自動配送、「早さ」も追求!最短30分、楽天などが展開

国内初のロボットオンデマンド配送



出典:楽天プレスリリース

楽天とパナソニックホールディングス、西友が自動配送ロボットを活用した宅配サービスを茨城県つくば市で2022年5月28日から開始した。注文から最短30分で配送する国内初のオンデマンド配送を実現するという。

実用化に向けた実証が加速する自動配送ロボットは、ロボットそのものの開発フェーズから徐々にサービスの質の向上を見据えたフェーズに達しつつあるようだ。


3社の取り組みとともに、自動配送ロボット普及に向けたサービスの在り方について解説していく。

■自動配送ロボットの現在地
ロボット開発は自動運転以外の機能拡張もカギに

自動配送ロボット実用化に向けた現在のフェーズは、ロボットそのものの開発と並行してサービスを見越した実用実証の段階を迎えている。

ロボットの自動運転技術やサービス能力の向上とともに、利用者がどのように商品を注文し、どのようにロボットから商品を受け取るか、また事業者もどのように注文を受け、どのように商品を配送するか――といったオペレーションを明確にし、ロボットによるデリバリーサービスを確立していく段階だ。

自動運転システム以外の面では、積載量の増加や冷蔵・冷凍・保温機能の搭載、航続距離の延長、段差対応をはじめとした走破能力の向上などがロボットに求められるところだ。


自動配送ロボットは近々、内閣府令などでボディサイズや最高速度などが規定される見込みだが、電動車いすと同等の最高時速6キロ、長さ120センチ、幅70センチ、高さ120センチといった規定が準用される可能性が高い。この一定規格の中で各種機能を効果的に盛り込み、他社製ロボットとどのように差別化を図っていくかが今後の焦点になっていくものと思われる。

サービス面ではUI・UXの向上が必須

注文から宅配に至るまでのプラットフォーム関連では、ロボット配送専用のローカルECサイト・アプリの構築がまず必要となる。既存のECサイトを併用することも可能だが、当面は対象となる商品やエリアが著しく限定されるため、明確に区別したほうがスムーズに運営できるものと思われる。

スマートフォンを活用した注文が特に増加することが見込まれるため、商品検索から注文・決済に至る基本機能をいかにシンプルかつ充実したものとし、UI(ユーザーインタフェース)を向上させるかといった観点と、注文から宅配されるまでの配送時間の短縮や配送料金の低減などを通じて、いかにUX(ユーザーエクスペリエンス)を向上させるかといった観点が求められる。


UX面では、注文したスマートフォンの位置情報をもとに、自宅以外にもフレキシブルかつ正確に配送する機能などが実装されると利便性が高まりそうだ。

【参考】関連記事としては「自動配送ロボの公道走行解禁、ECとFMSの連携が今後の鍵に!」も参照。

配送時間の短縮においては、受注後速やかに配送手続きに入ることが可能なオペレーションが必須となる。現状ロボットの最高時速は6キロと定められているため、1時間以内に配送可能なエリアは半径6キロ以内となる。信号待ちや歩道の通行量などを加味すれば、エリアはさらに縮まることになる。

技術の高度化や社会受容性が向上した未来に向け、例えば交差点や通行量の多い箇所は最高時速6キロだが、見通しが良く通行量が少ない箇所は時速10キロまで可能――といった具合に規制緩和が図られるよう、未来を見越した取り組みも進めておくべきかもしれない。

配送料金の観点では、現在は実用実証段階のため無料ないしは低額に設定されることが多い。こうした利用しやすい低料金設定を維持するには、ロボット活用による売り上げ増(利益増)が欠かせない。

小売事業者・利用者双方がメリットを享受できるようサービスの質を向上し、また規模のメリットが働き導入コストが低下するよう広く支持を集める段階までロボットサービスを浸透させる必要がありそうだ。

■つくば市における取り組み
最短30分でオンデマンド配送
出典:楽天プレスリリース

つくば市では、パナソニックと楽天グループ、西友が手を組み、つくば駅周辺の約1,000世帯を対象に西友つくば竹園店取扱商品を最短30分で配送するオンデマンド配送に取り組んでいる。

配送には、パナソニックが開発したロボット「X-Area Robo(クロスエリアロボ)」を活用する。つくば市から約60 キロ離れた東京都中央区に位置する「Panasonic Laboratory Tokyo」から遠隔管制システム「X-Area Remote(クロスエリア リモート)」を用い、遠隔監視・操作を行うという。安全面を考慮し、保安要員が現地で配送を監視する。

【参考】X-Area Robo(クロスエリア ロボ)については「国内初!自動配送ロボで遠隔監視型の公道走行許可 パナソニックが取得」も参照。

対象商品は、生鮮食品や冷蔵・冷凍商品、弁当・惣菜を含む飲食料品や日用品など2,000点以上に及ぶ。クロスエリアロボは多用途キャビンを備えており、冷蔵・冷凍商品にも対応しているものと思われる。当面は1時間ごとの計8枠を用意し、1日8便まで対応する。

配送手数料は110円に設定
出典:楽天プレスリリース

対象エリアは西友つくば竹園店から最長約850メートルの範囲で、楽天が開発したスマートフォン向けの専用サイトで受注後、最短30分または指定した配達時間帯にロボットで商品を配達する。専用サイトでロボットの位置情報や到着予定時刻を確認できるほか、到着時には自動音声による電話やSMSで通知を行う。配送料金に相当する手数料は110円としている。

サービス提供を開始したばかりのため、保安要員の設置や1日あたりの便数に制限をかけているものの、最短30分という取り組みや料金設定などは、先々の本格サービス実装を見越したものと言える。

パナソニック、楽天、西友の3社は、神奈川県横須賀市でも自動配送ロボットの実証を盛んに行っている。ロボット開発のパナソニック、ECプラットフォーマーの楽天、小売大手の西友が手を組む強力布陣は、サービスの全国展開を見据えたパートナーシップの好例となりそうだ。

【参考】横須賀市における取り組みについては「重たい米もOK!楽天&西友、パナ製自動配送ロボで国内初サービス」も参照。

■【まとめ】強力タッグに期待

自動配送ロボットは、技術的な面で実用化が可能になれば完成するわけではなく、サービスの質そのものをしっかりと向上させ、小売事業者や消費者に支持されるサービスにならなければ意味がない。

その意味で、パナソニック、楽天、西友によるそれぞれの強みを効果的に発揮した取り組みには大きな注目と期待が寄せられるところだ。

つくば、横須賀の取り組みとともに、3社が今後どのようにサービス拡大を図っていくか、要注目だ。

【参考】関連記事としては「知ってる?警察庁が「自動配送ロボット」を7種類に分類」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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