自工会が「自動運転の安全性評価フレームワーク Ver1.0」公表!どんな内容?

「認知・判断・操作」における危険シナリオなど明確化



一般社団法人「日本自動車工業会」(自工会)は2020年11月8日までに、自動運転技術の安全性評価に関するガイドラインとなる「自動運転の安全性評価フレームワーク Ver1.0」を発表した。


自動運転社会の発展が期待される中で、自工会として自動運転がどのように安全性を担保するかは大きな課題であり、そのベストプラクティスをまとめたものとなる。

▼自動運転の安全性評価フレームワーク Ver1.0
http://www.jama.or.jp/safe/automated_driving/pdf/framework.pdf

■今回のフレームワーク、背景や狙いは?

今回のフレームワークは自工会の旧・安全性評価WGメンバーにより作成されており、トヨタ自動車、日産ホンダなどの日本を代表する自動車メーカーが作成に参画している。

自動運転の実用化に向けては、安全性の担保が最重要課題となっている中で、自工会として安全の安全論証体系・安全性評価手法・安全性判断手法の自動車専用道におけるベストプラクティスをまとめたものがこのフレームワークだ。今後の技術の進歩に従って内容の変更・改定も行っていく。


フレームワークの狙いについては、以下の3項目を挙げている。

  • 自動運転を開発する自工会各社が、開発プロセスの企画・設計・評価の各段階で安全性を評価・検証する際の、共通基盤としてこのガイドラインを活用することにより、安全性・開発効率の向上を可能とする。
  • 国際基準・標準の策定に向けた技術的な共通理解を得る
  • 海外のプロジェクトと連携推進する際の自工会の考え方を明確にする
■安全性評価フレームワークの内容とは

今回のフレームワークでは、既存のアプローチが持つ課題を解決するため、原理原則に基づくシナリオベースアプローチによるエンジニアリングフレームワーク「Physical Principal Approach Process」を提唱している。

自動車運転に必要な3要素である「認知・判断・操作」のそれぞれの処理プロセスに影響を及ぼす危険な状況を「認知:認識外乱、判断:交通外乱、操作:車両運動外乱」に分解し、各プロセスの処理結果に影響する要因を構造化していくという方法だ。

3つの各シナリオについて、危険が起こりやすい状況をさらに場合分けして分析するとともに、四輪車だけでなく、二輪車特有に起こるシナリオについても網羅しているのが特徴だ。


また安全性保障のフレームワークとしては、基本的に2019年6月に国連WP29(自動車基準調和世界フォーラム)において策定された自動運転のフレームワークドキュメントの原則を基にしている。

「自動運転車両は、その運転領域において、合理的に予見可能かつ防止可能な交通事故を発生させてはならないという、受容不可能な危険を生じさせてはならない」とするWP29での安全原則を基にマトリクスで整理し、「安全性評価のスコープ」や「安全性の判定手法」について定義を行っている形だ。

■【まとめ】安全技術の実装が一層進むことに期待

自動運転技術の安全については、日本では国土交通省から2018年9月に「自動運転車の安全技術ガイドライン」が発表されており、自動運転レベル3〜4の自動運転車が満たすべき安全性に関する要件が明確化された。

▼自動運転車の安全技術ガイドライン
https://www.mlit.go.jp/common/001253665.pdf

そして今回、さらに詳細な技術的フレームワークが自工会から発表されたことで、安全性はもちろんだが、安全が脅かされる危険な状況についてのシナリオも明確になった。本フレームワークをきっかけに自動運転における安全技術の実装が一層進むことを期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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