自動運転、日本発の「安全性評価」枠組みが国際標準に

システムを「認知」「判断」「操作」に分解



日本発の自動運転システムの「シナリオに基づく安全性評価フレームワーク」に関する国際標準として、「ISO 34502」が2022年11月20日までに発行された。


自動運転システムを開発する上でのプロセスの企画や設計、評価の各段階において、安全性を評価・検証する際の共通基盤として本標準を活用することで、安全性と開発効率の向上が期待できるという。

ISO 34502で規定された安全性評価の全体的な流れ=出典:経済産業省
■「ISO 34502」とは?

ISO 34502は、自動運転システムの安全性を評価する際の手順や、クリティカルシナリオ(自車にとって危険と認知した場合に即座に安全行動を行う必要がある事象)を導き出す手法で構成されているという。

安全性評価の全体的な流れは以下の通りだ。

  • ①:安全目標の設定(例:有能なドライバーより優秀である)
  • ②:シナリオ検証範囲の設定(例:交通参加者の速度範囲など)
  • ③:危険な事象に至る要因(例:自車と他車との相対速度や車間距離)及び②のシナリオ検証範囲からクリティカルシナリオの特定
  • ④:安全性試験・評価を実施
  • ⑤:①で設定した安全目標を達成しているか判断
  • ⑥:⑤で未達成の場合、自動運転システムの再検討を要求し①に戻る

経済産業省の発表によれば、日本の提案が特徴的なのは、自動運転システムの各要素を「認知」「判断」「操作」の3要素に分解して、各々の危険につながる事象を体系的に整理し、シナリオを漏れなく導き出す手法だということだ。


出典:経済産業省

クリティカルシナリオを導き出す手法について、より実現可能な「シナリオベースアプローチ」を提案することで、シナリオの種類が無限に近づいても検証作業に支障をきたすことなく、安全性保証に必要十分なシナリオを適切に容易に検討できるという。

■トラック隊列走行システムでも・・・

経済産業省は2022年9月、日本が2019年4月に国際標準化機構に提案していた基準が、トラック隊列走行システムの国際標準「ISO 4272」として発行されたと発表している。ISO 4272は隊列運行管理機能と隊列走行制御機能について規定したものだ。

標準化されることで、異なるメーカーの車両が混在しても隊列の加入者情報が共有でき、加入時に協調して車速調整や隊列形成ができるという。

モビリティ技術革新には国際的なルール作りが不可欠で、この分野で日本が注目を集めていることは、素直に日本にとって良いニュースと言えそうだ。


日本は国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において、共同議長または副議長として自動運転関連の国際基準に関して議論を主導する立場だ。今後も標準化や基準策定でさらに存在感が高まるか、注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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