景気後退への懸念もあり、2022年の世界のIPO(新規株式公開)調達額は前年比で65%減少した。米国では2022年のIPOの中止件数が、ITバブルが崩壊した2000年以来の高水準となっている。
そんな中、中国の自動運転開発企業であるMomentaとWeRideが、米国市場への上場を検討しているという。アメリカにおけるIPO自粛ムードを打ち破るのは、こうした自動運転企業になりそうな予感だ。
■大手自動車メーカーと協業するMomenta
中国の自動運転システム開発スタートアップのMomentaは、2023年中の米国または香港での上場を検討しているようだ。米メディアの報道によると、調達額は10億ドル(約1,300億円)以上になる可能性があるという。
2016年設立のMomentaは、自動運転システム「Mpilot」を開発している。2020年7月には、自動運転レベル4(高度運転自動化)相当の自動運転タクシーの実証を中国・蘇州市で同年10月から開始することを発表している。
同社は中国における自動運転車向けHDマップのプラットフォーム開発を進めるため、2020年3月にトヨタと提携した。また自動運転タクシーの実証については、中国最大の自動車メーカーSAIC(上海汽車)と協業している。
▼Momenta公式サイト
https://www.momenta.cn/
■WeRideはすでにIPO申請済み?
米テック系メディアによると、WeRideは米国市場への上場申請を水面下で進めているという。同社の上場に関しては、米国または香港で上場し、約5億ドル(約660億円)を調達する可能性があるということが2022年8月にすでに報じられていた。
2017年設立のWeRideは、中国の広州に本社を置き、中国各地と米サンノゼに拠点を持つ自動運転技術の開発企業だ。特にレベル4の自動運転タクシーサービスの開発に力を入れており、2020年7月には中国・広州で「完全無人」での自動運転タクシー実証を開始した。
米国においては、カリフォルニア州で「セーフティドライバーなし」の自動運転車の公道試験許可を2021年4月に取得し、中国と米国の両方で自動運転テストの許可を取得した世界初のスタートアップになった。
ルノー・日産自動車・三菱自動車工業が設立したオープンイノベーションを支援する企業ベンチャーキャピタル(VC)ファンド「アライアンス・ベンチャーズ」は、WeRideに3,000万ドル(約34億円:当時のレート)を出資したことを2018年10月に発表している。
また2022年5月には、独自動車部品大手のボッシュから戦略的投資を受けるなど、大手企業が注目する有力スタートアップであると言える。
▼WeRide公式サイト
https://www.weride.ai/en
■IPO実施の呼び水となるか
IPOの自粛ムードが広がる中、この2社の新規上場がIPO実施の呼び水となるのだろうか。アメリカでは銀行の破綻などが続き、まだまだ景気や経済に対する懸念は大きいが、引き続き両社の動向に注目する価値は十分にありそうだ。
【参考】関連記事としては「そろそろIPO?2023年に噂が出そうな自動運転ベンチャー」も参照。