農業で手作業で収穫をする際には当然だが、収穫した野菜を入れるコンテナなども一緒に運ぶ必要がある。このコンテナを運ぶ作業は結構な手間だ。しかしこの手間が自動運転技術によって近い将来なくなるかもしれない。
ロボット開発企業の株式会社アトラックラボ(本社:埼玉県三芳町/代表取締役:伊豆智幸)は2020年11月17日までに、佐賀大学などと共同で、AI(人工知能)活用型の人追従型収穫物搬送ロボットを開発したことを発表した。
今回開発したロボットは、カメラのみで人に追従することが可能な低価格の収穫サポートロボット車だ。コンテナを載せながら追従することで、コンテナを運ぶ手間を無くす。
報道発表によれば、ロボット車に装着したカメラ映像からAIが人との距離を計算し、距離に応じて走行と停止を繰り返しながら自動運転で追従が可能だという。
■佐賀大学の教授が制御アルゴリズムを開発
この収穫サポートロボット車に搭載された制御アルゴリズムは、佐賀大学の佐藤和也教授(教育研究院自然科学域理工学系)が開発した。これまで搬送ロボットが人との距離に応じて追従走行をする場合にはLiDARやステレオカメラが必要であったが、今回は安価な単眼カメラで追従走行を実現した。
佐賀県農業試験研究センターでブロッコリーの収穫における搬送を模擬して実験を行ったところ、コンテナに15キロの重りを載せた状態でも、搬送ロボットは安定して追従走行と停止をすることが実証されたという。
今回開発された自動追従ロボットは農業分野などで展開するとともに、倉庫内での搬送補助でも活躍させることを目指しているようだ。
■農業分野で活用が進む自動運転技術、スマート農業への期待感
いま自動運転技術や自動化技術は様々なカタチで農業で活用されている。
例えば農業機械大手のクボタは、2020年1月に業界で初となる自動運転農機「アグリロボ田植機NW8SA」の発売を発表した。超音波ソナーを使って人や障害物を検知し、安全な自動運転を可能にしている。
空の自動運転とも言える「自動飛行」の技術も進歩が進む。ヤマハ発動機は2020年3月、自動飛行が可能な農業用ドローン「YMR-08AP」の発売を開始した。農薬などの自動散布によって作業の効率化・省人化を実現し、1回のフライトで1ヘクタールの連続散布が可能だ。
1995年には414万人だった農業就業人口は、2015年には210万人まで減少した。さらに平均年齢は66歳と高齢化が進み、人手不足と高齢化で労働力不足が深刻な問題となっている。そんな中、自動運転技術やロボット技術を活用した「スマート農業」への期待感は大きい。
そんな中での新たな人追従型収穫物搬送ロボットの登場・・・。業界において広く関心を集めそうだ。
【参考】関連記事としては「「無人農業」「スマート農業」で自動運転技術はどう貢献?」も参照。