自動運転トラック技術の大手プロバイダーである米Locomationは、2022年の公道での隊列走行実用化に向けて、NVIDIAの自動運転コンピューティングプラットフォーム「NVIDIA DRIVE AGX Orin」を活用した製品を展開していくと発表した。
Locomation社は、同社初の商用システムとして「Autonomous Relay Convoy」(ARCシステム)を発表している。ARCを使用することにより、先導する1人がトラックを運転すると、後続のトラックが完全自律型で連携して隊列走行するというものだ。
2020年8月にはLocomation社と米トラック物流企業のWilson Logisticsがパイロットプログラムを行い、ARCを利用した史上初の商用貨物の運送を行った。このプログラムでは、Locomation社の2台のトラックがWilson Logistics社のトレーラーと貨物を先導し、オレゴン州ポートランドからアイダホ州ナンパまでの約675キロの高速道路84号線沿いを隊列走行させることに成功したのである。
Locomation社は隊列走行の実現により、後列のドライバーが走行中に休憩をとることができ、また燃料消費量を削減できることなどにより、商用化された際には1マイル(約1.6キロメートル)あたりの運用コストを推定30%削減できると見積っている。
また、2022年には1000台以上のLocomation社のシステムを搭載した隊列走行トラックをWilson Logistics社に導入し、商用化が始まる予定となっている。
■NVIDIAのプラットフォームを利用した背景とは
Locomation社のARCシステムは、2019年12月に発表された自動運転やロボット向けの高性能なコンピューティングプラットフォームであるNVIDIA DRIVE AGX Orinを利用している。
このシステムは「Orin」と呼ばれる新しいシステムオンチップ(SoC)がベースとなっている。Orin SoCには、NVIDIAの次世代のGPUアーキテクチャやArm Hercules CPUコア、ディープラーニング用とコンピュータービジョン用の新しいアクセラレーターなどが実装されており、NVIDIAの前世代SoCであるXavier SoCの約7倍の処理能力となる、毎秒合計200兆回の演算能力を実現している。
Locomation社のセティン・メリクリCEO兼共同創業者は「私たちは自動運転トラックの商業化を急ピッチで進めています。NVIDIA DRIVEは、チームが連携するための堅牢で安全性の高いプラットフォームを提供できるようなソリューションです」と語っており、隊列走行の商用化に向けた大きな期待が感じられる。
■自動運転界での活躍が広がるNVIDIAのソリューション
Locomation社の事例により、NVIDIAのコンピューティングシステムに対する他社からの期待や導入意欲は高まってくるだろう。しかもNVIDIAの自動運転業界での最近の活躍はこれにとどまらない。
3Dマップソリューションを展開するオーストラリアのBlackshark.aiも2020年10月、自動運転シミュレーション環境の強化に向けてNVIDIAと協力していることを発表している。AIとクラウドコンピューティングを用いて写真のように精細な3D環境を作り出し、自動運転シミュレーションを行うものだが、そこにもNVIDIAのチップが使われているのだ。
これからも自動運転の事例の中でNVIDIAの名前を見る機会はより増えてきそうだ。
【参考】関連記事としては「未来の動きを予測、夜間の歩行者検出…「NVIDIA×自動運転」の取り組みを動画から知る」も参照。