スウェーデンの高級自動車メーカーであるボルボ・カーズは2020年11月24日までに、安全な運転支援技術の開発のため、ゲーム技術を活用した「複合現実シミュレーター」を活用していることを明らかにした。
■物理的なプロトタイプを作る必要なし
エンジニアたちから「究極のドライビングシミュレーター」と呼ばれているこのシミュレーターには、微調整可能な運転席、触覚フィードバックのあるステアリングホイール、透き通ったバーチャルリアリティヘッドセットを備えており、現実と仮想の境界を曖昧にさせるかのようなシミュレーターだ。
例えば、運転支援技術の1つである「衝突回避技術」などの検証に関しては、「物理的なプロトタイプを作ったり、複雑なシナリオを設定したりすることなく、実際の環境で完全に安全なテストを行うことができます」(※プレスリリースより)と説明されている。
このシミュレーターでは、最先端のリアルタイム3D開発プラットフォームであるUnity社と、仮想現実(VR)や複合現実(MR)を手掛けるフィンランドのスタートアップ企業Varjo社の最先端技術を使用しているという。
この「究極のドライビングシミュレーター」は、2020年11月18日にボルボがライブストリーミングしたイベントでデモンストレーションされた。その様子は、現在もオンデマンドで「https://live.volvocars.com/」から閲覧することができる。
■自動運転車を仮想テスト環境で走らせるソフトウェアも
今回ボルボ・グループが披露したシミュレーターは、人が乗るタイプのシュミレーターのようだが、仮想空間で自動運転車を走行させるタイプのシミュレーターも開発各社は盛んに活用している。
例えば、こうしたシミュレーターのベンダーとしては米半導体大手のNVIDIAなどが知られており、自動運転の仮想テスト環境「NVIDIA DRIVE Constellation」をトヨタなどに提供している。
自動運転の実現にはAI(人工知能)に膨大な量の運転を経験・学習させることが求められ、トヨタによれば、経験・学習として必要な距離は実に「トリリオン・マイル」(1兆マイル)以上だという。こうした膨大な経験をさせるには、現実空間より仮想空間の方が適している。
■【まとめ】シミュレーターが技術の進化を下支え
ADASや自動運転技術においても、シミュレーターが技術の進化を支えている。「次世代モビリティ×シミュレーター」という視点でもさまざまなニュースを取り上げていきたい。
【参考】関連記事としては「コロナでもクラウド上で走り続ける自動運転車 NVIDIA、技術進化へ取り組み」も参照。