デジタル庁、自動運転サービスなどカタログ化!運行管理は年6,000万円が相場?

マイナカード連携でサービス拡充

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出典:デジタル庁公開資料

デジタル庁はこのほど、デジタル実装の優良事例となるサービス・システムをまとめたカタログを発表した。デジタル田園都市国家構想の採択事業のうち、マイナンバーカードを利活用するサービス・システム(マイナンバーカード利用横展開事例創出型採択事業)についてまとめたものだ。

公共交通分野では、MaaS(Mobility as a Service)領域における予約や運行管理、決済などを中心にデジタル実装事例が並んでいる。無人サービスを前提とする自動運転モビリティには欠かせないシステムだ。

どのような事業がデジタル田園都市国家構想に採択されているのか。各事業の中身を見ていこう。

▼デジタル実装の優良事例を支えるサービス/システムのカタログ(第1版)
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/10acd848-153a-4225-b4dd-d91c45e20912/f9ff644c/20230830_policies_digital_garden_city_nation_outline01.pdf

■予約関連
BOLDLY:LINEアプリで乗車予約可能なシステムを日進市で展開

自動運転バス実用化の急先鋒・BOLDLYは、LINEアプリで乗車予約が可能なシステムを開発し、愛知県日進市の実証に導入している。自動運転バスとマイナンバーカードを組み合わせた全国初の取り組みという。

乗車予約のほか、乗車で獲得した地域ポイントを移動先の買い物などで楽しめるエコシステムを構築している。アプリの初回登録時、マイナンバーカードの署名用電子証明書をスマホのNFCで読み取り、本人確認を実施することでIDを作成する。以後は、xIDアプリを使ってログインなどを実施する。

マイナンバーカードとスマホアプリを連携することで、利用者はスマホだけで個人認証を行うことができ、さらに自動運転バス予約と連携することで利用者の属性に応じた広告やサービスの提供が可能になるという。

導入に向けた参考価格は約3,208万円で、導入までの所要時間は約半年を見込んでいる。

日進市では、同市とBOLDLY、マクニカ、名鉄バス、セネック、名城大学がコンソーシアムを形成し、「NAVYA ARMA」を活用した公道実証を2023年1月に開始した。2023年5月からは、週5日ペースで定常運行を行っている。

早ければ2024年にもレベル4の自動運転コミュニティバスを実現する計画だ。茨城県境町や北海道上士幌町、羽田イノベーションシティの動向とともに要注目だ。

出典:デジタル庁公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)
■配車・運行管理関連
BOLDLY:Dispatcherを国内4ヵ所で導入

ここもBOLDLYが力を入れている分野だ。自動運転車両に対し、遠隔地から走行指示や車内安全の確認・維持、緊急時対応などを行い、安全な運行を可能にするシステム「Dispatcher」を開発済みだ。

点検点呼機能や転倒事故につながる走行中の乗客移動をAI(人工知能)が検知するなど、交通事業者の利用に即した設計がなされている。30車種の自動運転車と接続実績があり、旅客・貨物などさまざまなタイプの車両を同一のUI(ユーザーインターフェース)でオペレーションし一括管理することができる点もポイントだ。

マイナンバーカードは、上述した乗車予約サービスと連携して利用することが想定される。導入参考価格は約6,530万円(日進市の2023年度の運行事業費)で、導入車両や走行経路により変動する。導入にかかる所要時間は3~4カ月間を見込んでいる。

日進市のほか、自動運転バスの定常運行に着手している茨城県境町、北海道上士幌町、羽田イノベーションシティですでに導入されている。

ドライバー不在となる自動運転サービスには、車内の状況把握や乗客とのコミュニケーション手段、そして全面的に運行を管理するシステムが欠かせない。Dispatcherのように、機能性や汎用性に優れたシステムの需要は今後大きく伸びそうだ。

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■モビリティ×他分野連携関連
東日本旅客鉄道:交通系ICカードとマイナカードを連携

JR東日本は、群馬県と前橋市が取り組む「GunMaaS」にマイナンバーカード連携を導入した。マイナンバーカードと交通系ICカードを連携させ認証情報を利用することで、ワンタッチで市民や年齢に応じた割引決済が可能になるという。

市外からの来県者をはじめ、市民割引や高齢者割引など個人の属性情報に応じたサービスを提供することができる。

GunMaaSは、群馬県内におけるMaaSとして2023年3月にサービスを開始した。リアルタイム経路検索やデマンド交通・タクシーの予約、電子チケット販売などの各サービスを提供している。

マイナンバーカード連携機能を有するシステムの導入費用は、初期導入費500万円から、利用料75万円からとなっている。

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【参考】GunMaaSについては「群馬で「GunMaaS」始まる!「自家用車から公共交通へ」促す」も参照。

博報堂:自家用有償旅客運送サービス「ノッカル」を展開

博報堂は、事業者協力型の自家用有償旅客運送制度を活用したマイカー乗り合い公共交通サービス「ノッカル」を富山県朝日町などで導入している。

ノッカルは、国土交通省の地域公共交通関連制度「事業者協力型自家用有償旅客運送」の初事例で、地域住民がマイカーを活用してドライバーとして参加し、町内地域住民が利用する「住民同士が支え合うMaaS」として普及を進めているサービスだ。

地域のバスやタクシー、乗合デマンドなど幅広い運行形態に対応しており、利用者はLINEもしくは電話で予約することができる。マイナンバーカードと連携することで、カードをタッチするだけで運賃決済することを可能にしている。アプリにマイナンバーカードをかざして支払いする形態だ。

朝日町では2020年8月に実証を開始し、2021年10月から本格運行を行っている。富山県高岡市も導入済みで、デマンド交通の実証を進めている。2023年度には、山形県西川町と静岡県東伊豆町でも導入予定という。

導入費用は、システム利用費が月10~30万円、運用設定サポート費10~20万円、システム初期導入費50~200万円、システム初期設定費100~200万円、その他諸経費となっている。導入までの所要時間は、バス・デマンド交通が1カ月~、自家用有償サービスが2カ月~となっている。

現行制度を活用した日本版ライドシェアとして注目の取り組みだ。

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【参考】ノッカルについては「博報堂が「日本版ライドシェア」!Uberはダメなのになぜ?」も参照。

■AIオンデマンド交通関連
NTTドコモ:オンデマンド対応プラットフォーム「AI運行バス」を開発

NTTドコモは、自由に移動できるオンデマンド型公共交通システム「AI運行バス」を開発している。リアルタイムに発生する乗降リクエストに対し、AIが最適な乗り合わせを判断して車両配車と運行指示を行うことで、効率的な移動を実現するサービスだ。

乗車予約や車両の現在位置の確認、お知らせ情報配信機能などを備えた乗客アプリと、予約や車両、乗客、運行記録、乗降地点といった各種データの管理をはじめ、輸送人数・乗合率・予約キャンセル率などの表示・出力、電話・予約受付機能を備えた運行管理ポータル、地図・配車予定表示や乗客情報表示、管理者からの連絡受信機能を備えたドライバーアプリを提供する。

マイナンバーカードとAI運行バスのデータを連携し、より詳細な利用状況を確認することでサービス改善を図るべく検討を進めているという。

導入参考価格は、AI運行バスシステムの初期費用として80万円、AI運行バスシステム利用料として月18万円となっている。導入までの所要時間は、申し込みから約3~6カ月程度を想定している。

出典:デジタル庁公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

【参考】AI運行バスについては「「AI運行バス」とは?将来は自動運転化も?NTTドコモが商標登録」も参照。

建設技術研究所:スマホで予約・決済が可能な「シティMobi」

建設技術研究所の「シティMobi」も採択されている。スマホアプリで乗車予約と決済が可能で、配車システムによる自動配車計画立案など利便性・効率性の高いデマンド交通を支援する。

アカウント作成時、マイナンバーカードをスマートフォンアプリで読み込み公的個人認証を行うことで、アカウント作成時の負荷軽減を図るとともに割引などの個別サービスを提供することが可能になるようだ。

出典:デジタル庁公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)
■決済・割引関連
マイナカード利用で個別最適化された優遇サービスを付与

決済・割引関連では、ユニ・トランドの「TicketQRサービス」、ICTまちづくり共通プラットフォーム推進機構の「マイナンバーカードを活用したタクシー運賃割引補助システム」、JR東日本メカトロニクスの「ライト会員向けマイナンバーカード連携登録サービス」が紹介されている。

TicketQRサービスは、バスなどの二次交通利用者がマイナンバーカードを登録することで、運賃支払い時に市民割引などの優遇を受けることが可能となる。

マイナンバーカードを活用したタクシー運賃割引補助システムは、デマンド相乗りタクシー利用時にサービスの資格確認と利用回数の付与と減算を行うことができるという。

ライト会員向けマイナンバーカード連携登録サービスは、交通系ICカードにマイナンバーカードの情報を紐づけるサービスで、マイナンバーカードの代わりに交通系ICカードを専用端末にタッチするだけで、個人情報に基づいた特典を受けることが可能になる。

■交通機関のデジタル化関連
リアルタイムの運行情報を発信可能なデジタルサイネージシステム

都築電気は、バスの運行情報の実態に合わせてデジタルサイネージでリアルタイムに運行状況を発信できる「バスの運行情報配信システム」を開発している。

バス事業者などがGTFS-JPデータまたはGTFS-RTデータで作成した最新の運行情報をオープンデータサイトにアップロードし、同社のダイヤ更新サーバーがこれを読み込み配信用コンテンツを作成する仕組みで、更新作業なども必要ないという。静岡県沼津市、佐賀県佐賀市が導入済みのほか、民間での活用も進んでいるそうだ。

■【まとめ】デジタル化・自動化されたシステムによる全体最適化が必須

マイナンバーカードに関しては、登録ミスに起因する諸問題が発生しデジタル庁などが対応に追われているのは周知の事実だが、正しく効果的に活用すればさまざまな分野に利便性をもたらすポテンシャルを持っている。10年20年後のデジタル社会を見据え、急がずじっくりと普及・サービス連携を進めてもらいたいところだ。

マイナンバーカードを抜きにしても、自動運転サービスやMaaSを効果的に実装するためには、予約や決済、運行管理など多くの面でデジタル化・自動化されたシステムを導入し、全体最適化を図っていくことが求められる。

自動運転やMaaSに付随するシステム開発はまだまだ始まったばかりで、新たなアイデア・システム構成などを交えながらブラッシュアップし続けるフェーズが長く続くものと思われる。新規参入や新システムの発表などに引き続き注目したい。

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

【参考】関連記事としては「【必読】自動運転、日本の新方針Ver7.0は「デジタル化」に重点」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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