住友ゴム工業株式会社(本社:兵庫県神戸市/代表取締役社長:山本悟)は、「タイヤ内発電技術」の進化により、幅広い速度域で安定した電力を得ることに成功したと2023年10月11日に発表した。
これは関西大学・谷弘詞教授と共同で行った取り組みで、2種類の発電デバイスを組み合わせることで幅広い速度域で電力安定供給を可能にし、タイヤ内部に設置したTPMS(Tire Pressure Monitoring System:タイヤ空気圧監視システム)の稼働を確認したという。
■タイヤ内発電技術とは?
タイヤ内発電技術は、タイヤの回転によって発電する技術だ。住友ゴムと関西大学の谷教授は、タイヤの内側に静電気を利用した発電デバイスを取り付け、タイヤの回転によって電力を発生させる技術開発を行っている。2021年3月には、摩擦帯電に関わる構造と材料の最適化で発電電力を向上させ、さらに充電機能の追加により、電池などのバッテリーを使用せずにタイヤ周辺に搭載するセンサーへの電源供給が可能になったことを発表した。
同社はこのタイヤ内発電技術について、タイヤセンシングの一番の課題であるセンサーデバイスの電池寿命を解決する手段であり、この実現によりタイヤセンシングの実用化を大きく前進させることができると考えているという。
■幅広い速度域で電力安定供給に成功
住友ゴムはすでに、タイヤの歪みの変化による張力を利用した低速域での発電(発電デバイスA)に成功している。今回の開発では、加速度変化による遠心力を利用する発電デバイス(発電デバイスB)を適切に配置することにより、高速域でも相当量の電力を得ることを実現したという。
発電メカニズムの異なる2種類の摩擦発電デバイスを並列接続することで、幅広い速度域で安定した電力を得ることが可能になり、実車を用いた実験でも低速域から高速域まで安定してTPMSの起動が可能なことを確認した。
なおこの取り組みは、国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の助成事業に採択され行われたものだ。
■独自のセンシングコア技術を持つ住友ゴム
住友ゴムは、CASEやMaaSなどの自動車業界の変革に対応するためのタイヤ技術開発や周辺サービスのコンセプト「SMART TYRE CONCEPT(スマートタイヤコンセプト)」を掲げ、さまざまな技術開発を行っている。
センシング技術とは、センサーと呼ばれる感知器などを使用してさまざまな情報を計測して数値化する技術の総称のことだ。同社はその中でもタイヤを「センサー」としたソリューションサービスの提供に取り組んでいる。
住友ゴムの「SENSING CORE」は、タイヤ開発で培ったタイヤの動的挙動に関する知見と、タイヤの回転により発生する車輪速信号を解析するデジタルフィルタリング技術を融合させることで、タイヤの空気圧や摩耗状態、荷重や滑りやすさをなどの路面状態を検知する独自のセンシング技術となっている。
■いざ自動運転時代に向けて
住友ゴムは、今後もタイヤ内発電技術の進化をさらに加速させ、各種デジタルツールの安定稼働を可能にすることにより、ドライバーの安全を支えていくとしている。自動運転時代を見据えたタイヤセンシング技術は、ますます進化していきそうだ。
【参考】関連記事としては「タイヤの摩耗量も検知!住友ゴム「SENSING CORE」が進化 自動運転車でも安心」も参照。