OEM各社がコネクテッドカーの標準化を推し進める中、トヨタのシェアが拡大しているようだ。香港を拠点にマーケティングリサーチ事業を手掛けるCounterpointの最新の調査によると、コネクテッドカー市場におけるトヨタのシェアは11.7%で、2年前の調査から2.8ポイント上昇している。
スタンダードな存在となりつつあるコネクテッド市場では、今後、通信機能を活用したさまざまなサービスが派生し、新たなビジネスを生む可能性が高い。Counterpointのレポートをベースに、直近のコネクテッド市場に迫る。
記事の目次
■2022年第2四半期におけるコネクテッドカー市場
Counterpointの調査によると、2022年第2四半期におけるコネクテッドカーの市場シェアは以下の通りとなっている。
- 1位:フォルクスワーゲン(11.9%)
- 2位:トヨタ(11.7%)
- 3位:GM(10.1%)
- 4位:ステランティス(9.1%)
- 5位:ヒョンデ(7.2%)
- 6位:BMW(6.8%)
なお、コロナ禍の影響をまだあまり受けていない2020年第2四半期時点の同調査結果は以下の通りだ。
- 1位:フォルクスワーゲン(15.5%)
- 2位:GM(12.6%)
- 3位:トヨタ(8.9%)
- 4位:フォード(7.1%)
- 5位:ルノー・日産・三菱(6.9%)
- 6位:ダイムラー(6.0%)
この2年間でトヨタがシェアを伸ばしているのがよく分かる。OEM各社がコネクテッドカーの標準化を進める中、自家用車の販売台数で優位に立つトヨタがコネクテッドカーにおいても着実にシェアを伸ばしているようだ。
上記の数字が連結ベースかどうかは不明だが、ダイハツや日野を含むトヨタの新車販売シェアは、2018年11.1%、2019年11.7%、2020年13.7%、2021年12.6%となっており、コネクテッドカーの市場シェアもほぼ同水準に達している。
後述するが、トヨタは2018年以降ほぼ全ての国内発売モデルにDCM(車載通信機)を搭載するなど、コネクテッド化を推し進めている。海外モデルへの搭載状況は不明だが、おそらく今後も堅調にコネクテッドカーの販売を拡大していくものと思われる。
コネクテッドカーの普及率が50%超に
Counterpointによると、2022年第2四半期におけるコネクテッドカーの普及率は約50.5%に達し、初めてノンコネクテッドカーを上回ったという。メーカー各社は、ベース車種の派生車種に至るまで純正コネクテッド機能の搭載を行っており、今後もノンコネクテッドカーは減少を続けていく見込みとしている。
欧州では、主要メーカーのステランティスやフォルクスワーゲン、BMW、メルセデスベンツなどがコネクテッドカーの比率を高めているため、コネクテッドカー普及率は約60%に達しているという。グローバルでは、フォルクスワーゲンやトヨタ、GMが市場をリードしている。
中国では、Arcfox やGreat Wall Motor(長城汽車)などが5G対応車を2020年に市場化しており、この点でイニシアティブを発揮しているという。
ただし、2022年第2四半期に出荷されたコネクテッドカーの9割は4G接続で、5G車は7%前後としている。5Gのシェアは今後も増加するものの、5G用のコントロールユニットやデバイスが高価であることと、5G提供エリアが断片的であること、高度なADASや自動運転機能といった5Gを必要とする技術の搭載が限定されていることから、5Gの普及は2025年以降になると見ている。
■コネクテッドカーとは?
コネクテッドカーは、通信機器の搭載あるいは外部通信機器との連携などにより、ICT端末としての機能を有する自動車を指す。新車へのDCM(車載通信機)搭載が進んでいるほか、スマートフォンやWi-Fi通信機と連携することで通信を可能にするモデルもある。
機能としては、主に以下に分けられる。
- ①車両情報の活用
- ②車両の操作
- ③インフォテインメント
- ④交通情報の活用
- ⑤ソフトウェアのバージョンアップ
①車両情報の活用
①では、ガソリンやバッテリー残量、ウォッシャー液、タイヤの空気圧、エンジンの異常など、さまざまな情報がメーカーのサポートセンターなどに送信され、リアルタイムで必要な処置のアドバイスを受けることができる。また、スマートフォンと連携することで、車両の状態も把握しやすくなる。
このほか、エアバッグの作動状況などから事故の有無などを判断し、オペレーター対応や緊急通報を行うサービスも普及している。
同様に、アクセルワークやハンドリング、走行速度などのプローブ情報を収集・分析することもできる。運転技術の向上を図ることや、走行データをもとに安全運転の度合いを分析し、保険料に反映させるテレマティクス保険などのサービスも登場している。
②車両の操作
②では、スマートフォンを連動させることで、エンジンのリモートスタートやドアの開閉、エアコンの設定など、一定の車両操作を行うことができる。スマートキーの代わりにスマートフォンを活用するサービスなどもある。
③インフォテインメント
③では、車内ディスプレイなどを活用し、AndroidやiOSなどと連携した各種サービスを楽しむことができる。将来的には、VRやAR技術などを駆使した新サービスなど、さまざまな応用サービスが誕生する可能性が高い。
④交通情報の活用
④では、周辺の道路インフラや車両と通信する路車間通信(V2I)や車車間通信(V2V)などにより、効率的な道路交通の実現をはじめADAS・自動運転技術への活用に期待が寄せられる。
⑤ソフトウェアのバージョンアップ
⑤では、さまざまな車載ソフトウェアを随時更新することで、車両の状態を常に最新に保つことが可能になる。コンピュータ化が進む今後の自動車においてはスタンダードな技術となる見込みだ。
■トヨタのコネクテッドサービス
トヨタは2018年、新型クラウンと新型カローラスポーツを皮切りにDCMの標準搭載化を開始し、コネクテッドサービス「T-Connect」の本格運用をスタートしている。
スマホアプリを活用したリモートスタートやデジタルキー機能、ドライブ診断、センター通信型のカーナビサービス、緊急通報機能、データ通信量無制限で楽しむことができる車内Wi-Fi機能(有料)など各種サービスを提供している。
利用料金は、例えばT-Connectスタンダードの場合、初年度登録から5年間は無料で、それ以降は月330円が必要となる。スマートフォンなどのテザリングを利用するT-Connect(携帯接続)の場合は、申し込み時に事務手数料330円がかかるが、それ以降は無料で利用できる。
■【まとめ】クルマと通信技術によるサービスは今後も拡大
現状、コネクテッドサービスの魅力については意見が分かれるところで、有料化された際のサービス利用の可否は判断が分かれそうだ。
ただ、コンテンツは年々充実しており、そのうちキラーコンテンツが誕生する可能性もある。移動を担うクルマと通信技術・サービスの融合が今後どのような市場を生み出していくのか、要注目だ。
【参考】コネクテッドカーについては「コネクテッドカー解説(2022年最新版) トヨタや日産の搭載機能を紹介」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)