ウェイモのUber離れが深刻に Uberはロボタクシー時代に負け組なのか 日本のGOにも同じ影

Uberでロボタクシーが呼べるのは2都市だけに



無人の自動運転タクシーであるロボタクシーの主導権は、配車アプリから、車両を持つ側へ移りつつある。米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)が勝っても、米EV大手テスラ(Tesla)が勝っても、米配車大手Uber(ウーバー)の成長にはつながりにくい状況が、米国で見え始めた。同様の課題は、日本のタクシー配車アプリ大手GOにも及ぶ可能性がある。


ウェイモは米15都市圏で一般向けに運行するが、Uberのアプリから呼べるのはオースティンとアトランタの2都市だけだ。この2都市でも、ウェイモは2028年1月に自社アプリでの提供を始めるとUberに通知した。テスラは自社で配車サービスを運営し、Uberのトップであるダラ・コスロシャヒ氏も、テスラを率いるイーロン・マスク氏は単独で進めたがっていると明かしている。東京では、2027年中の完全無人運行を目指すウェイモが、GOに加えて自社のWaymoアプリでも配車を受け付ける計画だ。本記事では、公開情報をもとに配車アプリの力関係の変化を解説する。

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■Uberはなぜ、ウェイモとテスラの「どっちが勝っても負け」になりかねないのか

まず、米国の主要3社が、どの配車アプリで客を集めているかを比べる。2026年10月時点の状況は次のとおりだ。

事業者運行地域規模配車の入り口
ウェイモ米15都市圏2026年9月時点で約4,000台。有料乗車は2026年3月発表で週50万回超大半の都市は自社アプリ。Uberアプリで呼べるのはオースティンとアトランタのみで、この2都市は現状Uber専用。ナッシュビルでは自社アプリに加え、2026年9月9日から中心部で米配車大手Lyft(リフト)のアプリからも配車される
テスラ米国の複数都市。サンフランシスコ・ベイエリアではセーフティドライバーが同乗ロボタクシー専用車両Cybercab(サイバーキャブ)は、自社発表で2026年10月10日時点にオースティンで300台超。テキサス州での商用利用の認可は10月初めで169台と報じられ、数字は割れている自社で運営し、Uberには載せていない
Amazon傘下のZoox(ズークス)ラスベガスとサンフランシスコ。サンフランシスコは無料の招待制台数の公式発表は確認できていない自社アプリが基本。2026年3月にUberとの複数年契約を発表し、ラスベガスで夏、ロサンゼルスで2027年中ごろの提供を計画。自社アプリでの提供も続ける

出典は、Uberやウェイモの発表、現地報道など。

ウェイモのUber提供をめぐる動きは次の通り。


・2026年5月:フェニックスで契約満了によりUberでの提供を終了
・2028年1月:オースティンとアトランタで自社アプリでの提供を開始すると、ウェイモがUberに通知
・2028年5月まで:現在の契約で、少なくともUberアプリでの提供が続く(Uberの説明)

一方のテスラは、Uberと組む気配がない。Uberのトップであるコスロシャヒ氏は2025年2月、マスク氏は単独で進めたがっていると語り、ウェイモと同様にUberも、テスラが参入すれば競う関係になるという趣旨を述べた。ただ同氏は、テスラと提携したいという意向も示している。

Uberの問題は、ウェイモとの関係の冷え込みにとどまらない。ウェイモが主導権を握る場合、自社アプリの比重が高まり、Uber経由で乗る人の割合が下がっていく可能性がある。テスラが主導権を握る場合、最初から自社の仕組みで利用者を囲い込んでいるため、Uberは関われない。どちらでも、ロボタクシーの普及がそのままUberの成長にはつながりにくい。

これまでのUberの強みは、大勢のドライバーという供給と、大勢の乗客という需要を結びつけることだった。ロボタクシーでは、供給にあたる車両そのものを、ウェイモやテスラといった少数の企業が持つ。供給を持つ側が利用者との接点も自前で持てば、間に入る配車アプリの出番は小さくなる。


Uberを「負け」と断じるのは早い。ウェイモのUber提供は少なくとも2028年5月まで続き、Uberは、独占が終われば他社の自動運転車もオースティンとアトランタに入れられると説明している。Zooxとも複数年契約を結ぶなど、Uberは多数の自動運転企業との提携で入り口を守ろうとしている。ただ、そのZooxも自社アプリでの提供を続ける。提携先が増えても、各社が自前の入り口を並行して持つなら、配車アプリの価値は薄まりかねない。

【自動運転ラボの視点】
ロボタクシーでは、車両を持つ側が配車の入り口も握りやすい。米国のUberが直面する構図は、車両を持たない配車アプリであるGOにとっても無縁ではない。主導権の行方は、アプリの強さより車両の押さえ方で決まる。

■GOはなぜ、配車アプリの最大手になれたのか

日本に目を移す。調査会社ICT総研が2024年4月に4,355人へ行ったインターネット調査では、過去1年にタクシー配車アプリで配車サービスを使った人が889人いた。このうちGOを使った人は545人で、約6割にあたる。配車アプリのDiDi(ディディ)の290人、Uberのタクシー配車サービス「Uber Taxi」の229人を大きく上回った。複数回答のため、合計は889人を超える。

地域別でもGOは強い。調査会社M2リサーチの2024年6月の調査では、GOの利用率は東京都で70%、愛知県で68%となり、いずれも2位に30ポイント以上の差をつけた。

配車アプリの利用も広がっている。公正取引委員会の2025年4月の実態調査報告書は、東京都特別区、武蔵野市、三鷹市のタクシーでは、アプリ配車の割合が2割を超えるという調査結果があると指摘している。

GOの強みは、地域のタクシー事業者との連携にある。実際、2026年9月に発表されたウェイモの東京計画でも、GOは地域のタクシー事業者との連携や、自動運転技術を日本のタクシー産業に組み込む全体設計を担う。利用者にとっては、開けば近くのタクシーが来るという安心感につながり、事業者にとっては、参加すれば客が来るという関係につながる。こうした供給の集約が、GOの強みを支えてきた。

ここで、米国のUberと同じ課題が浮かぶ。タクシー会社を束ねて供給をまとめる価値は、車両を自前で持つロボタクシーの時代にも保てるのか。では、次は東京で動く計画を見ていく。

【参考】関連記事としては「タクシーアプリGO、上場は「自動運転ビジネス」の伏線か」も参照。

■東京で動く3つの自動運転ロボタクシー計画、入り口の配車アプリはそれぞれ違う

国内で公表されているロボタクシー計画を、配車アプリの視点で並べると次のようになる。

計画時期配車の入り口
ウェイモ、GO、タクシー最大手の日本交通2027年中に、運転手が乗らない自動運転レベル4の完全無人運行を目指す。開始時に一定数の車両を投入し、段階的に約100台規模へ広げる計画。国や自治体の認可が前提GOアプリとWaymoアプリの両方
Uber、タクシー事業者の日の丸交通、英自動運転開発企業Wayve(ウェイブ)。車両は日産自動車のリーフがベース2026年後半に試験運行を始める計画。初期はセーフティドライバーが同乗Uberアプリ
テスラCybercabを2026年9月11日に日本初公開したが、展示にとどまる。運転支援機能FSDは2026年内の導入が目標。ロボタクシーの国内提供時期は未定国内の入り口は未定。米国では自社で運営

ウェイモの計画では、役割が分かれている。GOは地域のタクシー事業者との連携や全体設計を担い、日本交通は現場の運行管理や営業所の運営、顧客対応を受け持つ。ウェイモは自動運転技術に加え、運用基盤や車両管理システムを提供する。

注目したいのは、日本最大手のGOと組みながら、ウェイモが自社アプリでの配車も用意した点だ。ウェイモは2025年から東京都内7区で試験走行を重ねており、一般向けには初日から無人で運行する方針を示している。報道では、Waymoアプリは海外でウェイモを使う訪日外国人を想定した入り口とされるが、ウェイモの公式な説明は限られている。

テスラは、日本ではまだ入り口が見えない。報道によると、日本での販売や運行の予定は未定で、運行を自社が担うのか、タクシー会社などと組むのかも、今後の課題とされる。

こうした座組は、米国でのウェイモの動きと重なる。米国では、ウェイモはオースティンとアトランタでUber専用で始め、2028年1月に自社アプリを加える。フェニックスでは、Uberでの提供を2026年5月に終え、車両を自社の車両群に戻した。東京でも、提携先の窓口と自社の窓口を、最初から並べたことになる。

ついにウェイモのアプリが日本を席巻する序章か GOと日本交通が交渉に折れたのか

■自動運転ロボタクシーの主導権争いとGOの立ち位置

米国の構図を東京に当てはめ、ロボタクシーの主導権を誰が握るかで場合分けする。いずれも公開情報に基づく想定で、予測ではない。

ウェイモが主導権を握る場合

現在の座組では、GOも配車の窓口になる。ただし米国では、ウェイモが提携先のアプリで始めたのち、自社アプリを加える動きが出ている。東京でも、時間とともにWaymoアプリの比重が上がる可能性は否定できない。

テスラが主導権を握る場合

米国のテスラは自社で配車サービスを運営しており、Uberのトップも、単独で進めたがっていると明かしている。ただ日本では、運行を担う主体や提携先が決まっておらず、タクシー会社と組む場合の入り口がどこになるかは見通せない。

Uber陣営が主導権を握る場合

入り口はUberアプリになる。ただ、日の丸交通との試験運行は、初期はセーフティドライバーが同乗する形で始まる計画で、完全無人の商用運行とは段階が異なる。

GOに残る交渉材料

日本には、GOに有利な条件もある。ウェイモ、GO、日本交通の3社の発表では、正式な開始時期は、道路交通法や道路運送法などに規定された必要な許認可の取得後に決まる。GO代表取締役会長の川鍋一朗氏は、国土交通省、警察庁、東京都、走行する区の許可と賛同が必要だと述べている。運行管理は日本交通が担い、地域のタクシー事業者との連携や全体設計はGOが受け持つ。日本では当面、現地の事業者を束ねる役割が欠かせない。

それでも、有人タクシーの時代に築いた利用経験者の約6割を占めるという寡占的ポジションが、ロボタクシーの時代にそのまま続く保証はない。米国でUberが直面している課題は、日本ではGOにも当てはまる可能性がある。

「ウェイモかテスラのどっちが勝っても負け」を避けるために、GOに求められる役割

米国の主要3社は、入り口の考え方が分かれている。ウェイモは大半の都市で自社アプリを使い、Uberアプリで呼べるのは2都市にとどまる。テスラは自社で運営する。Zooxは自社アプリを続けながらUberとも組む。共通するのは、車両と運行を握る側が、利用者との接点も自前で持とうとしている点だ。

Uberを「ウェイモかテスラのどっちが勝っても負け」と断じるのは早いが、米国の動きを見る限り、配車アプリの価値が下がるおそれはある。ウェイモのUberでの提供は少なくとも2028年5月まで続く。Uberは、ウェイモの独占が終われば、両都市で他社の自動運転車も扱えるようになると説明している。GOも同様の課題を抱える。GOは現状ではウェイモ陣営の窓口だが、車両を持たない配車アプリという立場は、Uberと変わらない。

GOの課題は、配車の窓口以外の強みを築けるかどうかだ。地域のタクシー事業者を束ね、自動運転ロボタクシーの運行に組み込む役割は、日本の許認可の仕組みの中で、当面は欠かせない。この役割を磨けるかが、GOの立場を左右する。

2027年中の運行開始を目指す東京の計画は、認可が前提で、時期は確定していない。運行が始まったとき、GOアプリとWaymoアプリのどちらで多く呼ばれるのか。その比率は、GOの一強体制が続くかを見極める材料になりそうだ。今後の動向に注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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