領域は「モビリティ」──。民間調査会社の帝国データバンクが実施した調査で、このようなことが明らかになった。
帝国データバンクは、成長性のレベルを10段階にした成長性予測モデル「SP」を2023年1月から提供開始している。レベル6以上で「成長性が高い」と判断でき、実際にSPレベルが高いほど成長した企業が多く発生しているという。
今回の調査では、同社が把握しているスタートアップ企業約4,000社を対象にSPで分析が可能な企業を抽出し、事業分野ごとにレベル10に該当するスタートアップの割合がどのくらいかなどを調べた。
■モビリティ系スタートアップの75.9%がレベル10
事業分野別で1位になったのは「モビリティ」であった。モビリティ分野のスタートアップの75.9%が、最も成長性が高いレベル10に該当するという。
2位は送金・決済サービスや資産運用などの分野が代表的な「FinTech」で72.3%、3位は労務管理など人材に関する「HR」で71.1%であった。そのほか、「AI(人工知能)」が71.0%、入居時の契約やDXツールを用いた業務効率化が多数みられる「不動産」が70.5%、データ活用・管理サービスを提供する「プラットフォーム」が70.2%と続く。
なお資金調達の実績があるスタートアップ企業のレベル10の割合は68.9%、調達実績なしの企業の割合は59.6%であったという。また、東京23区内で最もレベル10のスタートアップ企業が多いのは文京区であったという結果も出ている。
■モビリティ系で注目の国内スタートアップは?
上記の結果は、モビリティ分野で事業を行うスタートアップ企業の有望性を強く感じさせるものだ。日本国内にはさまざまなモビリティ系スタートアップがあるが、最近注目されている企業を紹介していこう。
モビリティ系スタートアップの筆頭格が、自動運転開発企業であるティアフォーだ。オープンソースの自動運転OS(基本ソフト)「Autoware(オートウェア)」の開発などを行っている。また、官民と連携し日本各地で自動運転バスなどの多数の実証実験実績がある。
「WHILL自動運転サービス」の提供を行うWHILL。すでに羽田空港や関西国際空港、成田国際空港で同社の自動運転パーソナルモビリティが導入されている。2023年10月には、関西国際空港での利用回数が、導入から1年で1万回を突破したことを発表した。
Turingは「We Overtake Tesla」をミッションに掲げ、レベル5相当の完全自動運転EV(電気自動車)の開発と量産化を目指している企業だ。2025年に自社生産EVを100台販売、2027年に完全自動運転EVの量産を開始、2030年に完全自動運転EVを1万台生産することを目標にしている。
実業家の堀江貴文氏が取締役を務めることで知られるHakobotは、自動配送ロボット「Hakobase」の開発を進めている。この製品は走行ユニットのみで自動運転を実装し、荷室がカスタマイズ可能で、4輪駆動4輪操舵のオリジナル設計という特徴がある。
このほか、空飛ぶクルマを開発するSkyDriveにも注目だ。海外企業からのプレオーダーを続々と獲得しており、日本のエアモビリティシーンをリードしている。
【参考】関連記事としては「「しゃべる自動運転車」実現 ティアフォー、生成AI技術を活用」も参照。
ティアフォーは、クルマが考えて人間と対話する自動運転インターフェースを開発した。「しゃべる自動運転車」を実現する技術だ。今話題の生成AI技術などが活用されている。#自動運転
「しゃべる自動運転車」実現 ティアフォー、生成AI技術を活用 https://t.co/rAzzGWkGo3 @jidountenlab
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) November 1, 2023
■「突出した成長性の高さが表れた」
帝国データバンクは、今回の調査でモビリティ分野がトップになったことについて、「空飛ぶクルマやEV、自動運転など新技術が期待されているなかで、突出した成長性の高さが表れた」と評している。さまざまなビジネス領域がある中、今後もモビリティ分野には引き続き注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転業界のスタートアップ一覧(2023年最新版)」も参照。