ある私立大学が、自動運転バスの2021年度の年間走行距離が1万キロを超えたことを、2022年5月30日までに発表した。その私立大学とは、自動運転技術の実用化に取り組む埼玉工業大学だ。走行距離は合計で1万1,229キロに到達したという。
■前年度の3.7倍!「論語のバス」で長距離走行実現
埼玉工業大学の自動運転技術開発センターは、自動運転バスを開発して3年目だ。2021年度の活動実績として、1万1,229キロを達成した。1万1,229キロは東京〜福岡間を5往復する距離に相当するという。2020年度の自動運転バスの走行距離は2,970キロで、1年間の走行距離を約3.7倍と大幅に伸ばした。
2021年度は大型バス(レインボーⅡ)とマイクロバス(リエッセⅡ)の2台体制で研究開発に臨み、コロナ禍でも各種実証に参加したことで、走行距離が増えたようだ。国内大学の自動運転バスの走行距離としては最長級と言えそうだ。
距離を大きく伸ばした一番の要因は、埼玉県の深谷観光バスと協力して運行した「渋沢栄一 論語の里 循環バス」だ。同バスは業務用の緑ナンバーを取得し、約1年弱にわたって継続的に営業運行を行った。
路線コース内における自動運転区間を、最大26キロへ拡大して走行したという。埼玉県以外の自治体では、栃木県茂木町と千葉県の幕張新都心での実証に参加した。
■2016年に自動運転の取り組みをスタート
埼玉工業大学の自動運転バスは自動運転レベル4(高度運転自動化)を目指し、ティアフォーが開発する自動運転OS「Autoware」をベースに、同大学独自開発のソフトウェア「SAIKOカーWare」でAI(人工知能)技術を積極的に採用している。自動運転とドライバーの運転は即時に切り替えができ、一般公道を法定速度で交通状況に応じて安全に走行する。
埼玉工業大学は2016年に次世代自動車プロジェクトを立ち上げ、自動運転研究会が自動運転の研究開発に本格的に着手した。2019年度には私立大学で初の自動運転技術の全学的研究組織「自動運転技術開発センター」を設立した。スマートモビリティの実証実験を支援する「埼玉県スマートモビリティ実証補助金」にも2年連続で採択されている。
2020年7月からITbookテクノロジーと水陸両用無人運転技術の開発も開始し、2022年3月には水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」の無人運航実証に成功したことを発表している。
■【まとめ】リアリティある研究開発に期待
2017年に公道における自動運転の実証を開始した埼玉工業大学。経験やノウハウを積み重ね、2021年度には自動運転バスの運行で走行1万キロを達成した。
このノウハウは関東だけにとどまらず、全国の地方エリアのバス運行にも活用できそうだ。今後も産学官の協力のもと課題解決に取り組んでいく同大学に注目していきたい。
【参考】関連記事としては「自動運転と大学」も参照。