
EV(電気自動車)大手の米テスラのCEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク氏の発言には、これまで何度も驚かされてきたが、今回は悪いニュースが入ってきた。
マスク氏が、将来的に完全自動運転が可能になると主張してきた旧世代の「Hardware 3(HW3)」について、「このままの状態では監視なしの完全自動運転への移行が実現できない」と初めて公式に認めたのだ。
「現行のハードウェアをアップデートすることで、自動運転が実現可能だ」と語ってきたマスク氏の発言を信じ、HW3を保有してきたテスラ車のオーナーにとって大きな衝撃となる。
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■なぜ「完全自動運転」へ移行できないのか?

2026年4月22日に行われたテスラの第1四半期決算説明会でマスク氏は、HW3を搭載したテスラ車について、OTA(Over The Air)によるソフトウェアアップデートで監視なしの完全自動運転を実現することはできないと認めた。「監視なしの完全自動運転」とは、テスラの機能である「Full Self-Driving(FSD)(Unsupervised:監視なし)」のことを指す。
マスク氏は「残念だが、HW3にはFSD(Unsupervised)を達成する能力がない」と語った。そして「かつては可能だと考えていた時期もあったが、HW4と比べるとHW3のメモリ帯域幅はわずか8分の1しかない」とも付け加えた。メモリ帯域幅は、FSD(Unsupervised)に不可欠な重要要素の1つなのだという。
またAIモデルの巨大化と複雑化により、Unsupervised(監視なし)の水準である人間が前方を注視しなくてもよい完全自動運転を実現するためには、現在のFSDよりもはるかに巨大で複雑なニューラルネットワークを動かす必要があるのだという。HW3の演算能力とメモリ性能では、最新のAIモデルを安全な速度で駆動させることが物理的に不可能であることが判明したともマスク氏は説明した。
■繰り返されてきたマスク氏の「空約束」
HW3は、2019年にテスラが自動運転向けに開発して最新車両に導入したハードウェアだ。2019年〜2023年に発売されたテスラ車には、HW3が搭載されている。マスク氏は当時、「これこそが完全自動運転に必要な全ての要件を満たしたハードウェアだ」と断言し、HW3以降に同社が製造した車種には完全自動運転に必要な能力が備わっていることを長年宣伝してきた。
2016年のテスラのブログ記事では、「当社工場で生産される全てのテスラ車(Model 3を含む)には、人間のドライバーを大きく上回る安全水準で完全自動運転を実現するために必要なハードウェアが搭載される」との記載がある。
そして「これまで同様、当社のOTAソフトウェアアップデートにより、顧客は常に最先端技術の恩恵を受け続けることができる。また、第1世代オートパイロット搭載車やそれ以前の車両を含む全てのテスラ車は、時間の経過とともに機能が向上していく」とも書かれている。
テスラはこれまでの発表を翻したことになる。これにより、多くのテスラ車オーナーが落胆している。オーナーたちは、将来的にソフトウェアのアップデートだけで車が「魔法のように」完全自動運転車になると信じ、高額なFSDオプションを支払ってきたのだ。
■HW3搭載のテスラ車オーナーはどうすればいい?
では、HW3搭載のテスラ車のオーナーはどうすればいいのか。マスク氏はHW3を使用しているテスラオーナーに対して、車載コンピューターを更新するための割引下取りを提供すると説明した。HW4に対応するためには車載カメラの交換も必要だという。
大規模なアップグレードになるため、サービスセンターで実施するには非効率的になるようだ。そのため「主要な大都市圏に小規模な工場を設ける必要がある」ともマスク氏は付け加えた。
つまり、現状ではHW3をHW4に変更することは非現実的で、実現できるとしても相当な時間を要すると思われる。
かつて「資産価値が上がる車」であった憧れのテスラ車は、今やハードウェアの限界という大きな壁に突き当たったことになる。今後、テスラがどのように数百万人のオーナーに対しどう説明しその責任を果たしていくか、マスク氏の次の一手に注目だ。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転(FSD)機能とロボタクシー部門を徹底解説」も参照。













