世界最大級の自動運転デリバリー、英国で17万人対象に実現へ

ケンブリッジ大Wayveも協力し、まずはトライアル



出典:Asdaプレスリリース

英国の大手スーパーマーケット「Asda」はこのほど、自走運転車による食料品デリバリーのトライアルを開始した。Asdaによると、自動運転型デリバリーとしては英国最大の試みになるという。

これは、AI(人工知能)の研究開発を進める英Wayve(ウェイブ)と提携して行われる。1年間のトライアルのあと、ロンドン市内の7万2,000世帯、17万人以上の住民を対象にした特定エリアにて、自動運転で注文の品をデリバリーできるようになる予定だ。


■ジャガーのEVに自動運転システムを搭載

トライアルで用いられるのは、Wayveが開発した自動運転システムが搭載されたジャガーのEV(電気自動車)「I-PACE」だ。AI(人工知能)ソフトは機械学習による訓練により、どんな環境でも安全に運転できる方法を学習している。

同社では自動運転システムの名称を「AV2.0」としており、常に道路を監視することや、潜在的な危険を識別することができ、最も安全な判断を下すように設計されているという。

Asdaによると、自動運転車はロンドン西部にある同社店舗の既存のデリバリー車両に加わり、オンラインで注文をした顧客の中から無作為に選び、自動運転車での商品配送を行うという。

ただし、自動運転車は無人で走行するわけではない。安全のため、Asdaの従業員とWayveのセーフティドライバーが同乗するという。店舗からデリバリー先までは、自動運転で行われるが、デリバリー先での荷物の積み下ろしはAsdaの従業員が行う。自動運転レベルにおける分類は「プレ・レベル4」(※セーフティドライバーが全く介入しなくなればレベル4)といったところか。


なおAsdaとWayveは2年の提携を結んでおり、今回のデリバリーテストはその一環で行われるようだ。

■ビル・ゲイツも注目するWayve

Wayveは、英国の名門ケンブリッジ大学の研究チームが2017年に設立したスタートアップだ。2019年7月にシリーズAラウンドで2,000万ドル、2022年1月にシリーズBラウンドで2億ドルの資金調達を得ている。シリーズBラウンド後の累計調達額は、2億5,800万ドル(当時のレートで約297億円)となっている。

最近では、米マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏がWayveの自動運転車を体験したことを自らTwitterに投稿し、話題になった。

大手スーパマーケットと自動運転開発の新鋭がタッグを組んだ大規模トライアルが、1年後に実用化に至るのか、今後も見ていきたい。


▼Wayve公式サイト
https://wayve.ai/

【参考】関連記事としては「ビル・ゲイツ興奮!自動運転車に乗る」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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