イーロンマスク テスラをAirbnb化 車が稼ぐ時代に突入か

車で稼げる時代はいつ来るか



テスラのイーロン・マスクCEO=出典:Flickr / Public Domain

米EV大手テスラ(Tesla)の最高経営責任者イーロン・マスク氏らしい壮大な構想が、半年で語られなくなった。マスク氏は2026年1月28日の決算説明会で、自家用車をロボタクシーの車両群に参加させAirbnb(エアビーアンドビー)のように収益を得られると語ったが、7月22日の決算説明会ではこの構想に一切触れず、自社で一貫して手がける垂直統合路線を強調した。

マスク氏は決算説明会のたびに壮大な将来像を語ることで知られるが、今回の決算説明会ではAirbnbについては一切語られず、自家用車で稼ぐ時代の到来についての言及はされなかった。


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■マスク氏が語った「テスラのAirbnb化」構想とは

2026年1月28日、テスラは2025年10〜12月期の決算を発表し、決算説明会にマスク氏が登壇した。この場でマスク氏は、テスラオーナーが自分の車をロボタクシーの車両群に参加させて収益を得られる仕組みについて説明した。

マスク氏はこの仕組みを「Airbnbが機能する仕組みと同じように、自分の車をAirbnbの登録在庫に加えたり外したりできるようなものだ」と表現した。自宅の一室を貸し出すように、自分の車を貸し出して稼ぐという発想であり、この発言が「テスラのAirbnb化」という言い方の起点になった。

マスク氏は以前にも、2025年7〜9月期決算の説明会で、テスラオーナーの車両をロボタクシー用の車両群に加える計画に触れていた。1月の発言は、その構想をAirbnbという具体的なたとえで示した点が新しかった。ただしこの時点でも、開始時期、テスラとオーナーの間での収益分配率、対象となる車種のいずれについても、具体的な発表はなかった。

【自動運転ラボの視点】
Airbnbのたとえは分かりやすく耳目を集めたが、時期・分配率・対象車種という制度の骨格はいまだ示されず、絵に描いた餅の域を出ない。テスラ経済圏拡大への本気度は、今後の発表内容で問われることになるだろう。

【参考】関連記事としては「テスラ今度は木の切り株に激突しイーロンマスクもショック 人間の遠隔操作で事故」も参照。


■7月22日の決算で構想への言及消え、垂直統合路線が鮮明に

発言から半年が過ぎた2026年7月22日、テスラは2026年4〜6月期の決算を発表した。この決算説明会でもマスク氏はロボタクシー事業について語ったが、1月に示した「テスラのAirbnb化」構想への言及はなかった。

かわりに強調されたのは、ロボタクシーを自社で一貫して手がける垂直統合路線である。マスク氏はロボタクシー事業について需要面の制約は見ていないとの認識を示し、他社との連携が事業拡大に不可欠とは考えていない旨を述べた。テスラオーナーの車両を外部から取り込む発想からは、距離を置いた形だ。

ロイターも決算前後の報道で、ロボタクシー事業を巡るテスラの発信が以前ほど強気ではなくなっている点を指摘した。2025年7〜9月期の決算説明会でマスク氏は、2025年末までに米国人口の半分が利用できるようになるとの見通しを語っていたが、実際の展開はテキサス州とフロリダ州の数都市にとどまり、走行実績は250万マイル、うち安全監視者が同乗しない走行は38万マイルにとどまっている。

【参考】関連記事としては「テスラのロボタクシー スペースXの「Starlink V5」搭載へ 統合への布石か」も参照。


テスラのロボタクシー スペースXの「Starlink V5」搭載へ 統合への布石か

■FSD契約者148万人が示す「稼げる車」需要

テスラのAirbnb化構想への言及が後退した一方で、「稼げる車」への需要そのものは数字として表れている。テスラが2026年7月22日に発表した4〜6月期決算によると、FSDの契約者数は世界で148万人に達し、前年同期比56%増となった。

内訳を見ると、契約者のうち55%が一括購入、45%が月額サブスクリプションを選んでいる。北米では新車配送の55%でFSDの月額契約が有効化されており、購入時にFSDを選ぶ利用者の裾野が広がっていることがうかがえる。

自動運転タクシー市場やロボタクシー市場への関心の高まりを背景に、運転支援機能そのものへの支出は着実に伸びている。マスク氏が描いた、オーナーが車を貸し出して稼ぐという将来像への土壌は、少なくとも需要面では整いつつあると言えるだろう。

■日本での実現を阻む道路運送法の壁

仮にテスラが「テスラのAirbnb化」構想を再び前面に打ち出したとしても、日本でそのまま導入するのは難しい。国土交通省が所管する道路運送法78条1項が、自家用車による有償運送を原則禁止しているためである。

例外として認められているのは、災害時の緊急運送、過疎地域で国土交通大臣の登録を受けた交通空白地有償運送、NPO法人などが身体障害者を対象に国土交通大臣の登録を受けて行う福祉有償運送、スクールバスや介護目的の輸送など国土交通大臣が個別に許可するケースに限られる。個人が自家用車をロボタクシーの車両群に参加させて収益を得る行為は、いずれの例外にも該当しない。

違反した場合は1年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金の対象になりうる。マスク氏の構想が日本に波及するには、道路運送法の改正か、新たな特例制度の創設が避けて通れない。

【参考】関連記事としては「日本の自動運転市場、来年には「1兆円規模」」も参照。

■自家用車で稼ぐ時代を、テスラはあきらめたのか

マスク氏は2026年1月28日の決算説明会で「テスラのAirbnb化」を語った。マスク氏はこれまでも決算説明会のたびに壮大な構想を打ち上げてきたが、その多くは時間が経つにつれて語られなくなっていく。7月22日の決算説明会でこの構想への言及が消え、自社運営を軸にした垂直統合路線が強調された事実は、テスラが自家用車で稼ぐ時代を創るという構想を事実上あきらめたのではないかという見方を裏付ける。

一方でFSDの契約者は148万人まで積み上がり、前年比56%増という伸びを見せている。「稼げる車」への需要自体は実在するというのが、現時点で言える数少ない確かな事実である。

開始時期、収益分配率、対象車種という制度の骨格が示され、日本のような市場で道路運送法の扱いが整理されない限り、テスラのAirbnb化は構想の域を出ない。オーナーが本当に車で稼げる時代が来るかどうかは、今後の決算説明会でのマスク氏の発言にかかっている。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
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