高齢化の切り札「医療MaaS」、トヨタ系企業が車両供給 三重県で実証実験

「マルチタスク車両」で多様なサービス展開



出典:大日本印刷プレスリリース

医師や看護師の人材事業を手掛けるMRT株式会社(本社:東京都渋谷区/代表取締役社長:小川智也)は2021年11月4日までに、経済産業省の「無人自動運転等の先進MaaS実装加速化推進事業(地域新MaaS創出推進事業)」の実証事業に関わる受託事業者に選定された。

この事業は、内閣府や総務省、経済産業省、国土交通省が連携し選定する2021年度のスマートシティ関連事業の1つだ。


MRTは、MONET Technologiesと、大日本印刷、オリエンタルコンサルタンツ、三重広域連携スーパーシティ推進協議会と連携し、「オンデマンド医療MaaS」の実証実験を2021年11月4日から12月27日まで、三重県の6町で実施する。

MONET Technologiesは、トヨタ自動車とソフトバンクを大株主とする2018年設立の企業だ。実証実験を実施する三重県の6町は、大台町、多気町、明和町、度会町、大紀町、紀北町となっている。

■「オンデマンド医療MaaS」の実証実験で取り組むこと

「オンデマンド医療MaaS」の実証実験では、MONET Technologiesが開発・提供する「マルチタスク車両」(移動式保健室)を使い、以下のような取り組みの検証を行う。


  • 看護師や保健師がマルチタスク車両で患者の自宅を訪問し、車内で保健指導や受診勧奨を行う。
  • マルチタスク車両を地域診療所と接続し、ビデオ通話でオンライン診療を行う。
  • マルチタスク車両と町役場がオンラインで接続し、保健指導対象者に対して保健指導を行う。

また、このマルチタスク車両は医療目的だけではなく、朝夕は公共交通としても活用するという。

出典:大日本印刷プレスリリース(クリックorタップすると拡大できます)
■高齢化の中、「医療MaaS」が欠かせないサービスに

今回の実証実験が行われる三重県の6町では、「人口減少」「高齢化」という共通の課題があるほか、公共交通機関が乏しい中山間地域があるため、医療機関へのアクセスが困難なことによる慢性疾患の重症化も引き起こされている。

今回の実証実験ではマルチタスク車両を活用することで、医療サービスを住民が利用しやすくする。また受診機会を増やすことで住民の健康意識が高まることも促す。健康意識が高まって病気になりにくくなれば、医療費の抑制につながるからだ。

ちなみに「医療MaaS」の実証実験に関しては、過去に例がある。静岡県浜松市での「春野医療MaaSプロジェクト」だ。2020年10〜12月にかけて実施された。浜松市の中山間地域でも、高齢者の通院や医師の数といった面で課題を抱えている。


高齢化社会の日本において、「医療」と「移動」を最大限に活用した「医療MaaS」は欠かせないサービスになっていきそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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