米Applied Intuition、自動運転トラック技術を「100億円」で獲得

Embark Technologyの買収を発表



自動運転システム開発のためのソフトウェアを手掛ける米Applied Intuitionは、自動運転用ソフトウェア開発企業の米Embark Technologyを買収したことを、2023年6月1日までに発表した。


買収額は約7,100万ドル(約100億円)で、今後は自動運転開発向け製品を強化していくという。

自動運転トラック関連に強みがあるEmbark
出典:Embark公式サイト

2017年設立のApplied Intuitionは、米シリコンバレーに本社を置き、ロサンゼルスやデトロイト、ワシントンD.C.、ドイツやスウェーデン、韓国、日本にもオフィスを構えている。

同社は自動運転システムそのものを開発しているのではなく、自動運転システムを開発しているエンジニアチーム向けに、シミュレーションソフトや検証ソフト、ドライブデータの管理ソフトなどを展開している。

Embarkは2016年に設立され、長距離トラックに焦点を絞った自動運転技術を追求してきた。開発を進める自動運転システム「Embark Driver」は、複数の冗長センサーで構成されており、予測や制御、シナリオのシミュレートで強みがある。


2021年10月には、同社のトラック向けの自動運転ソフトウェアの購入予約件数が1万4,200件に上ることが明らかになっている。しかし2023年3月には、会社清算を検討していることが報じられた。

Embarkは今回の買収に伴いテスト車両を撤収させる予定で、主要社員はAppliedのサポートと製品ラインナップの拡充のために残る予定だという。なおEmbarkは2021年11月に米ナスダック市場にSPAC上場しているが、取引を停止し、非上場会社となる。

■「世界中の顧客により良いサービスを」

Applied Intuitionの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)であるQasar Younis氏は「この買収により、当社は製品を進化させ、顧客のより具体的で複雑な課題を解決することができるはずだ」と強調する。

その上で「我々はEmbarkが自動運転業界で成し遂げた業績を尊敬しており、彼らの専門知識を活用して、世界中の顧客により良いサービスを提供できることを楽しみにしている」と述べている。


またEmbarkの共同創業者兼CEOのAlex Rodrigues氏は「本日、Embarkにとってエキサイティングな新たな船出を迎えることができた。過去7年間にEmbarkで働いてくれた全従業員と彼らの多大な貢献に感謝している」とし、「私たちが築き上げた技術をAppliedがどのように発展させていくのか、楽しみだ」とコメントしている。

なお、EmbarkのCEOを含む幹部が今後どういった所属になるかは、プレスリリースには記載がないようだ。

■関連企業の再編や合併が続く業界

2022年は、自動運転開発を手掛ける有力スタートップである米Argo AIの事業清算や、LiDAR開発の米Ousterと米Velodyne Lidarの対等合併、オーストラリアのLiDARスタートアップBarajaの大規模レイオフなどが行われた。

関連企業の再編や合併、淘汰が続く自動運転業界。今後もこうした流れは続くのか。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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