トヨタグループ、2022年は「自動運転」より「電動化」に注力?

グループ各社の年頭所感を分析してみた



2022年の仕事始めを迎え、各社トップが年頭のあいさつで新年に向けた意気込みを語っている。トヨタ自動車では、豊田章男社長が社員に訓示したほか、昨年末に開催したBEV(純電気自動車)説明会などに言及し、新年の幕を開けた。


この記事ではトヨタグループ各社トップの年頭のあいさつに触れつつ、グループ全体の2022年の動向に迫っていく。

■トヨタ自動車の2022年

トヨタ自動車の豊田章男社長は、カーボンニュートラルに向けたチャレンジの一環として、2021年に水素エンジンでスーパー耐久に参戦し、共感してくれた仲間が少しずつ増えてきたことや、逆に「トヨタはバッテリーEV(BEV)に消極的」といった声が大きくなり、自分たちの想いが通じない世界があることを思い知らされたことに言及した。

その上で、「思いを伝えるには行動で示すしかない。私たちにとっての行動は商品。これから市販する予定のBEVを全て見せることを決めた」とし、2021年末に開催したBEV説明会でトヨタの本気度を示すことができたと語った。

自動運転などに言及する場面は残念ながらなかったが、EV戦略は大きく前進するものと思われる。BEV説明会によると、トヨタは2030年にもレクサスブランド含めBEVのグローバル販売台数350万台を目指すとしている。車種は30に及ぶという。


2022年から計8兆円を電動化領域に投入

この目標に向け、2022年から2030年までに電池投資などBEVに4兆円、HEV(電気式ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)に4兆円の計8兆円を電動化領域の研究開発や設備投資にあてる。

この領域では、1997年に市場に送り出した世界初の量産HV(ハイブリッド車)「プリウス」が有名だが、実はトヨタは1996年にBEV「RAV4 EV」を発売するなど、先駆的に取り組んできた。なお、当時のRAV4 EVにはニッケル水素電池が使用され、航続距離215キロを達成している。その後も、超小型EV「COMS」「C+pod」などを開発している。

レクサスブランドではすでにBEV「UX300e」を発売しているが、2022年にはトヨタから「beyond Zero(ゼロを超えた価値)」を目指すbZシリーズの第一弾「bZ4X」が発売される予定だ。従来の各種EVに加え、本格的なBEV戦略が2022年に幕を開けるのだ。

■トヨタグループ各社の2022年
ジェイテクト:昨年の社内改革の成果を出し未来へ

トヨタグループの自動車部品大手であるジェイテクトの佐藤和弘社長は、2021年をジェイテクトリボーン元年と位置づけ、本店登録地の移転やアフターマーケット事業本部の立ち上げ、カーボンニュートラル戦略室・DX推進室の新設などを進めてきたことに言及し、2022年も先行き不透明ながら数々のリボーンの成果を出し、次の未来へ進んでいくとしている。


トヨタ紡織:スタートアップへの積極投資などでオープンイノベーションを加速

トヨタ紡織の沼毅社長は、2025年中期経営計画を踏まえた上で2030年に向け、CASEMaaSに対応した事業推進やインテリアスペースクリエイターとしての新価値創造を目指すとし、オープンイノベーションを加速するため5年間で150億円規模の投資枠を設けスタートアップ企業に積極投資していく計画としている。

アイシン:第2世代の電動ユニット開発強化へ

アイシンの吉田守孝社長は、同社の強みである省エネ技術でCO2排出量の削減や新型太陽光電池、CO2固定化技術といった新技術の開発を進めていく方針を述べている。

電動化領域では、AT事業で培った技術や知見を生かし、ハイブリッドシステムや電動駆動モジュール「eAxle」といった電動ユニットをフルラインアップで提供していく。特にeAxleを最重要戦略製品と位置づけ、さらに高効率かつ小型化した第2世代の電動ユニットを2025年までに市場投入するため、開発を強化していくとしている。

豊田通商:バッテリーや水素・代替燃料などに注力

リチウムなど安定的な資源確保を進めている豊田通商の貸谷伊知郎社長は、2021年を「カーボンニュートラル推進の潮目が大きく変わった一年」と振り返り、次の新しいステージに向け、カーボンニュートラル推進タスクフォースを2022年4月に部として立ち上げ、バッテリーや水素・代替燃料などの注力分野での活動を加速させていくとした。

愛知製鋼:磁気マーカシステムの事業モデル確立へ

愛知製鋼の藤岡高広社長は、電動車向けの特殊鋼や鍛造品開発やユニカとの協業によるGMPS(磁気マーカシステム)の事業モデル確立など、既存ビジネスの維持・拡大を図りながら、時代の変化に対応する新規ビジネスを探索し新たな経営の柱に成長させていくとしている。

■【まとめ】電動化領域で飛躍する年に

2022年のトヨタグループは、カーボンニュートラルに向けた研究やチャレンジがいっそう進み、特に電動化領域で飛躍する年になりそうだ。本格BEVとなるbZ4Xをはじめ、FCVなどの動向にも注目したい。

自動運転関連では、Woven Cityやe-Paletteを活用した実証が具体化するか、改めて期待したい。また、自家用車におけるレベル3に関してもそろそろ具体的な戦略が明かされる可能性があり、こちらも注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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