固定資産税、「自動運転向け」なら減税 総務省、5G用設備で要望

概算要求で言及



総務省の令和9年度(2027年度)概算要求が公表された。自動運転関連では、遠隔監視に利用する5G設備に対し、固定資産税の課税標準の特例措置創設を要望するなど、通信インフラ面から自動運転施策を推進していく構えのようだ。


通信分野を中心に自動運転社会の実現をサポートする総務省。同省の自動運転施策を追いかけてみよう。

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■総務省の概算要求

自動運転関連事業に127.3億円を要望

総務省によると、令和9年度の概算要求は、一般会計で前年度予算比3%増の21兆9,171億円を計上した。積極財政の高市政権下においても、堅実な予算水準を維持した格好だ。

自動運転関連では、「地域交通の確保等に資する自動運転を支える通信インフラの整備・拡充」 に127.3億円を要望している。

ドライバー不足などを背景とした地域の移動手段や物流確保に向け、自動運転技術実装への期待が高まる中、無人走行を実現する自動運転レベル4の実装には安定した遠隔監視や安全・円滑な運行等支援が不可欠となる。


このため、総務省としては自動運転を支える通信インフラの強化と実証などを通じた需要創出を一体的に推進していく。

自動運転向け5G設備の固定資産税軽減措置も要求

また、税制改正要望として、自動運転向けの5G設備に対する固定資産税課税標準の特例措置を求めていく。自動運転の通信インフラ環境整備の観点から、電波法に規定する全国5G通信を行う無線局に係る免許を受けた者が取得した、自動運転の遠隔監視に利用する5G設備について、固定資産税の課税標準の特例措置を創設し、税負担の軽減を図る狙いだ。

出典:総務省公開資料(「https://www.soumu.go.jp/main_content/001089628.pdf」のP37に記載)

■自動運転分野における総務省の取り組み

次世代ITS通信の在り方を検討

電波・通信関連を所管する総務省は2023年、「自動運転時代の“次世代のITS通信”研究会」を立ち上げた。

自動運転時代に向け、情報通信技術を活用した高度道路交通システム(ITS/Intelligent Transport System)、特に車と車、車とインフラなど車とさまざまなモノをつなぐ通信(V2X通信/Vehicle to everything)への期待が高まっていることを背景に、周波数再編アクションプランにおいて、既存のITS用周波数帯(760MHz帯等)に加え5.9GHz帯の周波数の具体的な利用方策などについて検討を行う方針が示された。


これらの観点から、自動運転時代に対応した次世代ITS通信で実現するユースケースや、V2X通信と携帯電話網(V2N通信)との連携方策、5.9GHz帯V2X通信向けの割当方針、導入ロードマップなどの検討に本格着手した。

2025年12月に700MHz帯ITS通信を利用可能な免許人の範囲の追加などを行う制度整備を実施したほか、2026年1月に周波数割当計画の一部を変更する告示を公布し、特定周波数変更対策業務により5.9GHz帯の周波数変更を実施するための制度整備を行っている。

5.9GHz帯の周波数変更については、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会が変更対策機関に名乗りを上げている。

自動運転の遠隔監視などに向けた携帯基地局高度化(5G SA化)についても支援事業が2024年度に始まっており、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が助成金のもと国内各地で整備を進めている。

自動運転社会を支える通信インフラ戦略発表

2025年9月には、研究会メンバーを有識者や主要関係者により再構成した上で、 「自動運転×通信」の広い視点から政策検討を実施している。自動運転社会の本格的到来を見据え、関連する最新動向・取り組みや見通しなどを踏まえた通信インフラ政策の在り方について整理・とりまとめを行っている。

その成果が、2026年7月に発表された「自動運転社会を支える通信インフラ戦略」だ。

同戦略では、通信インフラの必要性について、レベル4の無人自動運転において、車両・道路交通状況を映像・音声で確認できる遠隔監視装置の設置義務(道路交通法)により、安定的な通信環境が必要な点や、自動運転サービスの事業運営上、運行管理やソフトウェア管理・更新などに通信環境が必要な点、事故多発地点や複雑な交通環境、バス内乗客・トラック積載物などを考慮した自動運転の安全・円滑な運行、走行ルートにおける他の交通参加者の安全確保のため、車両単体で対応困難な環境・条件に対する通信インフラによる支援――などを挙げている。

5Gについては、面的なエリアカバーや常時接続性、SA化(スタンドアローン化)による高品質通信により、自動運転車の遠隔監視などへの活用が期待される。

ITS通信については、カメラをはじめとした各種センサーやAIを組み合わせることにより、自動運転車への信号や右左折、合流の情報提供などによる安全・円滑な運行への寄与が期待される。

オール光ネットワーク(APN)の活用により、自動運転における長距離でも低遅延での常時監視や、AIによる画像分析や推論も活用した運行の最適化なども期待されるという。

今後実施すべきアクションプランとしては、以下を挙げている。

  • ①自動運転を支える通信インフラの整備拡充・高度化
  • ②自動運転実装主体と通信インフラ主体の間での一層の連携・共創
  • ③実証で終わらない事業モデル・エコシステム構築
  • ④上記取組の促進に向けた環境整備

①では、自動運転ニーズ等にあわせた主要エリアを中心に、5G SAなどの携帯基地局の整備拡充やITSインフラの整備・展開を行う。予算事業(通信インフラ整備、地域実証)を通じた早期整備を支援するとともに、関係省庁・団体との連携のもと、ITSインフラの技術仕様の標準化や関連制度の整備を進めていく。

②では、自動運転時代の“次世代のITS通信”研究会の下に新たなワーキンググループを設置し、自動運転実装主体と通信インフラ主体における通信インフラに関する課題や知識・情報等の共有、課題解決に向けたコンセンサスや協業について、いっそうの連携・共創を図っていく。

③では、ニーズの高い地域での実証を予算面で支援し、その中で通信利用の有効性や費用対効果などを検証して他地域への共有・展開を促進していくほか、無人自動運転の遠隔監視などにおいて必要となる常時接続性や伝送速度などの通信性能に関し、実運用において共通的に必要となる通信利用の条件について関係省庁と連携し、ガイドラインとして整理・策定を進めていく。

④では、新たに割り当てるITS通信用周波数(5.9GHz帯)の早期利用の拡大に向けた既存無線局の移行促進、関連技術基準の早期整備、無線局免許手続の柔軟化を図っていく。また、無人自動運転の普及期を見据え、オール光ネットワーク(APN)の早期展開など情報通信基盤の高度化を推進していくとしている。

▼自動運転時代の“次世代の ITS 通信”研究会 第3期報告書
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000788.html

■通信各社の動向

各社がモビリティ事業会社を設立

NTT、KDDI、ソフトバンクの通信大手3社は早くから自動運転実証に携わり、LTEや5G実証などを進めてきた。近年は、通信技術を武器に各種自動運転ソリューションを提供する事業を本格化させている。

NTTは2025年12月、自動運転専業の新会社としてNTTモビリティを設立した。自動運転車両の提供・管理サービスや、自動運転導入・運用支援サービス、遠隔監視モニタリングシステム提供サービス、その他自動運転に関連する周辺サービスなどを提供していく。

KDDIは2026年7月、WILLERとの合弁Community Mobilityを完全子会社化し、KDDIスマートモビリティを設立した。自動運転を含む次世代モビリティサービスの企画・開発・運営を担うとしている。

また、楽天モバイルも佐賀市内の自動運転実証に参画するなど自動運転分野への関わりを深めている。

実証と並行して事業化・ビジネス化するフェーズを迎えており、各社の取り組みはさらに加速していくことになりそうだ。

【参考】関連記事「楽天、「自動運転参入」で再び大赤字に?」も参照。

楽天、「自動運転参入」で再び大赤字に?

■【まとめ】E2E時代はモバイル通信系が有力?

通信インフラとなるITSや5Gなどに関する検討はまだまだ続く一方、自動運転サービスの実用化とともに通信各社の事業化は加速しており、通信の域を超えたソリューション構築でビジネス化を図る動きが顕著になってきた印象だ。

今後主流になるだろうE2E時代を見据えるとモバイル通信系が隆盛を極める可能性が高いが、情勢は流動的だ。日本版として、それを補完するV2Iの社会インフラ化も推し進められるかもしれない。

2030年代には、5Gの後継となる6Gも実用化されているものと思われる。先々を見据え、どのような仕組みが求められていくことになるのか、業界の動向に引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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