自動運転の「連節バス」などを使う公道での実証実験がスタートする。これを手掛けるのはソフトバンクと西日本旅客鉄道(JR西日本)だ。
両社は自動運転と隊列走行技術を用いたBRTの開発プロジェクトにおいて、滋賀県野洲市の専用テストコースでの実証実験を2021年10月からスタートし、2023年7月に完了した。社会実装に向けた次のステップとして、2023年11月から広島県東広島市の公道での実証実験を開始するという。
なお連節バスとは、2つの車体を幌(ほろ)でつないだバスのことだ。1回の運行で通常の2倍近くの乗客を運べるため、近年採用する会社が増えている。またBRTは「Bus Rapid Transit」の略で、バス高速輸送システムのことを指す。
■専用テストコースの次のステップ
今回の公道での実証は、専用テストコースでの実証実験項目の検証が完了し、社会実装に向けた検討を進めるための次のステップとして実施されるものだ。2023年11月~2024年2月に行われ、実験区間は東広島市のJR西条駅と広島大学東広島キャンパスを結ぶ県道・市道となっている。
公道での実証の目的は「自動運転・隊列走行技術の社会実装に向けた課題の検証・洗い出しを行うこと」「東広島市民をはじめとした方々にBRTや自動運転・隊列走行などの新技術に関心を持っていただくこと」だ。
連節バスと大型バスの計2台を用いて、電波状況や勾配などの自動運転に影響を与える走行環境の検証、連節バスと大型バスの2台による自動運転・隊列走行の実証走行と課題の検証を行う。なお実証走行における自動運転レベルは「レベル2」となっている。また、実証を行うことによるBRTや自動運転・隊列走行などの新技術に関する社会受容性の変化の測定も実施するようだ。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?(2023年最新版)」も参照。
主に東広島市民を対象に、自動運転・隊列走行BRTを体験できる試乗会も予定している。
■最初のステップは専用テストコースでの実証
公道実証の前に、2021年10月〜2023年7月に実施された専用テストコース実証では、連節バス・大型バス・小型バスという3種類の自動運転車両を用いた「自動運転・隊列走行BRT」の実証を行った。都市拠点などにおける公共交通の機能強化と魅力の向上を目的に、BRTの導入を検討する東広島市との連携を進めてきたという。
専用テストコースでは、連節バスの自動運転などバスの自動運転技術、バスの自動運転・隊列走行技術、信号・踏切連携、運行管理・指令、通信技術の検証を行った。自動運転・隊列走行での自動運転レベルは、先頭車がレベル3、後続車がレベル4であったようだ。
またこれらの要素技術を組み合わせた、ダイヤを設定した定常運行試験やODD(運行設計領域)外となる状況を想定した異常時運行試験も実施した。
【参考】関連記事としては「自動運転とODD(2023年最新版)」も参照。
この結果、下記3つの成果を得たという。
- 日本初となる連節バスの自動運転化および自動運転バス車両の隊列走行に成功
- 自動運転、信号制御、運行管理を組み合わせた交通システムのパッケージとして機能させることに成功
- 社会実装に向けて今後向上させる機能や運用方法などの課題を抽出
■2020年半ばの実用化を目指す
ソフトバンクとJR西日本は、自動運転・隊列走行BRTの社会実装に向けた取り組みを進め、2020年代半ばの自動運転レベル4の許認可取得を目指す。
専用コースから公道へと、着実にステップアップしてきた今回の取り組み。運転手などの人材不足や交通渋滞などが問題となっている現在、早期の実用化が待望される。
▼「自動運転・隊列走行BRT」開発プロジェクト|専用テストコースでの実証実験を完了し公道での実証実験を開始|JR西日本/ソフトバンク
https://www.softbank.jp/corp/set/data/news/conference/pdf/material/20230915_01.pdf
【参考】関連記事としては「自動運転のテストコースまとめ!日本でも続々登場」も参照。