楽天が展開している自動配送ロボットの走行について、地域住民の約8割が歓迎しているというアンケート結果が、このほど発表された。ただし利用者からは「有人のデリバリーサービスの方が届くのが早い」というネガティブな声もあった。
調査結果は、経済産業省が2025年3月11日に開催した「第10回自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた官民協議会」で発表された。
一般的に、新しい技術やソリューションはすぐに社会に受け入れられることは難しいと言われている。今回のアンケート調査ではパーセンテージ的には受容性の高さが分かったが、デリバリーにかかる時間など、課題があることも改めて浮き彫りになった。
▼第10回 自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた官民協議会
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosoko_robot/010.html
▼楽天無人配送 地域住民の生活を便利にするロボット配送サービス（楽天グループ株式会社）
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosoko_robot/pdf/010_07_00.pdf
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■楽天による公道での配送実証
経産省は自動走行ロボットの社会実装に向けた検討を進めることを目的に、2019年9月に「自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた官民協議会」を立ち上げた。このほど行われた第10回協議会では、自動走行ロボットが実証実験から社会実装へと進んでいる現状について話し合われた。
改正道路交通法の施行から約2年が経過し、届出走行が可能なロボットが増加、期間を限定しないサービスを提供する届出事例が見受けられるなど、社会実装の段階に進んでいるという。
この協議会の構成員である楽天グループでは、インキュベーション事業 無人ソリューション事業部ロボット事業課が2021年3月から公道でのロボットによる配送の実証実験を行っている。2024年11月からは、自動配送ロボットによる小売店や飲食店の商品配送サービス「楽天無人配送」を東京都晴海周辺で提供開始した。東京都内での提供は楽天として初の取り組みとなる。
このサービスは、地域の小売店や飲食店などの商品をアプリで販売し、お客から注文のあった商品を自動配送ロボットで届けるといった内容になる。東京都中央区晴海全域と月島・勝どきの一部において、毎日10時～21時にサービスを提供しており、配送場所は91地点、配送料は100円となっている。
スターバックスコーヒーやスーパーマーケット文化堂、ファミリーマート、吉野家などが参加しており、取り扱う商品数は4,500品以上ある。ユーザーはアプリで商品を注文し、受け取りの際は暗証番号を入力して荷室の蓋を開けて商品を受け取る仕組みだ。米スタートアップのCartkenが開発した配送ロボットを使用していたが、2025年2月からは米Avrideのロボットも導入されている。
■81％が自動配送ロボの走行を「歓迎」
楽天無人配送についての地域住民へのアンケート調査では、74％の人が自動配送ロボットが地域内で走行していることを認知しており、そのうちの91％が実物を見たことがあるという。
そして受容度については、「自動配送ロボットがあなたが住む場所の近所を走っていることについて、どのように思いますか」という質問で、「とても歓迎する」29％、「やや歓迎する」52％、「やや抵抗がある」15％、「とても抵抗がある」4％という結果になった。81％が自動配送ロボットの走行を歓迎していることになる。
歓迎する理由として、「邪魔にならない」33％、「配送以外にも応用できそう」31％、「見慣れた」24％、「人より安全」17％が挙げられた。また視認性や見た目・デザインも評価されている。
反対に抵抗がある理由は、「人や車とぶつかりそう」10％、「動作が予測できない」8％、「通行の邪魔になりそう」「事故対処が不安」各7％などとなっている。速度が遅すぎる・早すぎるといった意見も出ている。
■実際に利用した人の感想は？
実際に楽天の無人配送を利用した人からは、下記のような感想が寄せられた。おおむね好評であるが、冒頭で触れたように、配送までに要する時間や受け取り場所については改善を希望する人もいた。「マンションの外まで取りに行くのが億劫」という声もあった。
【好意的な意見】
・シンプルでいい体験、便利。スムーズに受け取りができた
・当たり前のことを当たり前にやってくれるところが魅力
・配送費が安くて指定した時刻に届く。少ない買い物でも安心して利用できる
・当日でも選べる時間が多く、細かく受け取り時間が選べる
・子供と一緒に配達を見守るのが楽しい。子供がワクワクするので勧めたい
【ネガティブな意見】
・有人のデリバリーサービスの方が届くのが早い
・マンションの外まで取りに行くのが億劫。高層階だと一階まで降りる手間がかかる
・対象店舗が少ない。配達出来るお店を増やして欲しい
■ロボット配送サービスに取り組む楽天
楽天グループでは実証の成果として、事業採算性を確保したサービスモデルを創出したことを挙げている。事業は成長軌道にあり、今後の事業採算性確保に向けて進んでいる。この市場の確立および導入促進も見られたという。
ユーザー体験や運用上の課題については改善の必要があり、ロボット荷室の解錠方法や配送圏の拡大を行っていくようだ。またランチ帯に需要が集中し、他時間帯の稼働率を上げていくことが必要である一方で、注文スロットが早期に埋まってはすぐに配送できなくなり利便性が落ちると分析している。そのためには適切な稼働率を見極め、ロボット台数を柔軟に変更していくことが重要だとしている。
拡大する配送需要の反面、配送の担い手は不足しており、今後これまでのサービスですら維持できなくなる恐れがある。楽天はこの課題解決のため、ロボットによる配送の実装に取り組む。
今回のアンケートでは、課題が浮き彫りになったものの、ロボットの社会受容性が高まっていることを感じさせる結果となった。今後の楽天の取り組みに引き続き注目したい。
【参考】関連記事としては「自律走行ロボットの種類解説 機能面や車両タイプから分類」も参照。
