Uber Japan、2期連続赤字は「岸田政権のせい」説 第12期決算

本業の商用ライドシェア、未だ直接展開に壁



出典:首相官邸

タクシー配車アプリ事業を手掛けるUber Japan株式会社(本社:東京都港区/代表取締役:ジョージアナ・オザナ・アレクサンドル)の第12期(2023年1〜12月)決算。純損失額は前期比74%増の1億4,179万円であった。第11期に再び赤字に転じたUber Japan。さらに赤字額が大きくなった。

2024年4月から自家用車活用事業、通称「日本版ライドシェア」が始動したものの、ライドシェア事業を直接的に展開できるのはタクシー会社に限られ、Uberが自社の本業であるライドシェアを日本で展開できる時期がいつ訪れるのかは不透明だ。


アメリカと同様の形での自由度の高い商用有償ライドシェア事業の展開を見越し、日本事業への先行投資を続けてきたであろうUber Japan。2期連続の不調の決算は、タクシー会社限定でのライドシェア解禁を決めた岸田政権のせいと言えるかもしれない。

なお過去5期の純損益の推移は、以下の通りとなっている。

<純損益の推移>
・第8期:3億3,659万4,476円
・第9期:▲2,214万5,274円
・第10期:4,208万345円
・第11期:▲8,145万309円
・第12期:▲1億4,179万3,605円
※▲はマイナス

【参考】関連記事としては「Uber Japanが赤字転落、第11期決算は8,100万円の純損失」も参照。


■第11期決算概要(2023年12月31日現在)

出典:官報

▼資産の部(単位:円)
流動資産 1,681,603,255
固定資産 698,148,630
その他の資産 396,096,286
資産合計 2,775,848,171
▼負債及び純資産の部(単位:円)
流動負債 2,419,747,825
株主資本 356,100,346
資本金 18,000,000
利益剰余金 338,100,346
その他利益剰余金 338,100,346
(うち当期純損失)(141,793,605)
負債・純資産合計 2,775,848,171


■日本法人は2012年に設立

出典:Uber公式サイト

Uber Japanは、米ライドシェア最大手のUber Technologiesの日本法人として2012年に設立された。なおフードデリバリーサービス「Uber Eats」は、日本では2016年からUber Eats Japan合同会社により運営されている。

Uber Japanは2014年にハイヤー配車サービス「Uber プレミアム」、2018年にタクシー配車サービス「Uber Taxi」の提供を開始した。東京で利用できるようになったのは2020年7月からで、全国で12カ所目の展開エリアとなった。

現在、北海道・⻘森県・宮城県・福島県・千葉県・東京都・神奈川県・石川県・愛知県・京都府・大阪府・兵庫県・広島県・高知県・福岡県・沖縄県などでサービスを展開している。2024年に入り、関西国際空港や中部国際空港などでもサービスをスタートさせた。


2023年11月からハイヤー車両をアプリで配車できる「Uber プレミアム」の新メニューとして、国内で初めて「Uber プレミアム EV」の提供を開始し、テスラ車両を指定可能になった。また2024年2月からは予約機能の提供がスタートするなど、常にサービスの拡充を図っている印象だ。

■日本版ライドシェアには参入

Uber Japanは日本版ライドシェアに参画することを2024年1月に発表。4月からは都市部で開始する日本版ライドシェアの導入支援を順次スタートしている。

具体的には、提携タクシー会社へのUberアプリの導入サポートのほか、遠隔点呼の導入・実施サポート、カスタマーサポート、採用・研修の支援などを行う。運行開始後は、配車から決済、ドライバーや乗客からの問い合わせや事故発生時の対応を担う。

また同年2月には、規制緩和があった「自家用有償旅客運送」という制度を活用し、「加賀市版ライドシェア」の導入を支援することを発表。3月に石川県加賀市との包括連携協定に調印し、本格運行を開始した。

■ライドシェアドライバーを募集中

Uber Japanは、日本版ライドシェアのドライバー募集にあたり、初のドライバー向けキャンペーンを東京都内で2024年7〜8月に実施している。キャンペーンを通じてライドシェアドライバーに応募し、説明会に参加した人の中から抽選で300人に、5,000円分のUberギフトカードをプレゼントするといった内容だ。

将来的に日本でも本来の意味での自由なライドシェアが始動した場合、業界をリードする企業の一つになると考えられるUber Japan。同社の今後に引き続き注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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